第2話 それから、思い出したこと
2025年になり思い出したことがあった。以前のSNSアカウントがずいぶん長いこと放置してあったことをだ。
大したことじゃない。加えてどうしたってことでもない。
単に使用していないアカウントがネットに放置されているだけのことだ。
そのアカウントを使用していた頃に思ったり考えたりしたことが、そこには残っていた。変なもので、自分が発した言葉だというのに妙にむずがゆかったり、変に恥ずかしさすら覚える。
黒歴史と言われるような文章も、10代から20代にかけて使用したノートにいくらかは残っている。しかし、電子化されてネット上に残っているのは、それらとは別で何ともなく感慨深かったりする。
最初は仕事でパソコンを触るようになり、気が付けばずいぶんと気に入って、色々なことを覚えた。キーボードの触り方や、ディスプレイの持ち運び方。ウィンドウを閉じる方法を覚えたあたりから、なんか変な方向へ向かった気がする。
OSが起動してこなくなって、起動ディスクを使ってパソコンを起こしたこともある。その時にディスク内のファイルが、削除した気でいても本当はヘッダ情報だけ書き換えて、上書き可能な状態で残っていることも知った。
ネットワークに接続するとき、TCP/IPと呼ばれる通信ルールに則って信号がやり取りされていることも覚え、パソコンの中でも似たような、けれど全然違う仕組みやプロトコルでCPUやメモリがHDDとやり取りをしている。マウスを動かすと座標の数値が増えたり減ったりして、X軸とY軸に対してZ軸を用意してきた人は本当にすごいと思った。誰なのか調べたこともないけど・・・・・・
コンピュータの歴史は古く、大昔は解析機関と呼ばれる装置から生まれてきたことを知り、暫くの間どう作成すればできるのかをずいぶんと調べたり悩んだりの頃があった。思い返すだけで楽しい。
ずうっと誰かと一緒でいて、ずうっとあてもないなんだかボヤっとした目標を目指して足掻いて、気が付いたらそうしたものを全部なくして、なくしたのかと思ったら最初から何も持っていなかったってことに気が付いて、途方に暮れた。
ずいぶん長い間、途方に暮れていたように思える。十年と少し。
最初の十年は、教わってばかりの年月。次の十年で安全な世界からそれらの覚えた知識を実践して、三度目の十年で実践の場へ飛び出し、明け暮れてがむしゃらに、思うがままに奔走して、四度目の十年が今振り返ると、なんだか色々ありすぎて不思議な記憶の塊に思える。五度目の十年はあっという間に過ぎ去り、気が付けば六度目の十年を過ごしている。不思議なものだ。
思い出に焼き付いた人の顔が、どれも笑顔ばかりになってくるのは嬉しい誤算だ。年を取れば取っただけ悲しい思い出ばかりになるのかなと諦めかけていた頃もあったけど、どうやらそうでもないらしい。
気の持ちようと、それに左右される行動が大事なのだろうね。そういう気がする。
誰かに言われて動いていた頃や、誰かの真似をするしかなった頃や、コツコツ頑張ることが面倒に感じていた頃が少し悔やまれたりもする。あの頃から積み上げていたら、今頃はどうだったかなと。
そうやって思い出したあれこれが、今日の今を形作ったわけではないと振り返ると、なんだか無駄に足掻くばかりの半生だったなと悲しくなりもしたり、それでもその頃があったから今があると思えるように、今をもう少しだけ何とか頑張りたいと思ってみたり。半世紀を生きても性根はふらふらしたままでなんとなく頼りないのは相変わらずな気がする。
眠りにつくまでの間、ほんのひと時、隣にいる連れ合いを想い、明日を想像する。もっと楽しい人生にしていきたいし、もっと嬉しいことを体験させてもあげたい。頑張る理由など並べ立てる趣味はないので、ただそれだけ書き残しておこう。
会社の起業とか、何かの活動に参加とか、いろいろとありそうだけどなんかズレているらしい。旅行だったり美味しいものを食べに行ったりとかが良かったりするのかもしれないけれど、自分がそういうものをあまり嬉しく覚えていないからなぁ。
でもひょっとしたら、その辺り似ていたりしないだろうか?なんて自己弁護の期待。
一緒にいられる間だけでも、素敵な生き方を共にしたい。けれど何が素敵なのかがよくわからなくて、割と当たり前に空回りしているのはなんとなくわかる。
なんだかつまらないことを思い出しているな、今。
よくなっていくための何かを、できれば手にしたい。嫁さんと、できれば仲の良い知り合いと、人との繋がりが楽しくなるような、そうした人々との輪に参加することができて、面倒もなく辛い思いもさせられず、負荷もかけられず、他人の荷を背負わされることもなく、皆で笑って歌を歌ったり、音楽を奏でたり、本を読んだり、語り合ったり、議論したり、他にもいろいろ
つまらなくない人付き合いができればいいなと、最近は少しだけそう思うようになってきている。
何を思い出した話なのだか?まとまりがいまいちだね。
世界は生命で満ちている 潮ノ仁詠 @Memen
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作者
潮ノ仁詠 @Memen
筆名: 潮ノ仁詠(うしおの ひとよみ) 好きな作家さん、眉村卓さんや光瀬龍さん。SFが大好物です。百億の昼と千億の夜で衝撃を受けて、似たような物語を書き殴ったりをしていました。 その後の好…もっと見る
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