第2話

気が付くと、

朝だった。

私は人間になっていた。


あれ?

さっきまで

天道虫だったのに。

もしかして夢だったのか。


私は訝りながら、

洗面所へ向かった。

すると、

ハンドソープのボトルに

天道虫がいるではないか。


どういうこと?

逃がしてもらった天道虫と

逃がしてあげた人間が

入れ替わっているってこと?

いずれにせよ、

この天道虫を助けてあげなくちゃ。


そうして、

天道虫をティッシュで捕まえて、

近所の原っぱへ

逃がしてあげた。

アパートの部屋に戻ってくると、

まず、

私という人間の素性を知るために、

スマホや財布などを

手当たり次第に探った。

そうして得た情報を整理すると、

私の名前は、

風間鈴音かざますずね

女性。

28歳。

独身。

看護師をしていたが、

過労のため

自宅療養している。

そういう人間であることが分かった。


それにしても、

天道虫だった頃は、

弱肉強食の自然界が

一番大変だと思っていたが、

人間界も

働き過ぎで病気になるなんて、

自然界に負けず劣らず大変だなあと、

しみじみと思った。


ふと、喉の渇きを覚えて、

冷蔵庫を開けてみると、

缶ビールがびっしりストックしてあった。

もしかして

風間鈴音さんはアルコール依存症?

そう思いながらも、

喉を潤したい欲求には抗えず、

私は缶ビールを、

1本、2本、3本と飲んでいった。

そして、

いつのまにか、

寝落ちしてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る