プロローグ③
***
「そうして
「なるほど、そういう事でしたか。しかし逃がさないと言われた瞬間の
フルールが
次いでフルールはふと視線を上げた。物思いに
小さい頃から今日までずっと過ごしてきた自室。
だがそこに思い
そこには今もヴィクターが居るだろう、そして……。
「咄嗟の事だったから、シャレルを置いてきちゃったわ」
元々、避暑地での生活にあたり身の回りの世話や食事は現地の者達を
だがフルール付きの
だというのに彼女を置いて一人で自室に戻ってきてしまった。昼食の用意をしていた彼女は事情を知らず、きっとフルールが居ない事を知って
……多分、驚くと思う。きっと。少しぐらいは。少なくとも別れの
そんな事を考えて一応は胸を痛めていると、話を聞いたルドもまた想像するように視線を
「いつもの事なんでシャレルも驚かないと思いますよ」
という
***
場所は変わって、避暑地の
森に囲まれたその一画は
そんな
フルールを逃亡させた原因のヴィクターと、逃亡したフルールに置いていかれたフレッシェント家侍女のシャレルである。
そんな沈黙を破ったのはヴィクター。先程まで握っていたフルールの手の
「またやってしまった……。どうにもフルールへの
「相変わらずですね、ヴィクター様。しかしお
帰る術が無いとシャレルが
褐色の肌と
もっとも、フルールに付き
「そういえば、来た時の馬車はフレッシェント家のものじゃなかったね。きみ達を降ろしたらすぐに戻ってしまったし。あの馬車は?」
「ヴィクター様に
「なるほど、すべては僕対策か」
「ええ、すべてはヴィクター様対策です」
だというのにヴィクターが
「そういう事なら僕の馬車に乗ると良い。フレッシェント家まで送っていくよ」
「ヴィクター様もお戻りになるんですか? 明日お戻りになるのでは?」
「フルールのいない場所に僕が長居する理由はないね」
はっきりと言い切り、ヴィクターがリデット家の馬車へと向かって歩き出す。
そんな彼に対して、シャレルはこれもまたいつもの事だと考え「
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