第23話 ニードルガン凄すぎっすわ! 

 馬車から外に出て、ニードルガンを構える俺。

 別に手なんか震えてねーからな! どっからでもかかってこい! 

 俺のクラウドさんはすげーんだぞ! 

 よーし……「オートエイムモード開始。対象を補足、射出します。次、射出します。次、射出します。次、射出します。次、射出します」

「うおおおお、結構反動がすごい! つか、どこ飛んでったんだ?」

「ギャアアアアアア!」

「ぐあーーーー、痛ぇ……!」


 次々と悲鳴だけが響き渡る。

 悲鳴上げたいのは撃った方の俺なんだけど。

 しかし今のでもう玉切れだわ。どうすりゃいいんだ。


 直ぐに三人のいかにもって顔したごついヒゲ親父たちが御者の方へ向かっていくのが見えた。俺は荷台の後方付近にいる。

 長い曲刀、斧、ぼろい槍を握ったまま青い顔をしてやがる。


「おい、聞いてないぞ! 大したことないカモだって言ってただろうが!」

「ギリィもグンヌももうダメだ。ぴくりとも動かなくなった」

「まぁいいんじゃねえの? 取り分が増えるだけだろ。へっへっへ。さぁお届け物をこっちに渡してもらおうか、兄ちゃん。大丈夫だって。楽ーに殺してやっからよぉ……おい、逃げんな!」


 逃げるっつーかお前ら遠くからでも匂うほど臭いんだよ! 

 何日風呂入ってないんだ。そんなんじゃ女にモテないぜ。

 おっと、演技を継続しなければ。

 今の俺にはクラウドさんがいる。怖くなんかねえぞ! 


「しまったーー! 届け物を宝箱に……でも今は逃げるしかねぇ!」

「おい、お前らはあいつを追え! 俺は宝箱を確認してくる」

「へっへっへ。逃げられると思ってんのかぁ?」

「ミドロ! てめえはいつまで馬車に乗ってやがんだ。お前も手伝え!」

「寝ないで飛ばしてきたから眠いんだがなぁ……」


 俺の方へ三人。馬車に頭目と思われる奴が一人。

 さて、どうしたもんか……「弾丸を引き戻し回収します」

「はい? 引き戻し!?」


 透明な糸に引っ張られ、飛ばした針の弾がニードルガンへと戻って来る。

 奴らは気付いてすらおらず、追いつけると思って夢中に笑いながら追っかけてくる。

 刈る者と刈られる者の差は、その表情だという。

 俺は刈られる者の表情のまま。

 奴らは刈る者の表情のまま。


「マスター。カモがネギを背負ってやってきますね」

燻製くんせいより臭いカモはいらないぜ、クラウドさんよ」


 笑う奴らに容赦なくニードルガンの銃口を向ける。


「オートエイムモード開始。目標補足。射出します。次、射出します。次、射出します。作戦終了。全員気絶させることに成功しました。ミッションコンプリートです。クラウドサポートモードを終了します」

「……本当に殺すつもりの人間に追われるのって、やっぱ怖いな」

『マスター。この世界は弱肉強食ですね。もっと生成レベルを上げましょう』


 動悸が止まらない。やっぱ異世界、怖ぇ……いくらオートエイムだからって、俺が銃を持って撃ってるんだ。

 これも全部あの執事のせいだ。許せん! 今度会ったらいたずらの一つでもしてやらんと気がすまん! 

 ミミーが気がかりだったので、馬車まで急ぎ戻ると、がっつりと頭目らしい奴を頭からかじっていた。

 持っていた斧はぼろぼろに壊されてる。

 こいつの足も負傷させてるな。宝箱開けたときにやられたのか? 

 にしても……「本当、盗賊って臭い……ミミー、お前よく平気だな」

「あいー。これ美味しくないー」

「イギイイイイイイイ! 助け、助けてくれ。頼む、殺さないでくれ」

「おいおい、こっちを殺そうとしてたのに随分都合がいいこと言ってるな」

「な、なんでも言うことを聞くから。頼む、この通りだ! あんたらが強いなんて知らなかったんだよ。なんて魔法だ……こっちは八人、いや九人いたんだぞ?」

「ふん。舐めてもらっちゃこまるな。俺は……えーとだな。あれだ! 元ギガズ殺戮隊所属、エイトオブエイト様だぞ!」

「ひ、ひぃーーー! ギガズ殺戮隊!? お、俺が敵うわけねぇ……」

「お前を俺の力で瞬殺するのは楽勝だ。だがお前にチャンスをやってもいい。馬車を操縦して俺たちを王都まで運べ。その後王都で自首するなら命は助けてやってもいい。もし怪しい動きをすればその時お前の命はない。いいな? これは俺が寝ていても勝手にお前を殺せる……超大魔法、ヤッチマエクラサンって俺専用の魔法だ」


 そんな魔法は無いし俺には知的生命体の二足歩行生物を殺す度胸なんて無い。

 念のためオートエイム無しで適当に木へ撃ってみせる。

 ……あ、外れた。銃って扱い難しいのね。


「な、なんだ今のは……」

「これは俺の命令したことに背きたいなーなんて考えたやつの方向に勝手に飛んでいくんだよ。つまりお前が逃げようとしたり違う場所へ連れて行こうとしたそのときは……一瞬でぐさりだ」


 上手い、上手いと言わざるを得ない。

 頭にニードルガンを押し付けて脅すと、ブルブル震えてちびってしまった。

 なんなら俺がちびりたいんだけど。

 後で銃を洗濯しよう。

 こんなのやりたくないよちょー怖いよ! 

 なんで強盗とか出来る人いるんですかね。信じられませんよ。


「さ、逆らいやせん。直ぐ出発しやすから! ど、どうか!」

「よし。他の奴らのことは王都についたらお前が衛兵に洗いざらい伝えるんだぞ。お前が報告すれば多少は減刑の余地があるかもな」

「あ、あいつら死んだんじゃ……」

「おいおい。俺を快楽殺人者か何かと勘違いしてないか? こっちは情報が欲しいんだよ。だから一応、今のところ殺してはいない。それで、なぜ御者を使って俺を狙ったんだ?」

「それは……いや、旦那にゃ隠し事は出来ねえ。俺は本当に恐ろしいもんに関わっちまったんだな……あの町、プラプライムは狙い目だったんでさぁ。大した兵士も無い割に、金と人の流れがある。俺たちゃ金で雇われたんだ。潜入してあそこの領主が誰に肩入れしてるか探れと。でも受け取った金がはした金で、それで……」

「お前らの依頼者ってのは誰だ?」

「分からねえ。フードを被った奴だった。王都の酒場で依頼を受けたんだ」


 つまりこいつからじゃ情報は仕入れられないか。

 あの御者でも同じだろうな。


「分かった。んじゃ王都までよろしく。お前らの食糧くれよ。ミミ―が大量に食うから」

「……あのガキは一体なんなんです? ありゃモンスターでしょう?」

「俺が知るかよ。さ、行こうぜ」

「へ、へい!」

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