第2話 ユウキ・ヤマシタという男
ユウキ・ヤマシタは日系フランス人として、フランス郊外の貧しいスラム街で育った。
家はかなりの貧乏で、4kmほど歩いた川へ毎日水汲みに行くのが彼の幼少の頃の日課だった。
ユウキが生まれた当時のフランスは、 ”フランスパン革命”(1991~1994) が起きており、堅めのフランスパン派と、もちもちのフランスパン派が朝食をどちらにするべきかという議論から始まり、最終的には死者10万人を超えるまでに発展した大規模な抗争の真っただ中に産まれた。
そのため、彼の幼少期はシェルターでの生活を余儀なくされており、生活するので精一杯の国民が多かった。
そんな彼の唯一の趣味はテニスであったが、テニスラケットを買うお金は当然なく、大き目のブロッコリーをラケット代わりにして、テニスで遊んでいた。
そんな幼少期を過ごした彼に転機が訪れたのは、10歳になる頃だった。
「おい!見てみろよユウキ!龍岡雄造に勝ったらプロテニスプレーヤーになれるんだってよ!」
友人がユウキに見せたのは、龍岡雄造イベントのポスターであった。
毎年8月になると、龍岡雄造はBBQを行いにフランスへ来るのは知っていたユウキであったが、暇だからとは言えテニスイベントをしているとは思わなかったため、驚きを隠せなかった。
彼の目に迷いはなかった。
「40-30」
パコーン。
「ゲーム ユウキ」
ユウキは龍岡雄造に勝利した。
いくら現役を引退して20 年以上経つとはいえ、10 歳の子供に負けたことが悔しかったのか、龍岡雄造は目から雫がこぼれた。
龍岡雄造が涙したのか、雨が降ってきたのかは今ではもう定かではないが、ユウキは見事プロへの切符を手にしたのである。
「俺は誰よりも強いテニスプレーヤーになる。」
彼はその時心に誓った。
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