第5話 ゴミはゴミ箱に
「はいはい、皆集まってくれて有難う。早速だけど幾つか質問がある。まず俺は魔王軍を乗っ取ろうと思うんだ」
「「!?」」
……???え?シードが魔王軍を乗っ取る?そんなの聞いてないんだけど?
えっ、今は城の前に皆集まってて、シードはバルコニーから話をしている。そして私はバルコニーに続く部屋の中。
「今の魔王軍はどうやら血統とかを重視している。将軍とかの階級はまだしも、貴族制度を導入しているそうだ。正直言って…俺は心底がっかりしてる」
「黙れ!高貴な血筋こそ全てだ!」
「今俺が話してる。お前は死ね」
手を向けて血魔法を発動し、体内の血液を全て抜き取った。その血は球に変えて宙へと浮かべる事に。
「高貴な血筋も種族によっては大事だろう。それによって種族が変わる。吸血鬼とかはそうだろう」
ノーブルレッドという吸血鬼の始祖が居るのだが、まぁ始祖と言って種の名称ではあるが。とにかくそいつらの血を持ってる奴は大体強い。
「まぁ原種の血を引く魔物は大体強いんだが、今死んだ奴はどうだ?貴族制度によって成り上がったただの雑魚だぞ?報告書によれば…お前等黙って言う事を聞いてたそうだな」
「「………」」
「今代の魔王フロルは12代目だ。では初代はどうだ。デミウルゴスの時代、それは正しく武と知こそ全ての魔王軍だった」
「に、人間が知った口を利くな!」
「当の本人に聞いたから言ってんだよ。…で、それで失敗してるならあれだが実際成功している。武による征服と知による統括だ。俺が求めるのはその時代の魔王軍。今は…知能や武力があるのに血統云々に左右されてしまうゴミ軍団だ」
「「黙れ!!!」」
「此処で大事なのは、今代の魔王の意思だ。今騒いでる馬鹿共はちょっと黙れ、殺すぞ」
そんな言葉が聞こえたかと思えば、ゆっくりと扉が開いてシードがこっちに手を伸ばしてきた。
「後はフロルがどんな魔王軍にしたいかだよ」
「……私は貴族制度は合っても良いと思います。ただ血統による貴族制度じゃない、武力や知力を示せるものが階級を与えられるようにしたい!!」
私の言葉は遠くまで響いていく。そして…疎らではあるが拍手の音が聞こえ始めた。
「最初に言った言葉は撤回しよう。俺はあくまでもフロルの秘書だ。しかし躊躇わず話しかけて欲しい。自分が本当に変わりたいのなら、な」
「…フロルは死霊使い。そして今の私達には過去の英雄が付いている!今こそ世界征服が出来るかもしれないんです!どうか…どうか力を貸して!」
ペコっと頭を下げてから、シードと共に部屋の中へと戻っていく。
「……どうなると思う、パラサイト君」
「私に聞くんですか?初代から三代目が揃ってるのに?私龍王なんですけど」
「三人は今当時の六王に話をして貰っててね。それにパラサイトなら見る目に長けてる」
「……端的に申し上げれば、知能派は確実に配下になります。問題は武闘派ですね。貴族派は死刑にしたとしても、武闘派は力を見せねば」
「ふむ。…俺が?」
「それが一番良いと思うよ。ラストが見せても亜神だからなぁ、で終わるけど一介の人間が見せれば納得する」
「なるほどね。分かった、今度やってみよう。…所でボロスは?」
「配下を集めに。我々も当時の配下を集めようか?」
「いや、まだ良いかな。それより外を歩こう。俺に話しかけてくる奴が居る筈だからね」
「うん、そうしよう」
「フロルは玉座の間に居て!すぐ集めてくるから」
「うん!ありがとう!」
「気にしないで!」
…流石は私のす…ううん、私の信頼する秘書。シードならきっと何でも出来る、だから私もシードの為に頑張らないと。
―――中庭
広大過ぎて何とも言えない。食堂に向かう通路の途中で一度外に出るのだが、そこに中庭がある。
対岸の通路は王城から騎士団本部に向かう通路。こっちは王城から食堂に向かう通路だ。二つの通路も兵士達が雑談する場所になっていていい感じ。
「「シード様!と…パラサイト様!?」」
「む?…あぁお前達か。彼等は騎士団に入ってる龍種でな。私が龍王の時代は配下として戦ってくれていた」
「おぉ、そんな人たちが騎士団なんて心強いね!」
「シード様、シード様が本当に昔の時代を目指しているならば…一つお願いがございます」
「何?」
「騎士団の上層部は金さえあれば言う事を聞く傭兵より酷いのです。誇りある騎士とは到底言えず…」
「要は騎士団の上を消せば良いんだね!隊長クラスからかな?」
「はい!全員です!どの隊長もクソで…!」
「全員ゴミなんです!」
「そ、そうだぞ!ってシード様だ!」
「わ、分かった落ち着け。お前達の言いたい事は分かった。お前達の様な誇りある騎士はとりあえず俺について来い」
「「はい!」」
「んじゃ…早速だが乗り込むぞ」
「…そっちは食堂です」
「あっ…。あっちか」
「はい。しっかりして」
「ごめんよパラサイト君」
「…まだまだ子供だね」
「これでも23なんだけどなぁ」
「いや、30過ぎじゃない?時間止めて修行してたじゃん。テンペストの時間操作魔法で」
「そう言えばそうか…。でもそれを言ったら何歳か分からないんだけど」
「…まぁ不老不死だし良いでしょ何歳でも。順当に生きてれば23?」
「そうそう。っと失礼するよ」
扉を開けて本部の中に入り、騎士に案内してもらって会議室へ突入。
「全員拘束。口を塞いで」
「こう?」
「そ。君達は…城の前で三日間全裸。罪状を知ってる子はこの板に書いてくれる?」
「な、何をなさるんですか?」
「罪状を書いた板を体に張り付けるの。裸だし相当来ると思うよ。序でに三日後に死刑です。…あっ、ちょい待ち」
会議室の奥の方に手を伸ばし、魔力の膜を破壊。すると…謎の扉が出現した。
それと同時に拘束されている全員が何かを察知して暴れ出す。それを騎士が無理やり気絶させてくれた。
「開くよ、気を付けて」
扉がゆっくりと開き、冗談抜きでパラサイトと引けを取らない魔力を放つ存在が姿を見せる。
それから拘束された馬鹿共を見て笑みを溢し、こっちに目を向けてきた。
「どうもこんにちは。私はシャナリア=ハイランドというしがない公爵だ。公爵家と言いたいけど私一人なもんでね」
「…ノーブルレッドかお前」
「おぉ博識だね、その通りだよ。私の可愛い下僕をやったのは君かな」
「そうだ。貴族はこれから血統ではなく武力と知力を持つ者のみなれる。お前はなれるだろうけどな」
「アハハ…取り敢えずおもちゃを壊した代償はデカいよ、人間」
「俺が勝ったら下に付け、シャナリア」
「私が勝ったら下僕になってね。屋敷で待ってるよ。あぁ…誰を連れて来ても良いけどその子はダメ」
「分かった」
「良い子ね。あっちに丘があって、その頂上に私の屋敷がある」
「おけおけ」
「それじゃ…またね」
体が闇となって霧散して行き、騎士は緊張感が解けたのか次々と気絶。
「ラストとヴォイドを呼んでくれ。早めに済ませた方がいいだろ、多分」
「承知。その後、此奴等にはシードがさっき言ったことをやっておくね」
「悪いね。騎士の皆は他の皆を集めて。そして隊長クラスを殺して。此処には居ないでしょ」
「「了解!」」
「それじゃ作戦開始」
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