第6話 魔王と死霊使い

「――――いや、待って待って。さっきの彼女は居ないけどそれは卑怯でしょ」


「はぁ?俺は言う通りパラサイト君を連れず、しかも心優しい俺は仲間を二人しか連れてきてないんだぞ。対してお前は…何だこの数の配下」


俺、ラスト、ヴォイドは屋敷の前に居るのだが、扉の先には無数の吸血鬼が。日光でもやられないのはシャナリアの加護だろう。


とは言えビビっているのはシャナリアのみ。…吸血鬼ってここまで好戦的な生き物だったんだな。俺なら多分逃げるぞ。


だって一人はムッキムキの厳つい奴。もう一人は少女でクソ可愛いのに禍々しいオーラを放ってる。


「ラスト、敵はきっと強力な魔法を使ったり技を使う。って事で…速攻で殺すよ」


「うん!」


「ヴォイド、開門!」


「おう!」


扉が思いっきり開く、と言うより思いっきり吹っ飛び、それと同時にラストの死の霧が発動。


その霧を吸った吸血鬼は次々と倒れて行き、そこから魂の様なものが飛び出してラストの持つ大鎌に吸われていった。


「あれは俺がやるから二人は周辺の警戒を」


「ん!」


「分かった」


「…へぇ、私を人間如きが相手するんだ。二人を使役してるのもどうせ隷属魔法か何かでしょ」


「いや、ヴォイドは死者蘇生した後に戦って認めてもらった。ラストは俺が大量殺人してる時に出会って仲間になった。死んでるのか生きてるのかは不明」


「生きてるけど死んでるよ!」


「ほらな」


「…い、意味が分からん!」


やはり無詠唱か。しかも獄炎を放ってくるとは…やり手だな。まぁノーブルレッドなら当たり前か。


まぁ良い。問題は無い筈だ。何せ俺は…フロルの秘書なのだから。


「銀の弾丸はお好きかな?」


「…!?」


「錬金術さ。とは言え殆ど作れないけど…銀の弾丸はよく使ってたからよぉ」


素材はアイテムボックスにあるからな。それを使って弾丸を宙に生み出し、魔力で押し出して放つだけ。


「効かぬ!」


「そうか。なら…剣技で行こう」


シャナリアは剣を使うらしい。と言う事で俺も使う。秘書になる時フロルが一緒にくれた剣だ。


服装もあの時魔法で作ってくれた奴。もう一生これだと思う。何着か作ってくれてるしね。


「ッ…!何でお前如きが私と打ち合える!」


「何でお前は俺と打ち合う程度なんだ?っと…まぁやる事が山積みでな、早速だが技を使わせてもらう」


抑えている魔力を解放し、一歩踏み出すと同時に魔力を全身を剣に込めた。


「淵渦」


「レイの技だ~」


「彼奴の技を真似するとは…しかし坊ちゃんは制御が出来ていないようだな」


「あ、アハハ…」


技名はえんか、って読むらしい。神速で移動して相手を切るのだが、武器の接触部分から魔力を放出して巨大な渦を生み出す。


見た目はブラックホールだね。それに吸い込まれると凄く痛い目にあう。闇の荒波に呑まれてるようなもんだから。


10秒後に渦から絶対出れるのだが、それは生きてたらの話。死亡すればそのまま渦と共に消滅し、魔力となって発動者の体に還元される。


ただ今回の様に制御出来てない人が使うと渦のサイズが小さかったり、極端にデカかったりする。そして俺の場合、デカすぎて屋敷を飲み込んだ。


生命体以外も吸い込んでしまうのが欠点で、城内で使えば…ね。味方も吸い込まれちゃうし。


「そろそろかな」


そう言った瞬間に渦は消滅し、魔力が数倍になって帰って来た。屋敷の素材に含まれてた魔力とかも含まれてるからだろう。


そして…ズタボロになったシャナリアが渦のせいで生まれた窪みに倒れている。


「…まだやる?」


「わ、私がこの程度でやられるとでも?」


「……それもそうか。じゃあ…仕方ない、確実に魔力がゼロになるから使いたくないけど……」


「ヴォイド、私を守って~」


「力関係で言うと逆なんだが」


「まぁまぁ。守りに関しては私より上でしょ?」


「まぁな」


「な、何をする気!?」


「神羅万消」


全魔力を確定で消費する大技。別に魔力を使い切っても死なないから良いんだけど、筋肉痛みたいな症状が訪れるから嫌だ。


別に倒れるわけでもないしね。そりゃ凡人は倒れるけど、凡人で居たくないから努力した。


故に俺は魔力切れを起こしても普通に戦える。そりゃ頭痛いとかそういう症状はあるけど。


え?技の内容?全魔力を凝縮して爆発させるだけ。俺の体内から一気に魔力が溢れ出して周辺を消し飛ばす、以上。


「―――何あれ」


「さぁ。どうせお兄ちゃんだよ」


「私の技も使ったみたいだしね~」


「やはり面白い子だ。…我々の王に相応しい」


「「それ」」


「して…何事だ?」


「興味無~い」


「私も~」


「…レイ、テンペスト。お前達よくそれで魔王をやって来れたな」


「まぁね」


「天才なもんで」


「…お前達、後任は子に任せなかったのか?」


「えぇ。強い人が居なかったから夫居ないもん」


「同じく。ってかデミウルゴスも居ないでしょ」


「まぁそうだな。私など忙しすぎて公務以外頭に無かったからな。今の生活に感動している」


「「うわぁ…苦労人だ…」」


―――中庭にて


「茶うめぇ…」


「…ボロス、貴方どうして彼に従ってるの?」


「あ?負けたからに決まってんだろ」


「そう、単純ね」


「…パラサイトは何だよ」


「可愛いからよ。可愛いし強いから妻になるって決めたの」


「………それはダメだ」


「何で??」


「駄目だからだ」


「ふふ~ん、さてはボロスも狙ってるな?」


「んなわけ無いでしょ!?」


「ほんとかなぁ~」


―――シャナリアの屋敷にて


「………えっと、取り敢えず墓でも立てよっか」


「「賛成」」


「ちょ、ちょっと待った……」


「うわっ、まだ生きてるの?」


「わ、私の負けで良いわよ……。と、取り敢えず休ませて…」


「あっ、どうぞ」


すると椅子が三つ召喚されたので、俺はとりあえずそれに座った。周りを見渡すとヴォイドがグッドサインを出してる。


流石だ。気が利く男はモテるよヴォイド。


「二人共、飴舐める?」


「頂こう」


「私も!」


飴を舐めつつ、地面で休んでるシャナリアを見つめる事数十分。漸く彼女は起き上がった。


「し、シード…だったわね」


「そだよ」


「…いいわ、下に付いてあげる」


「ラスト」


「うん、嘘はついてないと思うよ~」


「そっか、んじゃ宜しく」


「えぇ」


「騎士団長任せるね」


「えぇ。………えぇ?!」


「だって騎士団の上層部を手駒にしてたんでしょ?ならやる事ぐらい多少は知ってそうだし」


「ちょっ…えぇ…?」


「任せたよぉ」


「……まぁ良いわ。あんたが慄く程に強力な騎士団にしてあげる」


「そうしてくれると助かる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る