第2話 仲間は歴戦の猛者

「――ここが私の自室!」


「広いな。…メイドとかは?」


「居るけどシードが居るから要らない!」


「俺は紅茶淹れないぞ」


「そりゃ知ってるよ!あの頃は一緒に勉強とかもしてたじゃん!ってわけで紅茶は私が入れま~す」


フロル、今代の魔王であり歴代最強の魔王と呼ばれている。ただしその力で全てを破壊するような奴ではない。逆らう奴には容赦しないが、従う奴はしっかり保護して配下に加えている。


そんな奴が俺の幼馴染だ。とは言えあったときから分かってたけどな。翼生えてる奴が倒れてたんだから、直ぐ魔族って分かる。


取り敢えず食糧与えて翼を隠してもらい、近所のおばさんに預けた。7歳の頃だったかな、多分。


12になるまでは色々な事を一緒にしてたが、俺が13になる近くでおばさんが寿命で逝った。103歳だ。良く生きたと思う。


そして…それと同時にフロルは姿を消した。だが20の頃、同じシチュエーションでフロルに出会ったんだよな。


んでそん時は食べ物を持ってなかったから家に運んだんだが…その後は爆発され…って感じ。


「あの日からずっと手紙を送って来てたが…そんなに俺を秘書にしたかったのか?」


「え?そりゃ勿論」


序でに…此奴は誰しもが驚くほどに美女だ。胸が無いのが欠点と言う人も居るかもしれんが、そんな事ない。


黒い長髪も綺麗だし、その緋色の瞳も美しい。黒い瞳孔は…まぁ人間もか。


俺も容姿は似てる。黒い長髪に緋色の瞳だからな。だからよく姉妹かと思われたもんだ。


「二度も私を助けてくれたんだもん。信頼出来る」


「そうか。…そう言えば勇者の名前は何だった?」


「タナカ…何とか」


「異世界人だな」


「そうそう!女神の加護が云々言ってたけど弱かったんだよね!よっぽどシードのデコピンの方が痛い」


「俺のデコピンは一級品だからな。俺の相棒のボロス君もそれで手懐け…ボロス君何処?!」


「我を呼んだか主」


「良かったぁ…。家燃えたからどっか行っちゃったのかと」


「仮にも我は魔龍ぞ?」


「ごめん、可憐な美少女の姿でそれ言われても」


「………主が我をメイド姿にした事、忘れるでないぞ」


「女子なのは元々でしょ。ってかその堅苦しい喋り方は辞めて。フロルが困ってる」


「え、えっと…魔龍ボロスってもしかして…」


「うん、火山地帯に住んでた自称龍王」


「自称じゃないってば!」


「って訳でこの部屋のメイドはボロスに任せようと思う」


「……むぅ」


「お嬢はお嬢のやりたいようにしてください。私は気が利かないメイドなので」


「わ、分かった!」


「では私は一度失礼します。……ハッ!家がない…!」


「「おっそ…」」


「お前も此処に住め」


「うむ。だが前は屋敷の一室だったぞ」


「隣の部屋が空いてるわ」


「だそうだ」


「じゃあそうする。今度こそ失礼する」


「おう」


―――数分後


「主、服が無い!」


「アイテムボックスに入れておけとあれほど言ったのに…。俺はお前の服なんざ……あぁ、何着かあるんだった」


「それはそうだろう。私が持っておくように言ったのだからな」


「えっ…!?何で持ってるの!?」


「暗殺する時、女装したほうが楽に終わる事が多くてな」


「な、なるほどね…。じゃあ次からは私のも持って!」


「……考えておく」


「――――ま、魔王様!ご報告が!」


「入りなさい」


扉がノックされたかと思えば、重傷の兵士が一名入ってくる。傷跡を見るに魔法、炎系だろうな。


「アンデッド達が反乱を!もっと暴れたいと…!」


「ふむ、お前をやったのはレイスだな」


「お、お前は…!」


「答えろ」


「…そうだ」


「俺が行こう。ボロス君、行くぞ」


「せめてちゃんじゃないの?」


「いや、違う。あっ、外で龍形態になって待ってて」


「承知した」


「方角は」


「東だ。東に真っ直ぐ進めばでっかい骸骨が居る」


「おっけ~。さて、久々に呼び出すとしますかね…俺の仲間!」


「仲間?!」


「フロルは知らないよね、でも俺だって一人でSランク冒険者をやってたわけじゃない。過去の英雄を仲間にしてたんだ。勿論人前で見せるのはこれが初めて。だって一応死人だから」


軽く手を叩き、複数の元魔王や元龍王を召喚。それから現職で常に命を狙われてるサタン君も召喚。


まぁサタンは常駐ってより偶に呼んでる。盟友関係と思ってくれれば


「「………」」


「やぁ皆!前回のダンジョン攻略以来だね!」


「うむ。して何用だ。昼寝中だったのだが。暑かったが」


「そうよ。せっかく昼寝してたのに。暑かったけど」


「我は食事中だったぞ。汗をかく程に家が燃えていたが」


「我は気にならなかったぞ。まぁそれは我が亜神だからかもしれぬが」


「はいはい、暑かったのは家が燃えたから。次の家は此処ね」


「「承知した」」


「えっと……しょ、初代魔王のデミウルゴス様ですよね…?」


「如何にも」


全員見た目は当時の全盛期のまま。骨っぽくなる事はない、俺が死なない限りはね。


序でに魔王には属性事の魔王が居る。六大属性と呼ばれる火、水、風、雷、土、氷を司る六人の魔王が。


そしてそれらは基本的に魔王ではなく火王や水王と呼ばれ、魔王はそれらを統括する存在。デミウルゴスはその初代。


フロルも六人の王を統括してることになるね。要するに凄い。


「こ、これ全部シードの仲間!?」


「うん。デミウルゴスを仲間にするのが一番疲れた。13歳の頃に冒険者になって初めて仲間にした相手でもあるから」


「13で初代魔王様を!?」


「えっ、デミちゃんそんなに凄いの?」


「別にそこまでだな」


「し、シードはどうやって勝ったの…?」


「死霊術の中でも禁忌魔法でデミちゃんを復活させただけだよ。ね!」


「うむ。まぁ戦ったことはあるが…」


「圧勝でしたか?」


「互角だったな。まぁ死神と呼ばれる亜神を仲間にしているのだ、実力は明白だろう」


「本物だったの?!」


「小娘、我を疑ってるの?」


「こらこら、お菓子の食べ過ぎはダメっていつも注意してるでしょ」


「むっ…我は子供じゃない!けど注意する…」


「偉い偉い!」


この子は多分一応きっと死神。ステータスにもそう示されてるし、実力もあるけど…御覧の通り少女だ。


俺は身長が178くらいあるのだが、この子は160程度。小さい訳ではないが…何と言うか威圧感が無い。


「まぁ紹介は後程だな。敵はアンデッドだが…フロルの敵だ、滅す」


「「了解」」


「わ、私も付いてく!」


「魔王様!?」


「「何だ」」


「あっ、えっと…」


「お前らもう魔王じゃないだろ…。デミちゃんは執事だしラストは実質妹みたいなもんだし、他の奴等もそれぞれ仕事があるだろ?」


「「確かに…」」


「…一つ聞いても良い?」


「ん?」


「その力を使って世界を制覇しようとしないの?」


「それはお前の夢だ。俺はお前を助けるだけ。皆は俺を手伝ってくれる仲間で、支配に飽きてる」


「………」


「それに簡単なゲームは嫌いなんだ。俺はな、世界を支配した後に攻めてくる勇者も殺したい。そうすれば人類の希望は潰える。最高だろ?」


「し、シード…やっぱ変わらないんだね!」


「勿論さ。善人もいるけど関係ない。殺すんだ、全て」


「流石シード。私の自慢の兄」


「見た目似てるだろ?お前にもそっくりだ」


死神、というかラストは俺と見た目がほぼ同じ。黒髪で緋瞳だもん。まぁ髪の長さは短いけど。


「さっ…行こう。掃討戦だ」

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