第21話 専用の狙撃武器を生成しようじゃないか

 ライオットとの談を終えて領事館を後にした。

 館内を探索して領主の顔でもちらりと見たかったのだが、他の執事と思われる奴らが多くて出来なかった。

 しかし……あの執事の笑い声が頭に聞こえてくるようだ。


「なぁクラウドさん。この旅路、安全だと思うか?」

『マスター。馬車での旅路ですが、今のうちに武器を生成しておくことを推奨します。現状、ゴブリンより強いモンスターに遭遇そうぐうした場合、身一つのマスターでは危険だと進言します』

「だよなぁ……そうすると銃がいいか。マジックを使う銃って生成出来ない?」

『可能であると進言します。ただし、マスターは魔法が使えませんし、銃の取り扱いは簡単ではありません。弾丸も同時に生成する必要がありますが、最低でも弾一発でマジック一千は消費します』

「俺の残りマジックいくつだ? リファレンス」


 エイト

 年齢 26

 職業 ダンジョン攻略者

 レベル 769

 LIFE 21000/23550

 MAGIC 16120/39300

 STR 772

 VIT 2320

 DEX 5320

 INT 999999不能

 AGI 532

 習得魔法 無し

 スキル AIトーク、AI生成メニュー、AI並列処理


 ……おお? ダンジョンクリアしたら職業がおかしくなった!? 

 俺の肩書きは脱獄者じゃなくなったわけだ。

 いや、冒険者登録したら職業冒険者じゃないの? まぁいいか。

 マジックはガラスコップと木のコップ作ったからかなり減ってるな。

 ぶっ倒れない程度に武器を作ってもらうか。


「一万で作れる銃ってどんな銃になる?」

『六スロットルの拳銃型が生成可能だと進言します。ただ、実弾を打ち出すことは推奨されません』

「実弾じゃダメなの?」

『AI道具生成では、放出した弾丸が残りますし、重量や音も気になります。それは大変危険だと進言します。AIジェネレーター生成で弾丸を作る手段は推奨されません』

「つまり、銃の弾丸が見つかると、俺がわけの分からない武器を扱う不審者認定されるのか。拳銃も隠しやすい奴にしなきゃいけないってことね。それに弾丸も使い切りで当たったら消滅するとか、この世界にもありそうな弾? どんなものがあるんだ? 想像もつかないんだけど。電撃を放出する銃? それだとマジックすげー使いそうだよな。今のマジックで作れるのか?」

『拳銃本体と弾丸五発を生成するとして、最弱の弾丸、かつ、弾丸のような技術の結晶ではないものですと、ニードルガンを推奨いたします』

「ニードルガン? なんだそれ?」


 俺の知らないようなワードだ。

 さすがはAIってところか。


『ニードルガンは短い針の塊などを射出する銃です。現マジックでは一本の針を射出するタイプが限度です。ニードルガンを生成しますか?』

「頼む。ようやくまともに戦えるな。まぁクラウドさんを早く生成したいんだけど。今は生成レベルを上げよう」

『AI道具生成……短針銃及びニードル弾を五本生成しました』

【AI生成レベル上昇】

 ん? 何だ今の普段とは違う安っぽくない音は。

 ついに生成レベルが上がった!? 

 いや、今はそれより生成した銃だ。

 黒い短めの懐サイズの銃と針弾。面白い形の銃口。

 怖い、怖すぎる。銃なんて持つの生まれて初めてだわ。

 AIの画像で生成してみたことはあるけど、実物は超怖いし生々しく感じる。


『照準などはオートエイム式採用の制御銃です。このクラウドにお任せ下さい。それと、領事館よりマスターがひっそりと持ち出した菓子類を早めにお食べになり、休息することを進言いたします。その後、衣類を保護強化したもので見た目も違うものへと着替えましょう』

「物騒だが、あの執事からもらったものをそのまま使うのはまずいか。俺にこんな貴族っぽいの似合わないしな。しっかしオートエイム? そうでもしてもらわないと当てられる気がしないから助かるな……さて、ライオットに聞いていた領事用の馬車乗り場に向かうとするか」

『グラドさんたちはよろしいのですか?』

「ああ。あいつらを巻き込む必要は無いだろ。この町にいるんならまた会うこともあるかもしれないからなー……」


 リーアにしろグラドにしろ、俺とは違い元からこの世界の住人だ。

 結局護送の離城とやらにも連れてはいけないわけだし。

 あんまり慣れ合いすぎるのもよくない。大義名分があって王国に行けるならこの世界の情報はそっちで調べられるはずだ。うん。

 ――着替え終わった後、指定された馬車乗り場へ到着すると、ライオットに渡された紙を、やる気の無さそうな御者に見せて馬車の中へ乗せてもらう。

 豪華な馬車。中は広く、なんなら寝るための一式道具まで積んである。

 そして馬車は直ぐに出発した。


「御者さん。目的地まではどのくらいで到着するんだ?」

「マジックオブコート国まで二日で到着します。道中はご安心下さい」

「それじゃよろしく頼んます。俺、寝てるんで」


 ……安心しろって言われてはいそうですかとはもうならない。

 ここは異世界だ。なんなら牢獄の町だって転移されて連れていかれた。

 あの執事が嘘を言っているようには思えなかったが、あいつは確かに道中【少々危険】てきなことを言っていた。

 休めるうちにしっかり休んでマジックを出来る限り回復させておく必要がある。


「……あれ? なんだこれ」


 御者に行先の確認などをしていたら、いつの間にか自分の座っている横に立派な見覚えのない箱があった。

 なんだろう、嫌な予感がする。


「ううーん。ご飯ー……」

「……お前、ミミーだろ」

「お兄? やったー! むぐっ……」


 慌てて口を押えたが、なんでこいつがここに!? 

 一体どうやって入ってきたんだ? 

 

「静かにしろ、お前どうやってここまで来たんだ?」

「んーとね。従属契約するとマジックを使って移動できるんだってー」

「だってー。じゃ、ねえ! まさか冒険者登録で見たあれか……こんなことも出来るのかよ。んじゃ何か? 俺がお前のお守役おもりやく決定ってか?」

「えっへへー。もうお兄から離れないもんねー」

「おま、ふざけんなよせっかくめぐるめくエイトさんの城下町巡りでむふふな思いをしようと企んで……企んで無いわけでも無かったってのに、これじゃ全部パーじゃねーか! あれか? また可愛いお子さんですねーとか言われんの? 冗談じゃねーぞ。こちとら堂々の彼女募集中歴二十六年だ!」

「あのー。少しお静かに。モンスターを呼んでしまいます」

「……すみません」

「ミミー役に立つもん! なんでもしまっておけるんだよ?」

「なんでもしまっておける? 何だそれは。まずお前自身をしまえ」

『マスター。非常に興味のあるお話です。詳しく!』

「クラウドさんが知りたいんかーい!」


 予期せぬ仲間の登場。

 旅は、クラウドさん、ミミックのミミーと三人旅になりそうです。

 俺とクラウドさんの心ときめく二人旅を返せ! 

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