第8話 ユウキの特異性
ユウキは自分が特別な存在であることを悟っていた。
自分がテニスの試合で負けそうになると、自身の身体が黄色く発光し、常人とはかけ離れた力を発揮する特異性を幼少の頃から感じていた。
しかし、それを上手く扱うことが出来ておらず、発光した試合では逆転勝利し、発光しなかった試合では負けるということを繰り返していた。
全麦オープン決勝に向け、ユウキは自身の身体に起こる特異性に関し、大学病院の精密検査により、分析を行っていた。
結果、彼の遺伝子には30%ほどホタルの遺伝子が含まれていることがわかった。
ホタルの力を引き出せる時には、人間を遥かに凌駕する能力を発揮して他のプロ選手を蹴散らして来たのである。
流石の大野の分析力を持ってしても、彼がホタルの一種であるという事実までは解析できずに、光ったことに驚くという反応しか出来なかった。
大野が2球目のデコ前サーブを放つ。
ホタルとなったユウキには、デコ前にサーブが通用せずに、簡単に返される。
「なんだと!?」
自分のサーブが通用せずに大野は動揺しながら、リターンを返した。
それもそのはず、大野のデコ前サーブ最大の特徴は、前に飛び出たデコが光ることにより、相手の意識を集中させる技であるが、デコよりも光っているユウキには通用するはずが無かった。
そして、発光しているユウキの眩しさのあまりに大野はボールを見失ってしまい、強く返球することが出来ない。
(これはより光った方がポイントを取れるセットだ)
大野は心の中で思った。そして、相手よりも光るように、よりデコを前に突き出す。ユウキも負けじと発光する。
両者あまりの眩しさに、会場ではサングラスをかける観客が続出していた。
光りすぎて良くわからない状況の中々、テニスボールのパコーン、パコーンと打たれる音だけが2時間ほどなり続いた。
「ゲーム ユウキ!」
発光対決では、大野は一歩及ばず、ホタルに軍配が上がった。
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