第一章 理想④
***
メノウは、魔王である父と中級魔族である母の間に生まれた。強さが最も重視される魔族の国、ヴィシュタントでは、まず魔力量で下級・中級・上級に位が
本来であれば、明確な
美しい容姿と、序列三位の称号と、魅了という特殊な力。
子どもの
そうしてできあがった、
しかし、思い出した記憶は、前世の、そのまた前世なのではないかというくらいに
身の回りにいた人のことも、遠い
(だって……世界征服とか)
(なんか、美咲だった頃と
(だけど、今の私はそんなふうには生きられない)
美咲が子どもの頃は
そして、
(──そうだ。今度こそ、自分のために生きるって決めたんだ)
人の言動や機嫌に振り回されず、自分を大事に、くつろげる場所を作るのだ。
メノウの美貌と力があれば、きっと
「平和に生きたい……」
メノウが
そうだ、自分は平和に生きたいのだ。ほしいものは、小さな家と、食料が手に入る自宅近くの町。書店と、話し相手のカフェ店員なんかいれば最高だ。
視線をずらすと、心配げにこちらを見るゼルの顔があった。
(この人は、ゼル……そうだ、ゼル・キルフォード。私が追いかけ回していた……)
昔は、どうにかして魅了にかけようと
ベッドに手をついて上半身を起こすと、彼が心配そうにメノウの顔を
魔王ほどではないが十分立派な彼のツノは、長生きしている魔族の
「動かれて
「だ、大丈夫です」
以前の自分がどういう口調で話していたかをすぐには思い出せず、敬語になってしまう。やはり、自分は元の輝いていたメノウとしては生きられない。小説や
いまだ心配そうに様子を窺うゼルに、これ以上気を
「その……
ゼルは目を見開くと、その目を細めてうるませた。
「私に
一人ベッドの上にいるのが落ち着かなくて足を下ろすと、ゼルがメノウの手を取った。
「メノウ様! 急に動かれてはお体に
「い、いえ! ぜんっぜん、元気ですから! 一人で歩けますし!」
思わず手を引いた。男性というだけでも
視線を感じてゼルの後ろを見れば、ヴィヴィが
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