第4話 忠誠心

――――翌朝


「うん、それは訓練からやり直しだね。これが今日からの内容。有無は言わさないよ、弱いとフロルに迷惑が掛かる。分かった?」


「「ハッ!」」


「お金は…うん、足りてないな。資金不足故に国の拡大がまだだったのか。デミちゃんの金庫を此処に繋げてくれる?」


「うむ。シード、お主のはどうする」


「俺は常にアイテムボックスと繋いでるし、俺と皆しか開けない方がいい」


「…そうですな。さて…領地拡大ですか」


「そ。デミちゃんの得意分野だったよね、一任しちゃっていいかな?」


「お任せを。期間は如何程に」


「そうだなぁ、一年!」


「随分と長いな」


「ううん、長いんじゃない。その期間を掛けて出来るだけ、最大限国を大きくし続ける」


「…ふっ、流石はシード。承った」


「ありがとデミちゃん!」


…………寝起きで見た光景がこれである。私の幼馴染で可愛いシードは何処へ行ったのだろうか。


いや、可愛いけど…こんな天才だった!?いやいやいや、凄すぎない?えっ、魔王辞めようかな。


「ん?起きてたんだフロル!」


「う、うん、まぁ…」


「どしたの?元気ないね」


「…いやぁ、魔王辞めようかなって」


「!?」


「だって私よりシードの方が凄いもん…」


「…良い?大事なのは出来る事じゃないんだよ。それに俺はフロルがやる気ないならもう辞める」


「えっ…?何でそこまで…」


「そう言うのは気にしちゃダメ!…どうするの?」


「…じゃあ今日は私と手を繋いで生活して」


「フフッ…うん、分かった!それでやる気を出すなら幾らでも手を繋ぐ!」


――――朝食


「此処が食堂?」


「うん!って…料理が超豪華なんですが!?」


「少々この城の料理人に料理とは何かを教えたまでだ」


「ヴォイド!さっすが悪魔料理長!」


「ハハッ、坊ちゃんには敵いませんよ」


「そうかなぁ。っと…皆来たね?」


「「此処に」」


「それじゃフロル、皆揃ったよ!」


「え、えっと…頂きます!」


「「頂きます!」」


「……シード、人参」


「ラスト、俺も要らないんだけど…」


「お兄ちゃん、貰ってあげるよ」


「テンペスト…。お前は最高の妹だ!」


「えへへ…」


…私にはわかる。テンペストは強い、女子として強いッ!!心の掴み方を分かってるんだ、あの子は。


「さてフロル、今日の予定だけど…六大王に集まってもらうから会議だよ」


「うぇ!?」


「安心して。僕が隣に居る。レイちゃんとパラサイトも護衛出来てくれる。そうそう、庭どうだった?」


「手入れがされてなかったので配下を呼んで手入れを」


「お~!…配下?」


「私達はもう死者じゃなくて生者。だから昔配下だった奴が生きてれば召喚できるの!」


「…生者なの?えっ、シードって死霊使いだよ?」


「そうだな。だが私達は生者だ。ハハッ、そりゃシードが弱い頃は死人だったぞ?」


「????」


「色々あるんだけど、手短に話せば禁術を全員に施したって感じ。やり方はデミちゃんに教わった」


「ふぅん…」


「俺も一回死んでるしね」


「えっ」


「13の頃に一回死んでる。デミちゃんとの戦闘で一回死んで、禁術で復活させてもらった」


「嘘…」


「本当だよ。その魔法を習得するのに時間が掛かったせいで、デミちゃんは当面死人だったよね」


「そうだな。賢者の息子と言えど流石に無理かと思ったが…テンペストのお陰だったな」


「そうそう。二人目なんだよね、テンペストは。最初がデミちゃんで二人目がテンペストだったんだよ!」


「確か…」


「私!」


「賢者の息子だって言っても、使えるのは精々超級程度を無詠唱できる程度でさ。そこから今じゃ全魔法を無詠唱でいけるようにしてくれたんだよ!」


「????」


「あっ、これ美味い!」


「坊ちゃんの好きな竜のシチューっすね、竜種が飛んでたので投げ技で倒してきました」


「ヴォイドは相変わらず凄い…。んで、全部使える過程の最後に禁術を使えるようになったってわけ」


「う~ん、でも魔法の扱いに関しては歴代最高って言われる魔王だもんなぁ、テンペストさんは…。納得できると言えば納得できる…」


「体力が無いんだけどね、面白い程に。レイちゃんが鍛えてくれてるとは言え、まだ三日三晩禁術を発動したら疲れちゃう」


「頑張るから許して!」


「可愛いから許す!」


――――そんなこんなで朝食を食べ終わり、今度は会議


「全員集まってるわ」


「内容はこれだ。お前のやりたいようにやると良い」


「え?…取り敢えず火王、最近火山地帯を取り込んだそうだけどどういう事?」


「あそこのボスはもう居ないんだ、取り込んで何が――――りょ、領土を拡大したほうが魔王様の為かと…」


「あっ、そうなの?それなら許しちゃう。んじゃ水王、最近雨不足何だけど」


「…あ、雨を降らせるのには魔力が居る。私だって振らせたくないわけじゃないけど、周辺の人種が邪魔してくるのよ」


「そう言う事ね。分かった、今度軍を派遣する」


「ありがとう…」


どうかな、私出来てるのかな。そう思いつつ横目でシードの方を見ると、何やらレイさんと話しをしていた。


護衛にはレイさんとパラサイトさんが付いてきてるのだが、恐らくレイさんに色々と調べさせていたのだろう。


「次は雷王。……お前、味方を殺したのか」


「強者が全て。失敗したものは殺す、それだけだ」


「ハハハッ!聞いたかパラサイト君!」


「えぇ、しっかりと聞きました。数年前、情報集め中の私を殺そうとして失敗した雑魚が…フッ、馬鹿々々しい」


「貴様…!あ、あの時のか!」


「雷王は交代だな。それで良いだろ?」


「えぇ」


「お、王を守れ!」


「クソ…!」


「死電一閃!」


「「!?」」


「はぁ…。綺麗な人たちなら許したけど、全然だね」


シードがそう言い終わる頃には、護衛二人と雷王の首は宙を舞っていた。そう、パラサイトさんの刀から飛ばされた斬撃によって。


「今代の六王はここまで魔王に忠誠を誓って無いんですね。私の頃の六王を召喚しようよシード」


「遺体を見つけないと無理」


「魔石があれば行けるでしょ!」


「…まぁ行けるけど、禁術使わないよ?」


「そりゃ勿論。禁術を使うのはシードと生活する家族だけだもん」


「フフッ…そうだな。…良いか馬鹿共、これが……二代目の六王達だ!」


死霊魔法を使い、魔石をコアにして嘗ての六王を復活させた。勿論当時の姿で。


「「………え?」」


「うむ、久しぶりに見たな」


「「レイ様!?」」


「フロル、これが普通だ。六王とは魔王に忠誠を誓う存在。各属性が結構扱える魔王が、あらゆる点において頂点に立つ魔王に忠誠を誓わないというのは到底理解できないだろ?」


「た、確かに」


「今の六王を見てどう思う。答えよ炎王ディーン」


…ん?火王じゃないの?なんか一つ上の階級に居なかった?気のせいか。


「ハッ、悲しい、そして腹立たしいの二言に尽きます」


「うむ。では真氷レイナ、どう思う」


……えっ、もう何か凄い二つ名なんですが。真の氷って……うん??


「我らが再び六王になるべきかと。我らでは役不足かもしれませんが…」


「どう思う?私はシードに任せちゃう!」


「少なくとも雷王は……いや待てよ、良い事を思いついた。会議は辞めだ、力こそ全ての魔王軍に戻すぞ!」


「「御意」」


「え?ちょっ!え?シード?ちょっと~!」

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