4話 間接キスでお仕事 2
荷物を片付け、すとんと自席に座った皇の前に、私はふっと出現した。
「おはようございます」
「あ、おはよう、ございます」
「ノート、ありがとうございました」
「いえ、どうも」
「ところで、どうしてメガネをかけているんです?」
「え……。度が入っていないと近くのものしかよく見えないのと、ブルーライトカットも入っているので……」
私は指を伸ばした。すっと、皇のメガネを取る。
そして、自分にかけた。ぼやりと視界がゆがんだが、すぐに見え方を調整した。
長い前髪から、皇のきれいな瞳が驚きで丸くなったのが見えた。
「あっ……!」
豚どもがブヒィーーーーッ! と一斉に鳴いた。
「没収です」
自席に足を向けると、豚どもが私の右側にズザザザザッとスライディング正座してきた。
「わわわわわわ私のメガネも献上します!!」
「いえこんな脂ギトギトなメガネではなくこの僕のメガネを!!」
「いえ僕のメガネを!!!!」
などと一斉にメガネを外し私に捧げてきたが悉く無視した。
ああ、やっぱりいい顔……。
前髪は鬱陶しいが、いつもよりは顔が拝める可能性が高まった。
席に座ると、皇がおずおずと私の方を振り向いてきたのが豚どもの壁越しに見えた。
餌を求める子犬のようだ。ふふふ、可愛い。そして、手の上で転がしている感じがして楽しい。これぞ神の遊びよ。
だが、メガネを取ったのは顔を見るためだけではない。今日は体育がある。運命写真に、「5限の体育の時間、ボールが顔面に向かってくるが回避」とあったのだ。メガネがなければ回避は難しいだろう。タイミングを見計らってボールの威力を上げ、脳震盪を起こしてやる。
それにしても、なかなか度が強い。4限までは座学だが、5限前後に階段で足を踏み外して死ぬように仕掛けてもいいかもしれない。
ふっ、いいぞ。順調だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます