5話 アキバハラでお仕事 4
UFOキャッチャーで無双したい気持ちはあったが、たいして欲しいものがなかったので、皇がここに入った理由の場所へ向かった。
それは、ジャパニーズ・プリクラであった!
平成からジャパニーズ・ギャルたちが夢中になっている写真機! ジャパニーズ・女子は遊ぶ時は必ずこれで友人と一緒に撮るのだという。最近は補正機能が凄まじく、撮れば皆女神のように美しく映るのだとか。元々女神である私はどうなってしまうのか、少し楽しみである。
機械はたくさん並んでいたがどこも埋まっていた。ジャパニーズ・アキバ女子が実際にプリクラで遊んでいる姿を見られて、私は少し感動した。
ちょうど女子たちが出てきた機械の中に入った。
黄緑色の背景の小さな個室。皇はコインを入れて、操作画面に触れた。
皇は、『友達とカップル、どっち?』『何人でとる?』などの可愛い声に、画面を触って答えていた。
個室の外の女子が、「めっちゃ盛れたじゃん〜」と笑い合いながら、手にある何か――おそらくプリクラの成果物を見合っているらしき手元が見えた。
そうだ。プリクラは写真。最後は、撮った写真を持ち帰ることができる。ならば……皇の顔を見える状態にすれば、家でも好きなタイミングで皇の顔を見られるのでは!?
私は、なにやらぴこぴこと音を鳴らしながら操作画面を触っている皇に、「メガネをはずして、前髪をあげてください」と命令した。
皇が「あ、はい」とメガネをはずしてしているうちに、『撮影するよ!』という可愛らしい声が聞こえてきた。
『一枚目! ギャルピして!』
「ギャルピ!?」
「多分、下の写真を真似て……」
カシャ!
容赦なくシャッター音が響いた。『こんな感じだよ!』という声がして、慌てふためく私の顔と、前髪を垂らしたまま画面に指をさす皇が画面に映し出された。背景は黄緑ではなく、紫色に変わっていた。
なるほど、指示に従い、表示された写真の通りのポーズをとっていけばいいということか。
ほとんど間なく、『2枚目行くよ!』と声がした。
「前髪!」
「あっ、はい」
『ルダハートして!』
ルダ? なんだかしらんが、ほおに片手でつくったハートの形の片割れをつけるのか!
カシャッ!
あ~~~~顔きれい~~~~! 顔、すきぃ~~~~!
『3枚目、行くよ!』
は、はやいっ!
息つく暇もないほど早く、4枚目、5枚目、6枚目と撮っていき、全部で10枚撮って終わった。
『撮影、終了〜!』と言われ、私はぜいぜいと息を切らせていた。皇も同じだった。あんなに高速で指定されたポーズや表情を作るなんて、なんて大変な遊びだ……。ジャパニーズ・女子の強さを思い知った。
これで終わりかと思いきや、「落書き」をしなければならないらしかった。10枚のうち6枚を選んで、ペンやスタンプで装飾することになった。
「何を書けば……」
「僕もはじめてなのでよくわかりません。記念ですので、日付を入れておきましょう」
他に思いつかないので、皇が6枚全てに日付を書き込んで終わった。私は6枚の皇の顔をゆっくり眺めていて、それどころではなかった。
かなり補正されてしまい目鼻顎の比率がおかしいことになってはいるが、皇の顔だ。たどたどしい微笑とぎごちないポーズが、可愛くて萌える……。顎の下でハートを作ったやつと、指ハートが特にいい。ファンサ感がある。萌え……。
機械の外に出てしばらく待つと、直径20センチほどの細長い写真がことりと落ちてきた。細長い中に6枚が凝縮されているので、一つ一つの写真が小さい。引き延ばしてポスターにして壁に貼りたい……。
……って、何を考えているんだ私は!
ポスターを壁に貼る……それではまるで推し活ではないか!
私の部屋の壁は、推し――つまり、緋王様のためのもの。
萌えるからといって、大切な推しの聖域を侵すなど、断じてしてはならない……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます