第22話 悪魔からのご褒美

「お父さん、いよいよですね」

 私は嬉しさのあまり、つい作業中の父に話しかけてしまった。

「今集中しているから黙っておれ」

 ほら、言わんこっちゃない。

 案の定激怒しまった。

 俺が今いる所は地下。

 鉱石がたくさん採れる洞窟よりもさらに奥だ。

 父曰く敵国から逃れるために駆け込んだ先がポポポポー村で、村長とは馴染めず退却を余儀なくされたが、洞窟に逃げ込んで穴を掘った。

 そして、ここで計画の準備をしながら生活をしていたとのこと。

 計画というのはもちろん人形化計画だ。

 その話を持ちかけてきたのは、父本人だ。

 俺は最初は疑っていた。

 計画もそうだが、俺に父がいる事に疑っていた。

 なぜなら俺は小さい頃に両親は殺されたと聞かされていたからだ。

 半信半疑の俺を感じ取ったのだろう、父は証拠として箱みたいなのを取り出した。

 その箱は実に奇妙で、カチャカチャうるさいボタンが並んでいる板と合わせて使うと、眩しい光を放つのだ。

 それがただの光ではない。

 何やら緑色の中に数字や文字が書かれていた。

 そのボタンを押すとそれが出てくるのだが、父は巧みに扱っていた。

 これを見てみると、父は過去に何をしてきたのかが気になった。

 どうやってその知識を身に着けたのだろう。

「おうおう、お揃いじゃないか」

 そんな事を思っていると、入り口から男が入ってきた。

 悪魔だ。

 悪魔は黒いレンズでできた眼鏡をかけ、派手な柄のジャケットを付け、短パンに素足剥き出しの靴をはいていた。

「おう! 来たか!」

「よう! 調子はどうだ?」

 父は悪魔を見ると、まるで親友にでも会ったかのようなテンションでハイタッチしていた。

 悪魔は父とハグをした後、「お前らに褒美を持ってきた」と言って指を鳴らした。

 すると、俺らの目の前にアルール姫とアリーサ王妃が縄で縛られた状態で現れた。

 二人とも怯えた目で俺らを見ていた。

「ご褒美ってまさか……」

 俺が唾を飲み込んだ後に聞くと、悪魔は「決まってんだろ。この二人だ」と彼女達を指差した。

「お父さん!」

 俺は父の方を見ると、彼は静かに首を振った。

「ワシはもう歳だ。精力はカラッカラよ。だから、お前の好きなようにしなさい」

 父は悪魔の方を向いた。

 悪魔は父が伝えたい事が分かったのか、「そうだ! そうだ! 遠慮なく思う存分楽しめ! 好き放題! 食べ放題!」と奇怪な声で笑った。 

「じゃあ、遠慮なく……」

 俺はゆっくりと彼女達に近づいた。

 無意識のうちに俺は全裸になっていた。

 怯えた顔で見つめる彼女達。

 いいねぇ、いいよ……その顔が俺の身体を盛り上がらせてくれるんだ。

「爆乳姫とロリ巨乳王妃……いただきまぁあああああああああす!!!!」

 そして、俺は彼女達に飛びかかった。

 ここから先は俺の喘ぎ声で、どんな事が行われているか、察してほしい。

 読者的には不本意かもしれないが。

「おごっ?! おほほほほほほ!! ふんぎゅぅぅうううう!!!」

「ふふふふ、無様な顔だな」

「フンフンフンフンフンフンフン!!! ばっどぅうううううう!!!」

「はぁはぁ……もういっせぇえええええん!!!」

「おらおらおらぁああああああ!!!」

「次はどっちにしようかな……こっち……と見せかけてお前だぁあああああ!!!」

「おほほほ♡ ほほひほほ♡」

「アバババババババ!!!」

「り、理性が崩壊するぅううううう!!!」

「新たな王国には跡継ぎが必要だ! お前らはその跡継ぎを産まなくてはならない!」

「ふうううううううううん!!!!」

「ほんほ、ほんほ、ぬほぬほ、ほんほ、ほんほ……」

 俺は叫んだ。

 叫んで、叫んで、叫びまくった。

 ついに念願の母娘と遊ぶ事ができたのだ。

 俺一人。俺一人のもの。

 誰が息子なんかに渡すか。

 俺だけだ。

 俺だけのものだ。

 俺だのフィアンセ。

 俺だけの……俺だけの……。

「跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ!」

 そうだ。

 これから大家族を作るんだ。

 何百人の子供を作って、とんでもない国を作るんだ。

 俺達が大帝国を築き上げるアダムとイブ。

 イブが二人いるが、別にどうでもいい。

 その方が大帝国までの道が達成できるのが二倍になる。

「跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ! 跡継ぎ! アババババババ!!!」

 また終わって、また始まる。

 交互に入れ替えて、延々と続く。

 なんて最高な無限ループだ。

 この調子なら双子どころか、五つ子が誕生するぞ。

「最高、最高、最高、最高、最高、最高、最高、最高、最高、最高ぉおおおおおお!!!」

 あぁ、永遠に続けばいいのに。

 この快楽が無限に続いたらどれほど幸せか。

「おびぼぼぼびびび!!!」

 もう言語をまともに話せないくらい楽しかった。

 楽しかった。

 信じられないくらい楽しかった。

 今まで生きてきた中で一番の出来事と言ってもいいだろう。

 だから、そのせいか、段々力が入らなくなった。

 流石にハッスルしすぎたか。

 心なしか、俺の腕が細くなってきた。

 あれ? 俺の身体ってこんなに貧弱だっけ?

 もっとボンレスハムぐらい太かったような……あぁ、そうか。

 母娘との楽しみがかなりエネルギー消化するから、痩せちゃったんだな。

 素晴らしいダイエットだ。

 楽しいだけではなく、生活習慣病を治せるとは。

 俺はなんて幸福者なんだ。

 俺ほど幸せを手に入れた男は早々いないだろう。


「馬鹿な奴だな。壁に向かって発射してらぁ」

「あれがワシの息子だと思うと情けなくてしょうがない……まぁ、今日でおさらばできるから別にいいが」

 こいつらは何を言っているんだ。

 俺が壁に向かってやっている?

 馬鹿を言うな。

 最高級が目の前にいるだろ。

 こんなとびきりうまい極上肉が目に入らないんなんて、こいつらは愚かだな。

 父と悪魔の会話は続く。

「さてと……修正はできたか?」

「あぁ、バッチリだ。村娘に壊された箇所は別のものにあてて置いた」

「うんうん、それはよかった……お前らに協力していた村娘はどうしたんだ?」

「お姫様にさせておいたよ。来世では望みの人生を送らせてやると約束したからな」

「おー、まるで天使みたいな事をするじゃなぁないか。俺だったら、容赦なく切り刻むね」

「逃げた猫達はどうする?」

「ほっとけ。どうせ何もできやしない」

「そうか……じゃあ、あいつはどうする?」

「あー……別にこのままでもいいんじゃないか? どうせ死ぬだろうし」

「あぁ、そうだな。死ぬな。間違いなく」

 一体誰の事を話しているのだろう。

 少なくとも俺ではないのは間違いない。

 だって、こんなに元気なんだから。

 何時間も楽しめるぐらい精力があるし、それにこれから先もまだまだ活躍したい。

 生きたい。

 生きたいんだ。

「むひょ! ぬるるるるる!!!」 何百回目の絶頂を迎えた。

 が、突然視界が暗くなってしまった。

 最初は停電かなと思ったが、父や悪魔が騒いでいない事を考えると、私の方に問題が起きたらしい。

 まさか……まさかだとは思うが。

「目……俺の目……」

 俺の視力が失ったというのか?

「やだ、やだ、やだぁああああああ!!!」

 なぜだ。なぜなんだ。

 どうして視力を奪われた?

 それにさっきまで感じていた肉欲はどこにいった?

 まるで視界とともに泡になって消えてしまったかのようだ。

 悪魔だな。悪魔の仕業しか考えられない。

「おい、悪魔ぁああああああ!!! 俺の目を戻せぇええええええ!!!」

 俺がそう叫ぶと、悪魔がフンと笑った。

「あいつ、何やってんだ? 俺の事を舐めた態度で接してくるんだけど?」

 悪魔はどうやら父と話をしているらしい。

「あー、これは……死の前兆だな。もう長くはないよ」

「確かにガリガリだし手遅れだな」

 こいつらは本当に何を言っているんだ。

 からかうのもいい加減にしろ。

「はやくぅうううう!! 元にぃいいいいい!!! もどせぇええええ!!」

「あー、うるさい。うるさい……さて、俺はそろそろ戻らないといけないけど……お前も来る?」

「イヤ、ワシは別の所で暮らすよ」

「あぁ、そうかい……じゃあ、新天地まで送ってやるよ」

「おぉ、助かる」

 奴らは俺の声なんか聞こえてないかのように話した後、足音が遠のいていくのが分かった。

「もどせぇ! 戻せ戻せ戻せ戻せ戻せ戻せ戻せぇえええええ!!!」

 俺はそう叫び乍ら全力で駆けようとした。

 が、真っ暗闇の中で走ることは不可能だった。

 転んでしまい、地面に叩きつけられた。

「ふぐ……」

 当たりどころが悪かったのか、息ができなかった。

 立ち上がろうとしても全然腕に力は入らなかった。

 あぁ、やってしまった。

 どうして悪魔の誘いなんかに乗ったのだろう。

 奴らを信用してはいけないな……。


↓次回予告

次で最後の話になります。

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