第2話 能力者

「部員はこれで全員。他に気になることはあるかな?」


「そうですね…顧問の先生はいるんですか?」


「あぁ…実は顧問は一応居るんだけど、先生はあまり顔を出してくれないんだよね…。」


 顧問が顔を出さない?何故だろうか。


「突然来なくなった。」


「そうなんですか、何かあったんですか?」


「さぁ、理由を聞いても俯くだけで何も教えてくれないんだ。」

 

「そうだ、もう一つ教えないといけない事があるね。」


「なんですか?」


「君は『能力者』って知ってるかい?」


「噂程度には…稀に特殊な能力持つ人がいるって聞いたことあります。」


「そう、そして僕ら萬部は

───能力者を集めた組織なんだ。」


「えっ……?」


 この人達が能力者………!?


「それで、僕とメロスとシュンタは能力者で───」


「おいエーミール、ちょっと喋りすぎだぞ。先生も『一般人に能力者について喋りすぎるな』って言われただろ。しかもまだ部員でもない一般人相手に…」 


「別にいいじゃないかメロス。まぁいいや、この事はまた今度話そう。」


 エーミール先輩の話をメロス先輩が遮ってしまった。なんだか焦っている様子だった。正直、能力者について聞きたい気持ちは山々だが、今はとりあえず忘れよう。


「どう?入部する気になってくれたかな?」


 何だか奇妙な人達だ。俺は入部に対して少し後ろめたかった。


「そうですね…少し考えてもいいですか?」


「そうか…前向きな返答を期待しているよ…。」


 エーミール先輩は残念そうな顔をした。すると、シュンタが提案した。


「部長、仮入部という形で来てもらうのはどうですか?」


「おっ、それいいね〜。」


「何回か来てもらって、その後本入部するか決めてもらいましょう。」


「それでいいかな?戸部くん。」


 断るのも申し訳ないし、他にやる事もないし、仮入部くらいならしても良い気がした。


「わかりました、仮入部します。」


「大丈夫か?結構大変な仕事も多いぞ。」


 メロス先輩が心配そうに言う。


「大丈夫です、出来る限り頑張ります。」


「さて、戸部君の仮入部が決まったけど………」


「今は特にやる事はないな。」


 エーミール先輩とメロス先輩は顔を見合わせる。


「じゃ、今日は帰ろうか。」


 エーミール先輩がそう言うと、みんな帰る仕度を始めた。いや待て、仕度をしていない人が一人いる。兵十先輩だ。この人ひょっとして……


「兵十先輩!起きてください!」


「ハッ…」


 やはり、寝ていたようだ。


「すまない、うたた寝していた。」


 この状況で寝ていたのか?大丈夫かこの人…。


「兵十、起きた?戸部君の仮入部が決まったよ。」


「そうか、承知した。」


 もっとリアクションがあってもいいと思うんだけどな…。


 全員が仕度を終えると、部室を出て階段を下った。そして別れ際にこう言われた。


「そうだ戸部く〜ん、活動日は特に決まってないか

ら好きな時においで。」


「わかりました。」


 では、明日から行ってみるとするか。


 こうして、平凡な戸部の新たな日時が幕を開けた。


to be continued

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