アドウェルサ・ユニバース~とある魔王の世界征服譚~
@arisu29
第1話 魔王はずっ友
「………死霊使いとは言え、此処まで嫌われるもんなのか…?」
現在俺は自宅の前に居る。S級冒険者としてダンジョンをクリアし、疲れたから帰って来たのだ。
そしたら見ろ、燃えてるぞ。S級だし王国でも一応重宝されてた死霊使いである俺の自宅がだ。
四足歩行だったり二足歩行だったり、飛んでブレス吐いてどっか行く鬼畜な龍種にすら勝てる俺の自宅がだ。
まぁ一回家が爆発したこともあるんだけどさ。
確かに嫌われてるんじゃないかと思う事もあったさ。死霊使いと言えば死体を操るのが定石だからな。俺だって死体を操ってるもん。そりゃ嫌われてもおかしくはない。
だが口で言うべきじゃないか?陰湿過ぎるだろ流石に。
「……まぁ良いか。貴重品は全てアイテムボックスだしな。しかしどうしたもんか。冒険者はもうやらないとして…」
そう言えば魔王とか呼ばれてたよな、俺。死霊を操る、ノーライフキングと同じ様な扱いを受けてた事がある。
って事は…いっその事人類に仇なす存在になってみるか。俺の家族は皆揃って魔族じゃなくて人間に殺されてるしな。
俺の両親は貴族で、侯爵だったんだ。父は騎士公爵で凄く強かった。子供の頃はよく練習してたから、一応剣は使える。
んで二人は魔族との戦争ではなく、人同士の戦争によって死んだ。母は賢者と呼ばれる魔法使いの最高峰で、二人揃って最高のコンビだったのに。
死因はよく分かって無い。一つ言えるのは当時五歳だった俺は二人の魔力によって守られ、秘密の部屋に居たから助かったという事。
その部屋は魔道具によって生み出された部屋であり、部屋のコアは持ち運び可能。壊れなきゃその部屋も壊れない。
二人の死骸は使わないのかって?…俺だってそこまで堕ちてない。というか俺自身の手で火葬したし。
「あ、あんた!これ…」
「…フッ、国を出るから家を燃やしたんだ。どうせ俺の家だしな…」
「そ、そうか…。ってか行っちゃうのか」
「おうよ。まぁ世話になった。特に野菜類」
「ハハッ…気が向いたらまた買ってくれよな、シード嬢」
「外見が女だからって最後まで弄り通したのはあんただけだ。…また来るよ」
と言う事で城壁の外へと行き、王国の支配領域外へと出て行った。
探知魔法を使った所、近くにはゴブリンの集落が一つ、三キロ先にオークの集落が二つ。
「賢者の息子だから全魔法を使えるわけだが…使って良いのか?此処って魔族の支配領域だよな」
王国は魔族と最も戦っている年月が長い。その理由は魔族の領域と王国の領域が隣同士で、最も領域面が接触しているから。
正直俺は魔族との戦闘なんてこれっぽっちも興味が無い。理由?考えれば分るだろ、俺の敵は人間だ。魔族は別に邪魔するなら殺すだけ。
王国は居心地がいいから住んでいただけだ。両親もあそこに住んでたしな。
「止まれ」
「……魔人か。左足が痛むんだな。治癒でもして欲しいのか?」
「な、何故分かる…!」
「長年の経験だ」
「………い、今はそんなことどうでも良い。どうして貴様の様な男が此処に居る!また戦争でもしに来たか!」
「興味無いな。そもそも俺は家を燃やされたんだ。だから国を出てきた」
「えっ」
「何だよ」
「お、王国は馬鹿なのか?お、お前は……最強の死霊使い、というかあらゆる才能があるんだろ!?」
「だから何だ。お偉いさんの考える事は知らん。…なぁ、魔王城に連れてってくれよ」
「???」
「こっちに住みたいから。ほら早く」
「ッ…。なぁ、俺がお前と戦って勝てる可能性って?」
「俺に聞くのかそれ。…ゼロだろうな」
「…はぁ、分かった。連れてくけど…頼むから変な事をしないでくれよ」
「おう」
転移魔法が発動し、巨大な門の前へと移動した。どうやら城の前じゃなくて玉座の間の前らしい。
「ま、魔王様…その…」
「良い、入れろ」
「は、ハッ!」
扉が開いたので俺は前へと進み、厳つい兵士が脇に控えてるのを眺めつつ前へと歩んだ。
「久方ぶりだな魔王。二年前に俺の家を爆発させた以来か??」
「うぐっ…。せ、折角の再会なのに君は相変わらず痛い所を突くね…」
「こっちが善意で助けてやったのに、変態だの鬼畜だの叫んだ挙句にエクスプロージョンで家を爆発させる。…思い出すだけで此処を爆発させたくなってきた」
「せ、折角作ったんだから勘弁して!?」
「…そうだな、なら俺を秘書に置いて此処に住まわせろ。そしたら許す」
「うん分かった!っていうかや~っと秘書になるって約束を果たしてくれるんだね!」
「家を燃やされたからな」
「は?誰に?」
「人間だよ。どうせ王族だろうな。俺の天才的な才能を嫌ったんだ」
「ふぅん…」
「…で、世界征服の目的はどうした。何時まで戦争を続ける気だ」
「………えっと…」
「貴様、先程から魔王様に対して―――」
「黙れ。友達に対して普通に話すのはダメなのか?」
「そうよ。シードと私は恋人なんだから」
「「魔王様に…恋人!?」」
「おいフロル、誰が恋人だ。そもそもただの幼馴染だろ」
…此奴は近所の奴に拾われた孤児、のフリをして王国を偵察してた馬鹿魔王のフロル。俺と同じく万能だ。勇者だって一度追い返す程の実力者で、兵にも慕われている自称美女。
「そんなぁ…」
「魔王らしい服なんざ着てるが…お前は魅力がそこまで無いんだから辞めとけよ」
「…そ、そんなこと言わないでよ…」
「……泣き虫なのも相変わらずだな」
「泣いてないし!」
「…ハハッ、元気そうで良かった。長い間会ってないから不安だったが問題なさそうだな」
「……魅力あるもん」
「そうだな、あれは無いけど魅力はあるぞ。俺にも似た様な服をくれ」
「どうぞ~!」
魔法陣が展開されたかと思えば、黒くてカッコいいロングコート、下着、軽装鎧が俺の体に纏わりついた。
「皆、シードは今日から私の秘書で軍の統括だから!」
「「ハッ!」」
「部屋は…」
「お前の部屋で良い。ソファーがあれば俺は寝れる」
「分かった!本棚は沢山あるから安心してね!」
「おう。…所でエルフは居るか?」
「此処に」
「お前はトップか?」
「階級は将軍、名前はファームだよ!凄く優秀なの!」
「へぇ…。お前にこれやるよ。作ってもらったんだが弓は如何せん苦手でな」
「こ、これは…龍の素材で出来た弓!?」
「最近倒したばっかりでな。出来立てほやほやの素材で作ったんだ」
「は、はぁ…。本当に頂いても…?」
「あぁ。エルフは兎に角正確にやってくれるから俺は好きだ」
「…あ、ありがとうございます」
「むっ…。きょ、今日はもう解散!!!」
「「ハッ!」」
皆が玉座の間から出て行くと、俺の事をじっと見つめてきた。仕方ないので昔と同じように頭を撫でる。
するとあの時と同じ様に頷き、俺の頭も撫でてきた。
「俺の復讐も手伝ってくれよ?」
「勿論!」
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