第10話 その思惑の先に

「へぇ、これが浴衣か」


「そうそう。人数分あるってさ!一人三着配布されるっぽい!シードが外に居る時に届いた」


「悪くない感じだな!早速着よう」


ワールスがトイレしてる間に、俺は浴衣に着替える事にした。パラサイト君は浴衣も偶に着てたので、着方を教えてもらう事に。


まぁ取り敢えず一度着させてもらった所でワールスが戻って来た。


「あれ?服が…」


「あぁうん、着替えただけだよ。…それでトイレどう?」


「凄かった。最新だよ最新」


「そりゃ良かった」


取り敢えずボロスが俺とワールスの分のお茶を淹れてくれたらしく、机の上に湯のみが二つ置かれた。


彼女も今はメイド服ではなく浴衣。意外と気に入ってるのかもしれない。


「んで殺し合うか」


「ま、待って」


「待とう」


「…ぼ……私は確かに勇者だけど、国を追い出されたなら勇者なんて正直やりたくない」


「うわっ、この人本心で言ってる…」


「マジか」


「わ、分かるの!?」


「ラストは死神だぞ。真偽を見極める事ぐらい容易い」


「な、なるほど」


「それとお前…一人称私じゃ無いな?僕って言おうとしてただろ」


「…矯正されてて」


「……何が悪いんだ?」


「分かんない!」


「…まぁお前は取り敢えず追い出されたんだし僕で良いだろ」


「あ、ありがとう?」


「…で、お前は人間憎い?」


「いや。…ただ貴族は憎い。人を人と見ないところが嫌いだ。血統なんて…クソじゃないか!」


「……悪くない考えだ。しかし…う~ん、言われてみれば人間全員を憎む必要は無いのか。いや、平民も魔族を嫌うからダメだな」


「…昔、軍が力こそ全てだったとしても、街は人間の国よりも秩序が保たれ、美しいと聞いたことがあります」


「んぁ?…そう言えばそうだな。今はあれだが昔は凄かったらしいぞ」


「多分ですが…人間が魔族を受け入れれば、ではなく魔族が一部の人間は自分達と同じと思えば過ごせると思うんです」


「そんなのは机上の空論に過ぎん。今までの歴史を考えろ」


「でもシードさんは僕と普通に話してます。嫌がってません」


「………お前みたいな馬鹿正直な奴は簡単に言い包める事が出来るからな。何かあっても適当言えば直ぐ信じる」


「うぐっ…」


「それになぁ、こっちを信じる奴なんざお前みたいな奴か奴隷ぐらいだぞ」


「…やっぱり……」


「―――いや、彼女の言葉を信じるのもありじゃないか?」


「フロル?…あのな、人間ってのはゴミばっかだ。ダメに決まってる」


「どうか僕に任せて欲しい!信頼できる人を……居ないんだった…」


「はぁ…。取り敢えず話は此処までだ。魔族領の外まで送るから、何とか頑張れ」


「えぇ?!待ってよ!僕頑張るから!ねぇ!」


「ゆ、勇者が魔王とその秘書の前で涙を流すなよ…」


「だって家も無いし…帰る国も無いし…。シードさんはツンデレだから…」


「最後は意味が分からん。…フロルに任せる」


「シードに任せる!」


「………勇者辞めれる?その聖剣献上できる?」


「住めるなら!住めるならシード君の意見に従っちゃうよ!」


「ホントに?」


「うんうん!シー君に従う!」


「絶対?」


「絶対!」


「…聖剣は持ってて良い。…フロル、此奴は俺の直属部隊って事にする」


「おけまる!」


「…宜しくな、ワールス」


「うん!宜しくシー君!」


…何だよその呼び方。まぁ良いけど。


―――その頃、勇者を誘拐した場所付近にて


「………彼奴の言う通りにしたらこうなるとはね」


目の前に積み重なる暗殺者達。それを眺めつつ、片腕が折れても尚立っている男に目線を向けた。


「き、貴様…何故だ!お前はシャナリアだろう!?数代前から一切姿を見せていなかった…!」


「アハハ…今代の魔王秘書は強くてねぇ。負けちゃったから仕方なくね。まぁ強者に従う時代に戻ったと言えば良いかな」


「なっ…」


「君は生かしてあげるから王に伝えなよ。魔王軍にシャナリアが戻り、そして力こそ全ての時代に戻ったと」


「………どうせ挑んでも私は負けるな?」


「そうだね」


「…分かった」


「良い子は嫌いじゃないよ」


さて、国に戻ろ~っと。そう思った瞬間、強力な魔力反応を背後に感じた。


「…なるほどね。うんうん、どうして…魔神がこんな所に居るのかな?」


魔神、それは魔王を超越した存在。しかし申請な神々と違い、区分的には邪神と同等。


邪神との違いは宗教があるか否か。アザトースみたいに崇められてる系だと邪神区分になる。


魔神は基本的に忌み嫌われることが多いからね。大体が戦闘狂だし。


「うむ、実はシードに呼ばれていたのを思い出してな。後で紅茶と頼まれたのだが昼寝してしまったのだ。ので紅茶を届けようと思ったのだが…何故か魔族領におってな」


「えっ」


「自己紹介がまだだったな。俺はバハムート。魔神ではあるが龍でもある」


「あっ、居た居た。私もお菓子を頼まれてたの忘れててさ~」


「おぉ、お前もかアザトース」


はい知ってた。どうせ魔神もいるなら邪神も居るよね。知ってます知ってます。…は?


「アザトースって…邪神のトップ?」


「そうだよ!召喚されるだけで大体皆死ぬんだけど、まぁシードは死ななかった!んで面白いから仲間になった!」


「邪神のトップが!?邪神教は…」


「うん、シードの部下だね。シードと邪神万歳の奴等しか居ない」


「うわぁ…」

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