アーカイブ #4
憂鬱な月曜日。
今日は4時間目に書写の授業がある。
いつもは学校の先生に「上手く書けていますね」と褒められ、周りからもチヤホヤされるから、この時間が好きだ。
けれど、今日は気分が乗らない。
書道、書写と聞くだけで一昨日のことを思い出して泣きたくなるので必死に堪える。
先生はいつも授業が始まると、長々とした雑談をしてくるが、今日の雑談はいつもより短く感じた。
今日も書道の日。
まだペダルが重かった。
今日の課題を書き終え、ミサのところへ行く。
私は、先週は何もなかったかのように、いつもみたいに振る舞う。
先生は教室にいなかった。なんだか背中がぞわぞわする。
ミサが言った。「どうしたの?」
いや、どうしたの?じゃないよ…
そう思いつつ、「え?なにが?」と返した。
「いや…あっそうだ、こっち来てよ!」
ダメだよ、そっちは。何を考えてるの…
って、言えればよかった。
ミサはお金を盗んでく。金額も前より増えてる。
どうして…、
「ほら、前と同じだよ!頑張れ頑張れ!」
胸が押さえつけられて、どこにも逃げられないような感覚。
一度やってしまったら、後戻りはできない。
いつのまにか私は、千円札2枚を握っていた。
手汗でお札がぬるっとする。気持ち悪い。
ダメだと分かっていたのに…それなのに、盗んでしまった。
私の腕を引きちぎりたい。
「ただいまー!」
最近、家庭用パソコンでネットサーフィンをしたり、動画を見たりするのにハマっている。
ネットに浸かっている時は、少し気持ちが鎮まる気がする。「プログラマーになってみたいな…!」
毎日訪れる夜の時間。
最近、夏なのにちょっと寒い。目の前が真っ暗。背中に虫が這ってるみたいな感覚。何となく怖い。
布団を頭から被り、溢れてくる涙を拭いた。
どうしてミサは、あんなことをするんだろう…
警察にみつかったら捕まるのかな…
私のせいだ…私がミサを止めきれなかったから…
いろんなことが、脳みそをぐるぐる掻き回す。
眠れない。
「死にたい…」
首を手でぎゅってしてみた。
怖いからやめた。
月日が経って、5年生になった。
ミサとの犯行にも慣れてしまった。でも、どこかで許していない自分もいた…。
こんな、クズみたいな人間でごめんなさい…
そんなふうに思うのは簡単だが、行動で示さなければ意味がない。
もう一度、ミサに「お金盗むのはやめよう」と言ってみた。意外なことに、ミサはすんなり「わかった、やめるね!」と言ってくれた。
けれど、私は安心できなかった。正直、ミサのことを信じていいのかが分からなくなっていた。それでも、友達だからと信じて見守ろうと思った。
数カ月後、私は物陰からミサを見ていた。
…ミサは、とんでもない量の札束を盗っていた。
もう、信じない。
そもそも、ミサを信じることが…
いや、友達と呼ぶことが、間違っていたのかもしれない。
3月になって、ミサは小学校を卒業するとともに書道もやめた。さようなら、もう二度と会いませんように。そう思ってしまった。
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