プロローグ②
***
話は数日前に遡る。場所は避暑地の森の中、広い湖が眼前に広がる
美しい景色に
そんな建物から出てきたのはリデット
……もっとも、ヴィクターは『幼馴染』では満足していないようだが。
それはさておき、当然のように建物から出てきたヴィクターはまるで待ち合わせをしていたかのようにフルールを
ちなみに手帳にはそれらしい事は書かれていなかったので記憶
「やぁフルール。ちょうどきみに会いたいと思っていたんだ。こんなところで会えるなんて
「別荘の場所を知られてるのは仕方ないとして、今日この日に来る事はどこから情報が漏れたのかしら……。屋敷には
「ここは涼しくて過ごしやすい場所だから夏用の別荘を建てたんだ。そうしたらまさかフレッシェント家の別荘の隣だったなんて驚きだ」
「さすがにここまでピッタリ隣接しておいて
一刀両断ぴしゃりとフルールが言い切ればヴィクターが
そうはさせまいとフルールはじっとりとした目つきで彼を見上げた。幼い
だというのにヴィクターは動じず、むしろフルールに見つめられている事が──
そんなヴィクターが微笑む様は絵になっている。社交界の
だが残念ながらフルールはその『殆どの女性』には当てはまらない。ヴィクターの微笑みを前にしても胸をときめかす事は無く、むしろ彼の微笑みが麗しければ麗しいほど白々しく見えてくるのだ。
「そうやって微笑めば誤魔化せると思ってるの、バレバレなんだからね」
「フルールにはすべてお見通しか、参ったな。でもそれほど僕の事を知ってくれているのは嬉しいな。ところでフルール、立ち話もなんだから庭に行かないか? フルールが好きそうなアーチを用意したんだ。
いつの間にか別荘横に建てられた建物、ちゃっかりと庭に用意されているというフルール好みのアーチ、
そんなフルールの
「それで、気付けばヴィクターと庭でお茶をしていたのよ。本当に勝手なんだから。……でも確かに
「後でリデット家に聞いてまいります。それで、お茶をした後は?」
ルドに促され、アーチの事を考えていたフルールははっと我に返った。
次いで自ら話をそらしてしまった事を誤魔化すようにコホンと一度
まるで当然のように隣に屋敷を設けていたヴィクターに流されるように、
朝は別々だが、昼は彼と共に湖を眺めながら食事をし、その後は湖をボートで一周しようと
そんな湖畔での日々を過ごし、今日。
避暑地での生活も明日で終わりだとフルールは湖の美しさを改めて楽しんでいた。
隣には当然のようにヴィクターが座っている。彼をちらと横目で見て、フルールはまったくと言いたげに
「結局ずっとヴィクターと一緒に居る羽目になったわ」
「そりゃあフルールが居るんだから僕が一緒に居るのは当然だろう。フルールが居る所に僕が居る、当然であり普遍の理論だ」
「真顔で独自理論を語ってくるわね」
呆れた、とフルールがヴィクターを睨みつける。もっとも、睨んだ程度で彼が考えを改めるわけがないのは十年以上の付き合いで分かっている。
現にヴィクターはまったく悪びれる様子無く、それどころか「楽しい夏だったね」とまで言って
挙げ句に、穏やかに微笑んだままそっとフルールの手を取ってきた。大きな彼の手に
「……ひと夏の思い出、か。
ヴィクターの
痛くはない。だけど強く握られた事でより
そして取られた己の手がそっとヴィクターの
「逃がさないよ、僕のフルール」
「逃がさないなんて、そんな、だからそういうのは困るって言ってるじゃない!!」
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