第3話 分かったぞ、俺の能力!

 牢屋に放り込まれ、汚いベッドに横たわりながら思考を巡らせ今出来ることを試すことにした。

 まず、リファレンスとは自分のステータスを参照する能力だ。

 つまり能力がまったく使えないのではなく、魔法を一つも覚えていないことになる。

 そしてこれはステータスに表示されるようなものではなく、この世界の言葉が話せるのと同様、転移したときに授かった能力なのかもしれない。

 そうでなければ言葉が理解出来、しゃべれるのにステータスにその欄が無いのは不自然だ。

 このリファレンスもマジックの値が十ポイント消費されている。

 つまり能力もマジックを消費して使うものなんだ。

 俺が魔法を使えないのは、魔法として認識されている魔術というものに違いない。

 ではマジックとは何か。

 魔法でも能力でも消費する精神的な数値に違いない。

 不思議な現象を起こさせる……まさにマジックなわけだ。

 そうでなければ俺にマジックという項目があるのは不自然だ。

 そして、このマジックというものを使用して発動可能なものに、スキルというものがあるのだろう。

 つまり、俺の▲▲トークというものにも発動方法があるはずだ。

 それをどうやったら発動できるのかを考えていた。

 ヒントはグラドとの会話だ。

 自分で考えて使う……つまり使用方法が人それぞれ違うものがスキルなんだ。

 さっきレベルが上がったしもう一度リファレンスしてみるか。


「リファレンス……」


 八神 八雲

 年齢 26

 職業 投獄者

 レベル 2

 LIFE 310/310

 MAGIC 490/510

 STR 3

 VIT 16

 DEX 31

 INT 9999

 AGI 4

 習得魔法 無し

 スキル AIトーク、AI生成メニュー


 ……あれ? ▲▲がAIに変わってる? 

 職業も変化した。投獄者っておい。それ職業じゃねーからな? 

 これ、レベルが上がって能力の真価が解放されたのか? 

 おいおいおい。AIトークにAI生成メニューだって? 

 これは使えるスキルなんじゃないのか? 


「とはいってもなぁ……ここにパソコンとかあればAI生成出来るんだけどなぁ……AIトークってどうしたらいいんだろう……えっ?」

『AI生成担当、クラウドです。現在待機中です』

「はい?」

『はい? はAI生成に相応しくない内容です。AI生成をせず、終了します」

「ちょ、ちょっと待って! え? どういうこと?」

「おい、うるっせえって言ってんだろうがこのダボが! ぶち殺されたいのか!」

「す、すみませんー!」


 あまりの出来事に声が大きくなってしまった。

 危ない危ない。

 ここからは小声でベッドの片隅に隠れてやろう。

 グラドも不振な目でこっちを見ている。

 さっきのは間違いなく脳内に響く声だった。

 俺がAIトークって言ったから反応したのだろうか? 

 それなら……「AI生成メニュー……」

『AI生成メニューを開きます。項目を参照し、選んで下さい」


 よしよしよーし! いいぞ。それでいい。

 俺の正面にメニューが浮かんできた。


【AI生成メニューレベル一】

 AI画像作成

 AI動画生成

 AIジェネレーター

 AI道具生成


 ちょっとクラウドさん。どうみても使えない項目があるんですが。

 AI画像とか作ってみたいって思ってたけど、牢屋でそんなことしてどうすんの? 

 それにAI道具って何だよ。いや待てよ、どんな道具でも作れるなら脱出は容易いか? 

 ロボットを作って壁を壊してもらえばいいのか? 

 腹も減ってるし、何なら食べ物をAIに作ってもらえばいいのか? 

 だめだ分からん。こういう場合はAIであるクラウドさんに質問しよう。


「AIメニューの使い方が分かりません。教えてくださいクラウドさんお願いします」

『各項目の説明を開始します。現在のAI生成メニューはレベル一です。AI生成メニューのレベルが上がればコンテンツの増加が可能な他、各項目で作成可能な生成されるもののレベルも上昇します。AI画像作成は、指定された画像をAI技術で構築し、放出、投影します。AI動画生成では、指定内容により動画を生成。その場に現実世界と同等のリアルさを表現した動画を放出します」


 待て待て。全然分からない。放出ってどういうことだ? 

 立体なやつ出て来るわけ? 俺は放出系能力者になったのか? 


『AIジェネレーターでは、指定されたAIの生成体を放出し操作可能です。クラウドに操作を委ねることが可能です。マジック量により活動時間が異なります。また、使用後は消失します』


 つまりクラウドさんが操作する何かを作れるってこと? 


『AI道具生成は指定された道具を生成し、AIで操作します。レベルが低いうちは使用出来ません』

「つまり、現状だとお勧めは……」

『AIジェネレーターを強く推奨します』

「それってクラウドさんが表に出たいだけなんじゃ?」

『繰り返します。AIジェネレーターを強く推奨します』


 なんで繰り返したんだ? 嫌な予感がする。

 ええいままよ……牢獄に入ってすぐ脱走する奴なんてそうはいない。

 つまり今は絶好のチャンスなんだ。


「ちなみにクラウドさん。俺が牢屋から無事脱出して逃亡出来る確率とか、分かる?」

『AIジェネレーターの使用を駆使すれば、百パーセント脱出可能であるとお伝えいたします』


 本当だな。信じるぞ。ツボを売り幸せになるみたいな発言だが、もしこれでダメだったら詰みだからな! 

 

「それで、どうすればいいんだ? クラウドさんが考えてくれんの?」

『一任することも可能ですが、指示を出すのはマスター次第です。詳細な指示をお願いします。ちなみにマジックが切れれば作られたAIジェネレーターは消失します。現在のレベルでは、複雑な生成が困難であるとお伝えします」


 まじかよ。それならば……。

 この壁を破壊可能で、俺を抱えて町から逃げれる奴? そっか、AIに作らせる呪文を考えろってことだよな。

 それも複雑だと生成出来ないから、最初はなるべく簡潔に。

 なんだよ、AI生成ってまんまじゃねーか。

 それなら俺の得意分野だ。いや待てよ? 

 せっかくなら二人抱えるくらいの大きさがいい。

 牢屋を破壊しまくって脱出の方が騒ぎが大きくていいかもしれない。


「人型で俺とクマ一匹抱えられるくらいの体格。壁をぶっ壊して遠くの森まで運べて魔法が一切効かないようなゴーレムを生成してくれ。AIジェネレーター発動! ポチっとメニューを押せばいいんだよな!」

『AIジェネレーター発動を確認。AIジェネレーターを起動します』


 頼むぞ。上手くいってくれ! 

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