第11話 重なる姿

「――――シード、紅茶だ!」


「お菓子もあるよ!」


「バハにアザ!?えっ、それ…何か月前に頼んだっけ…」


「「知らない!」」


「…今作って来たの?」


「「勿論」」


「そ、そうか。じゃあ有難くいただくよ」


…バハは魔神、アザは邪神。二人共この世界の最強だ。まぁバハよりパラサイトの方が強いけど。


んでアザとラストはいい勝負。本来死神は邪神に瞬殺されるらしいけど、ラストが異常に強いとか何とか。


「…フッ、良い案を思いついた」


そう言いながら手を横に向け、召喚魔法を使って自らを信仰する崇拝者を一人召喚した。


「ん?し、シード様!?それに皆様も!」


「久方ぶりだな。俺の屋敷が燃えたのは見たか?」


「はい。ですが中で魔力を感知したので生きていると信じておりました」


「当たり前だ。…悪いがヴェルロイド王国、そしてその付近にある教徒を集めてくれるか?集める場所は王国で」


「承知しました」


「革命を起こす」


「おぉ、遂にですか!」


「まずはヴェルロイド王国を滅ぼし、その後に領域を広げる。…あぁ、集め終わったら俺に念話を。この国に邪神教を広げる。崇める対象にフロルを追加してな」


「フロル…あぁ、貴方様ですね。承知しました」


「うむ。では頼んだぞ」


「ハッ!」


「え、えっと…」


「暫くは魔王軍の更生に専念できそうだな」


「俺らは如何すれば良い」


「何でもしちゃうよ~」


「バハはシャナリアと一緒に騎士団を頼むよ」


「うむ」


「アザは神兵を集めてから、デミちゃんの国造りを手伝って!兵士は警備等々に当ててくれれば」


「おけまる!」


「シャナリア、案内しろ。手伝ってやる」


「…どうも」


三人を見送ってから、その日は取り敢えず適当に過ごす事を決めてワールスを一対一の場を改めて作った。


「お前と普通に話がしたくてな」


「………」


「フッ、やはりな。変だと思ったんだ。勇者が俺を警戒しないわけがない」


「…気付いてたんだ」


「あぁ」


「流石はシー君だね」


…なるほど、その呼びは普通にデフォなのね。警戒云々とは無関係なわけだ。


「やはり此処で殺し合うか?」


「勝ち目がない。…僕はシー君が人を嫌う理由をしっかり知りたい」


「無駄な権力争い、意味のない虐待、そう言うのが嫌いって言っただろ。平民だって魔力の有無で虐めが起きる」


「…それだけ?」


「何が言いたい」


「本当にそれだけなの?それでそんなに恨むっておかしいよ…!」


「おかしいと思うならそう思えば良い。お前にこの点に関して言う事はもう一つも無い」


「話して!」


「断る」


「お願い!」


「…しつこいぞ。俺がその気になればお前何て一瞬で殺せるんだからな」


殺気を放ち、素早く彼女の背後に移動してから首に短剣を当てる。


「……お願いだよ…」


「ちっ…。俺はな、13の頃から彼奴等と過ごしてきたんだ。…分かるだろ、彼奴等は皆人間を忌み嫌う」


「………」


「…人間は何もしてない魔族を殺すんだ。デミちゃんの時代からな!」


「そ、それは魔族もでしょ!」


「あぁそうだよ。でも少なくともテンペストの時代までは神聖国か、領土に侵入した人種としか争ってないぞ」


「ッ…」


「力こそ全てだったからこそ、テンペストまでの時代は絶対にその筈だ。無駄な争いを好むわけではなかったからな」


デミちゃんもレイもテンペストも、三人共戦闘狂ではあるけど…基本的にこっちからは攻め込んでない。


それこそ魔物絶対殺すと掲げる神聖王国を相手にしてる時ぐらいだ、容赦なく殺してたのは。


「だから人は嫌いだ。それに裏切るしな」


「……教えてくれてありがとう。それと…ゴメン」


「別にお前が謝る必要は無い」


「その…僕を信用してって言うつもりはないけど、僕は裏切らない」


「どうだか」


「…じゃあ僕を魔族にして良いよ。なる覚悟もある」


「嘘を言うな。手が震えてるぞ」


「……僕は誰にも認めてもらえなかった。誰にも存在意義を認めてもらえなかった。でも…シー君なら、僕が魔族になったら認めてくれそうだから…」


「認めないかもしれないぞ」


「…完全に否定しないじゃん」


「…辞めとけ。お前は人間のまま生きてた方がどうせ良い」


「嫌だ!僕だって…僕だって役に立てる!」


「知らん。お前が役に立ちたくても、それは俺にとって関係ない話だ」


「御願いだよ!強くなって誰かの役に立ちたいの!」


「………」


『お願い!私を強くして!』


脳裏に蘇るとある言葉。それは昔、フロルと出会った頃に彼女が行ってきた言葉だ。


7歳の頃、俺と魔法も込みの勝負を行い、圧勝してしまった時に言われた。状況は違うと言え、本気であるのはよく分かる。


彼女はあれから努力を続けて強くなった。しかし…その道が彼女にとって正しかったのかは分からない。


強くなり、魔王になれたのは良い事だろう。しかしこの魔王軍を見れば分かる、彼女にとってそれは良くない事だった。


…フロルは昔から魔王だったわけじゃない。当時はただの魔人に過ぎない、多分だけど。


7歳から魔王ってあり得る?…多分あり得ないでしょ、多分。


「俺は…もう誰かを苦しませたくないんだ。今のお前が納得しても、未来のお前は後悔するかもしれない」


「しない!約束するから!だから私を認めて欲しいの!誰でも良い訳じゃない、僕は…シードに認めて欲しいの!」


『誰かに認めてもらえる存在になりたい。…まずはシードに認めて欲しいかな!だから…強くなったら私を認めて!』


「………強くなったら認める。今は人のまま頑張れ。もし一撃でも俺に当てられたら認めるし、お前の頼みも一つ聞く」


「ほ、本当?」


「あぁ。嘘は言わない。ただ一つ約束してくれ。…何かあったらすぐに…相談して欲しい」


「?」


「分かったな」


「う、うん!」

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アドウェルサ・ユニバース~とある魔王の世界征服譚~ @arisu29

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