第一章 理想①
(に……
(ひとまずは、ここを切り
美咲の願う平和な人生を送る送らない以前に、このままでは人生が終わる。
(平和な人生……)
ここで目覚める前の、最後の時間を思い出す。
もともと穏やかな人生を望んでいた美咲だが、職場の
決して誰とも
(周りの顔色ばかりを気にして自分を押し殺した結果があれなら、いっそ今世では、自分の意思を大事に、平和な生活を手に入れたい……!)
しかし今世では、精神的な平和どころか物理的な平和もないらしい。
そもそもここはどこなのかと、部屋に視線を走らせた。住んでいた六
それよりなにより、あの男たちだ。鎧を着た男二人と、剣を持っている男。争いの後なのか、二本の剣が部屋の
ひときわ目立つその銀髪の男は、二十代前半に見えた。今は彼の前にいる男に剣を向けている。人を殺すことに
現実感のないまるで一枚の絵のような光景だが、それが絵画でないことを示すかのように、剣先からぽたりと血が
(わー! 私の
おまけに路上で見る
(こ、殺される……)
しかし男の興味はあくまで目の前の男なのか、美咲から視線が外れ、壁際の男へ戻った。ほっとすると同時に、男は殺されるのだろうかと考えた。見れば、まだ
「──あ、あの!」
声を出すと、男がこちらを向いた。おそろしく整った顔立ちだが、仮面をつけているかのような無表情だ。銀髪だが、光の加減によっては金にも見える白に近い銀髪だ。ツノは優美な曲線を
「そ、その、剣を下ろされては、ど、どうでしょう……その方も、何かするつもりはなさそうですし……」
みっともないくらいに声が震えた。驚いたように目を見開くのは、床に座る男のほうだ。
銀髪の男は表情を変えないまま、美しい
「この男を、逃がせと?」
初めて聞く男の声は、
(お、
そうこうしている間に逃げてくれればいいのに、彼らは
「
「え? でも、なんで急に……それに、なんか前と印象が……」
「いいから退くぞ!」
怪我をした
銀髪の男も彼らを追い部屋を出るかと思ったが、特に動く気配はなかった。血のついた剣を持ったままこちらに向き直る。一歩、二歩と近づいてくる姿を見て、「殺される」の四文字が頭の中を
「あ……あ……その、あなたは、なんでさっきの人たちと、争っていたんでしょうか?」
男が自ら退いてくれる可能性にかけ、彼の目的を
「
(まおう?)
それは、ゲームとか漫画とかで見かけるあれだろうか。
(それにしても、メノウ……)
なぜだか耳に
ベッドの上で座ったまま後ろに下がるが、すぐに壁に背がついた。
(ダメだ──せっかく生きられたのに、殺される──!)
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