第22話 アクティブリンク機能付きサーモグラフィ搭載サングラスだと!?

 ミミーはミミックの姿になると、箱から顔だけ出して何か渡せと言ってくる。


「食べ物がいい」

「お前が食いたいだけだろ……」

「じゃあ服でもなんでもいいよ?」

「そんじゃボッチから受け取った貴族っぽい服を入れてくれ」

「うん!」


 しまった後に幼女の姿に戻ると、俺の服がその場から消え失せたじゃありませんか。

 再度ミミックの姿になり、服を出してもらうと……「おい。肉汁がついてるんだけど」

「えへへ……」

「えへへってお前、汚して戻すとかいう斬新な箱あるか!」

『マスター。大変重宝する能力だと進言します。他にも能力はあるのでしょうか?』

「肉汁つけた服を出すのがか!? ……ミミー、これ以外にも何か能力あるのか?」

「ええっとね。小さくもなれるよ?」

「ほう。どのくらい?」

「これくらい!」


 指先二本でちょこっとを表す仕草は可愛い。

 こうやっておとなしそうにしていればこいつは可愛い。

 改めてミミーの特徴を見てみると、幼女形態のときは八十センチくらいの身長しかない。

 ミミック状態のときは、ふたを開いた渕に牙が生えていて、そこから両手を箱のふちにつけて頭だけ出して小さいベロを覗かせている。

 箱には別途目のような文様がある。

 あれはモンスターの目だ。

 髪色は箱と同じエメラルドグリーン。目の色も同じだ。

 

 そんなミミーはみるみる小さくなっていき、胸ポケに入るくらい小さくなりやがった。

 

『マスター。これは素晴らしい能力です。クラウドとの相性も抜群とお伝えします』

「確かに収納しておいて胸ポケにしまっておけるのはいい能力かもな。よし。今は戻っておいて、歩いて移動するときはその大きさで俺がつれてくぞ」

「あいー」 


 そーいやこいつ、ステータスに魔法があったよな。

 物騒な名前も書いてあった気がする。


「もしかしてお前……死の魔法とか使うの?」

「んー。使いたくなーい。箱になったままじーっとしてびっくりさせるのが好き」

「ふーん。箱のまんま移動出来るのか?」

「誰かに見られてたら出来ないの。誰も見てなかったら出来るよ?」

「そういうところはいかにもミミックっぽいな……」


 ――それから初日の移動中、休憩を挟みながらミミーの能力を把握しようと話をしてみると、使える能力が多いことが分かったのだ。

 まずミミックってのは魔法が極めて効き辛いモンスターの部類らしい。

 なんで人型少女の形をしているのかは知らないが、恐ろしい死魔法まで扱えるらしい……が使いたくないし使わせたくもない。

 他には宝箱と間違えて開けた奴を、眠らせたりしびれさせたり驚かさせてちびらせたりもするらしい。

 ミミックってか幼女型ビックリ箱だろ。

 ガチミミックモードの場合幼女の面影は無いが。

 ――そんなこんなで一日が過ぎたが、御者は休憩せず馬車をずっと走らせていた。

 急いで運んでくれようとしてるのか? 

 仮眠はそこそこ取れたし、道も順当通りな気がする。

 ふと、箱型ミミーの下に紙きれが落ちているのに気付いた。


「あれ? なんだこの手紙」

「預かった服に入ってたー」

「……げっ」


【エイト殿へ】

 お伝えし忘れていましたが、この御者にはある疑惑が掛かっております。

 少々危険……とお伝えしたかと思いますが、ゆめゆめ油断なさらぬように。

 ああ、この馬車については紛失してしまっても問題ありません。

 ちょうど買い替え時でしたので、新しいものを手配しています。

 それでは依頼の件、頼みましたよ。

 領事館、ライオットより。

 私はボッチではありません。ライオットです。


 ……くっそ、あの執事! 

 これじゃ御者が悪者で、俺が襲われると言ってるようなもんじゃないか。

 ――「お兄、馬車止まったよー?」

「ミミー。戦闘になるかもしれない。お前の力も借りたいんだが……クラウドさん!」

『進行方向から計測。目的地から少し外れたことを確認。盗賊の可能性が高いと進言します』

「相手は人かよ! こんなもの撃ちこんだら殺しちゃうんじゃないか?」

『クラウドが操作すれば致命傷となる可能性は低いと進言します。また、その針であればこの世界でも十分作れるので、紛失しても問題ないとお伝えします』

「ミミー。お前は馬車に宝箱の姿で残って罠にはめてやれ」

「分かったー!」

「御者にはまだミミーの存在は気付かれてない……クラウドさん。数は分かるか?」

『マジックを消耗してサーモグラフィ搭載型とうさいがたサングラスを生成することを進言します』

「分かった。マジック消費は痛いが、頼む」

『AI道具生成を承認。サーモグラフィ搭載型サングラスを生成……完了しました』


 ぽとりと落ちたサングラスを拾い上げて直ぐに装着する。

 こいつは凄い……大きさから人型かどうかも判断出来る。

 小動物も映るがそっちは無視だ。

 数は……おいおいおい。八人もいるぞ!? 

 やっべぇ。弾数が足りない。

 オートエイムしてもらっても五人しか倒せないじゃないか。


「位置を把握しました。先制攻撃しましょう」

「うお!? サングラスから直接クラウドさんの声が聞こえる!? サングラス使ってんのにオートエイム出来るの?」

「生成レベル上昇により、可能であるとお伝えします。ニードルガンとアクティブリンク可能なサーモグラフィサングラスです」

「すっげぇ……頼むぜクラウドさん! 俺は馬車から降りる。ミミ―のところに何人か来るはずだ。殺さない程度にやっちまいな」

「はーい!」

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