第4話 無名選手の逆襲
ユウキのブロッコリーラケットによる猛攻は続き、大野は後手後手に回る展開を余儀なくされていた。
大野は野菜の中でブロッコリーは比較的に好きなほうではあったが、ユウキによる猛攻と、マヨネーズが付いていない生の状態であるのも相まり、苦手になりそうだと感じていた。
「40-30」
1stセットの圧倒的な展開から一変し、大野が押される展開を目の当たりにした観客は驚きが隠せずにいた。
大野自身も生まれて初めて体験する、相手選手のスコアに刻まれた40という数字を見て、動揺すると同時に
(なぜ15→30ときて、次は何で40なんだ? 普通に考えたら45だろ。変だなぁ)
と心の中で呟いた。
ユウキがボールをトスしてサーブを放つ。
比較的甘く入ったボールを打ち返そうとした時、大野はボールを見失った。
緑色になったボールは芝コートと同化して、目の錯覚によりボールを捉えることが出来なかった。
「ゲーム ユウキ!」
「ざわざわざわ...」
大野が生まれて初めてセットを落とした歴史的な瞬間であった。
プロテニス人生において、いついかなる状況に応じても30点以上取られることはなかった。
そんな大野がセットを落とすということは、剣豪 宮本武蔵が生まれたての赤ん坊との剣術勝負で負けるのと同様に、決して起こり得ないことだと世間では認識されていた。
しかし、その事実がユウキというアフロヘアーでタンクトップ姿の日系フランス人によって覆されたのである。
その事実は大衆のみならず、大野にも大きなダメージを与えていた。
「この俺がセットを取られただと?いやあり得ない。何かがおかしい。」
大野は心の中で呟いた。
ちなみに大野はマリオテニスですらセットを落としたことはない。
唯一落としたことがあるとするならば、ハッピーセットのおもちゃくらいである。
そうした波乱の中で第3セットが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます