第9話 親友の誕生日を盛り上げちゃうぜぇえええ!!!!

 私はとんでもないミスを犯してしまった。

 もちろん、今日がシャーナの誕生日なのは覚えている。

 だけど、余興で披露するはずだった私の生歌(渾身の力作)の歌詞を忘れてしまったのだ。

 メロディーもどんな感じの音色だったのか、サッパリだった。

 うわー、あの時メモに書き留めておけば良かった。

 なんで曲ができた時にメモしておかなかったのだろう。

 そんな自分に嫌気がさすが、今は悲観している場合ではない。

 みんなシャーナのために色んな出し物を用意しているのに私だけ無いのは親友としてあるまじき行為だ。

 どうしよう。

 シャーナのプレゼントはもちろん用意してある。

 愛情込めて作ったバースデーケーキだ。

 だけど、余興……何をすればいいんだ。 

 一から作詞するには間に合わない。

 これはかなりの大ピンチなのでは?

「いたーーー!!!」

 私が頭を抱えていると、突然声をかけられた。

 見てみると、私の前に三人の女の子が立っていた。

 格好は私が変身した姿と似ているが、色が違っていた。

 左から順に青、赤、黄色のスカートとブーツを履いていた。

「僕はオーサン!」

 青髪のショートヘアが左腕を斜め上に出して構えていた。

 その左腕に『003』と描かれていた。

「あたしはオーシン!」

 金髪のツインテールが右腕を斜め上にして構えた。

 オーサンと同様に『004』と描かれていた。

「そして、私がリーダーのオーゴン!」

 赤髪のクシャクシャ髪が両手を上げていた。

 手のひらに『005』と描かれていた。

「三人合わせて……」

 彼女達はせーので息を合わせると「マジカルトリプルズ!!!」とビシッと構えていた。

 私はとりあえず「おぉ〜!」と拍手する事にした。

 これに気を良くしたのか、オーゴンが「ありがとう! 早速私達『マジカルトリプルズ』の歌を披露するね!」と言って、いきなり歌い出した。

 最初から最後まで聞いた私は『これはいけるぞ!』と直感し、彼女達に親友の誕生日会で一緒に歌ってくれないかとお願いしてみた。

 三人はほぼ同時にウーンと腕を組んで考えると、「いいよ!」と軽い口調で承諾してくれた。

「ありがとう! じゃあ、時間もないし練習しよう!」

 私は早速彼女達に曲の割り当てや踊りの振り付けなどを教わった。


 シャーナの誕生日会が始まった。

 他の所はどうかは知らないけど、ポポポポー村にとって村人の誕生日は一大イベントの一つだ。

 会場は村長の庭だ。

 なぜそこなのかというと、そこそこの人数で開催できるのと毎日開催しても迷惑がかからない所は村長の庭ぐらいしかないのだ。

 だって、みんな誕生日バラバラだもん。

 もちろん、重なっている村人がいた場合は合同で行うけど。

 今日はシャーナしかいなかったので、私やお母さん、シャーナの両親や友達、さらには読み聞かせに参加している子供達など、のべ五十名ぐらい集まった。

 本日の主役であるシャーナは頭に花冠を付けて、参加者からプレゼントをたくさんもらっていた。

 この前、『毎日散歩しかやる事がない』とか言っていた彼女もいつもより晴れやかな顔をして眩しかった。

「シャーナ! お誕生日おめでとう!」

「ありがとう! モプミちゃん! これで私もモプミちゃんと同じ14歳だね!」

「プレゼントのバースデーケーキどう?」

「うん! チーズが濃厚で最高! めちゃくちゃ美味しい!」

「ほんと?! よかったーー!」

 なんて会話をしていると、村長が咳払いした。

「では、これよりシャーナの誕生日会を開催する!」

 村長の挨拶が終わると、大テーブルに豪華な料理が並んだ。

 私の手作りケーキはもちろんのこと、ウインナーシチューやパンの盛り合わせ、フルーツサラダなど、とにかく山盛りで豪華な料理が並んでいた。

 皆、仲良く平等に分けて食べていた。

 その間、余興が行われる事になった。

 村人達はシャーナを楽しませようと紙芝居やダンス、マジック、モノマネ、大道芸などをして楽しませていた。

 幸いな事に歌はまだ誰もやっていなかった。

(被らなくてよかった)

 私がホッとしていると、村長のお手伝いさんが近づいてきて、耳元で「そろそろ出番です」と教えてくれた。

 私が村長の家に入ると、マジカルトリプルズとチュプリンがいた。

「よーし! 絶対に成功させるぞーー!!」

「おーーーー!!!」

 私が拳を突き上げると、彼女達も同じようにやってくれた。

「ちょっと! これってどういう……」

「メチャラモート!」

「うにゃあああああ!!!」

 チュプリンが何か文句を言いたげだったが、その前に球体に吸収させて変身した。

 そして、三人組と一緒に最終確認をした。


「次はモプミとマジカルトリプルズの演目です。どうぞ」

 村長から合図が来たので、私達は緊張した面立ちで舞台に向かった。

「みんな〜〜! こんにちは〜〜!」

 私が可愛い衣装を来ているからか、皆どよめていた。

 シャーナは『何をするのだろう』とワクワクした眼差しを向けていた。

 私はオーシン達とアイコンタクトを取った後、横に一列に並んだ。

「それでは聞いてください。ポポポポーー!!!」

 私は楽器が無くても音楽が鳴り響く魔法をかけた。

 すると、どこからか演奏しているかのようにアップテンポな曲が流れてきた。

 これに村人達は最初は戸惑っていたが、すぐに慣れて盛り上がっていた。

「走り出そう! 私達のパワーを知るために〜♪」

 私とオーゴン、オーサン、オーシンの四人は音楽に合わせて踊り、歌をうたった。


 今日は何か良い日が起こる(それは何?)

 博士から至急呼び出されたんだ(どうして?)

 だって、近頃ニュースでは

 怪人や怪物だとか

 そんなニチアサ的な敵がいるから

 博士と知り合いの私達は絶対(間違いなく)

 絶対(ほぼ確実)

 絶対(100%)

 パワー的なものを授けてくれるはず


 とりあえず、キラキラな汗流して

 ヒロインっぽい顔をして走るよ

 この先に待っているのは憧れていた

 ニチアサファンタジー

 小さい頃から夢見てた事だから

 絶対に(何としてでも)

 必ず(どんな手を使ってでも)

 スーパーヒーローになってやるんだから


 ほら、赤、青、黄、白の髪が揃ったよ

 これはもう始まるね

 私達のドリームストーリー〜♪」


 ここでほんの少しだけ間奏が入り、小刻みに踊った後、二番を歌った。


「予想通りパワーを貰ったよ(やったね)

 だけど使い方がよく分からない(どうして?)

 だって、説明する前に怪人きちゃった

 大ピンチだけどやってやるわ

 私達四人の力があれば

 何とかなるはず

 魔法の合図で全員集合!

 レッド!(可愛くて最強!)

 ブルー!(とにかく早い!)

 イエロー!(カレーマニア!)

 ホワイト!(特になし!)

 何とか怪人を倒せるはず


 とにかく、キラキラな光を出して

 変身して魔法少女になってみるよ

 手から何か出ると思いきや

 何も出ないビックリハプニング

 えっと(このままじゃ負ける)

 あぁ(もうどうしたらいいの?!)

 とっさに割と強めの物理的なパーンチ!

 それ、グチャ、メチャ、バッチャとやっていたら

 何だかんだで勝てたよ

 魔法を使わないスーパーヒーロー〜♪」


 また間奏が入るが、今度は長めなので、シャーナのお誕生日おめでとうの挨拶と自己紹介をして、ラストスパートをかけた。


「あぁ、ついに始まる

 私達のニューステージ

 緊張する(ドキドキ)

 でも、楽しい(ワクワク)

 これはもうなんか一年くらい続けられそう!


 とりあえず、キラキラな汗流して

 ヒロインっぽい顔をして走るよ

 この先に待っているのは憧れていた

 ニチアサファンタジー

 小さい頃から夢見てた事だから

 絶対に(何としてでも)

 必ず(どんな手を使ってでも)

 スーパーヒーローになってやるんだから


 ほら、赤、青、黄、白の髪が揃ったよ

 これはもう始まるね

 私達のドリームストーリー


 ほら、みんな「いっせーの!」でジャンプだ!

 夕陽に私達を照らして

 なんかキラキラした感じで

 曲が終わるよね〜♪」


 曲の終わりは皆横一列に並んで手を繋いだ。

「せーの……ニチアサドリーム!!!!」

 私達はそう叫ぶと一斉にジャンプした。

 着地したと同時に曲が終わった。

 たちまち拍手の渦が巻き起こった。

「なんだ、今の歌?! 歌詞の意味、全然分かんねぇけど、なんかすげぇ!」

「私も歌詞の意味が全く持って理解不能だけど、こんな楽しい気持ちにさせたのは生まれて始めてだわ!」

 村の人達も私達のパフォーマンスに喜んでくれたみたいだった。

「やったね!」

 私はオーゴン、オーサン、オーシンとハイタッチをして無事に余興が終わった喜びを分かち合った。

 あぁ、めっちゃ青春している。

 そう思っていると、「モプミちゃん!」と本日の主役がやってきた。

「シャーナ! どうだった?」

「最高だったよ! 歌詞の意味が古代文字並に理解できなかったけど、涙が出るくらい感動したよ!」

「ほんと?! 良かった……」

 ホッと棟を撫で下ろしていると、シャーナに抱きしめられてしまった。

「ありがとう。今日は素敵な誕生日になったよ」

 親友にそう言われて、私は泣きそうになった。

 あぁ、生きててよかった。

 ジーンと胸が暖かくなっているとシャーナ思い出したような声を上げて、私の顔を見た。

「ところで、モプミちゃん……『ニチアサ』ってなに?」

「さぁ? 私も分かんない」


↓次回予告

 3回目の魔王と王子様sideストーリーです!

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