第5話 外国人の鼻サーブへの懸念

 第3セットは大野のサービスゲームであった。大野は得意の外国人の鼻サーブで反撃を狙っていた。

 しかし1st サーブを外してしまっていた。


「やはり今日は外国人の鼻サーブの調子が良くないな」


 第1セットの時点で外国人の鼻サーブの調子が良くないことはわかっていたが、良化する傾向は見られずに、無理矢理、鼻を高くしようとした結果、第2階席上段まで飛ばしてしまった。


 通常テニスでは1st サーブが決まらなかった際には2nd サーブをする。

 大野かんたに至っては2ndサーブが嫌いなため、1st サーブが入らなかった場合には自らWフォルトにするルールを提言し、テニス協会側もそれを承諾している経緯がある。


「くそっ!なんでこんなゴミみたいなルールがあるんだ!」


 大野かんたは、自ら提案したルールに対して怒りを露わにしていた。


 何度やっても、2階席上段にしか行かない外国人の鼻サーブ。


「40-0」


 気づけば3球で連続失敗で大野は追い込まれていた。


「おいおい、大丈夫か?外国人の鼻サーブが出来ない大野なんて、只の初老の若ハゲのじゃないのか?」


 観客の心無い怒号が飛び交う。


 大野は逆境に強い選手でもある。

 彼の異常なまでの精神力は、国民的メンタリストであるRaigoも太鼓判を押していた。


「大野かんたっていう選手がいるんですけどぉ~彼の特徴として、メンタルが強いっていうものがあるんですよ。

で、これなんでかって疑問に思って研究した学者の方がいて、論文になってるんですね。

ある大学で行われた、人体の構造による論文なんですけど、精神に作用するデルタドーパミンが普通の人であれば、200mg~300mgなのに対して、大野かんたは驚愕の実験結果が出ていまして・・・

なんと驚きの20000mg~60000mgだったんですね

よって、大野かんたは常人の100倍から200倍も出てるから、そりゃ強いよね!って感じだったんです

で、このデルタドーパミンはどうやって強くするのかって話なんですけどぉ〜

遺伝によるものが大きいって実験結果も出ているんですよぉ~

不思議でしょう?

だから、普通の人と遺伝子レベルで優れているから、大野かんたはメンタルが強いよねって話でした」


 こうした大野の強さを研究する学者は数多くいるが、そのどれもが大野かんたは遺伝による強さが大きいと結論付けていた。

 


 そして、大野かんたは4球目のサーブを放った。


「ゲーム! ユウキ!」


 大野の放ったサーブは3回席中段に突き刺さった。

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