0161:ポイズンダーク
(あ、そういえば。晃司さんは? いるよね?)
「晃司さん、
「……ん? ああ、社長、帰ったんですね。食事にしますか?」
厨房から、顔を覗かせた。
まあ、この人には出した方が早いか。腕輪の保存庫から、お土産を取り出す。まあ、当然これもできる。これな~本当は迷宮外で出来ちゃうと、セキュリティ的にイロイロと不味いんだよなぁ。とはいえ、余りに便利なのもあって……ついね。
「お、お、お! こりゃ〜スゴイ、良い肉だ! 獣……じゃないですね……これ。鶏? いや……カエル? 両生類系かね? 取りあえず、直ぐに手を入れます。消える前に」
「……
晃司さんには手に入れた新しい食材の加工をお願いしている。迷宮産の食材を使用した食事は各種能力値の上昇下降効果があるはずだ。それを検証するためにも、食材関係は持ち帰ることにしているのだ。
というかね、実はある。事実、晃司さんが創意工夫してくれた食事を取る様にし始めてから、明らかに食事効果を感じるようになっていた。そうか。この事実もまだあまり大して知られていないよな。
迷宮産の食材は大抵オークションで売られて、迷宮外のレストランなどで高級食材として使用されている。
それを獲得してきた冒険者は……そうか。あまり食べないのか。比較的高額で売れるからな……だからなおさら、食事効果があって、能力値が上がるなんていう事実に気付けてないんだろう。
おおざっぱに分けると、肉は力を、魚は賢さを、一部野菜は敏捷を、まだちゃんと確認してしてないが、多分器用や集中力、運のパラメータを上げる食事も作れるだろう。
「で、こいつは……なんて名前の魔物で?」
(ポイズンダークフロッグ)
「え?」
(ポイズンダークフロッグ)
「……ぽ、ポイズンダークフロッグ、です、か?」
「ええー! ポイズンダークフロッグって池袋迷宮第56階層~第57階層の枯れた森林地帯にしか生息確認の取れていない、そう推測されている、幻の研究対象、レア魔物じゃないですか! 実際には、キチンとした生息確認もハッキリされて無くて、生態を調査したいって、魔物学者からの依頼が殺到してる!」
(そうなのか)
「なんでも、その魔物、空気を変質させる能力があるらしいじゃないですか。毒を浄化して、さらに毒を放つっていう。なので、核での放射能汚染地域の浄化が出来るんじゃないかって」
ああ、そういう事か。それなら納得いく。確かにそんな感じの行動を行っていたというか。
現時点で国交断絶状態の国も多いので、詳細が伝わりにくくなっている。が、既に迷宮に対して核攻撃を行い、放射能汚染によって人類の生息エリアを縮小せざるを得なくなっている国はそこそこ多い。
旧北朝鮮エリアでは最低でも三発。ロシアで数発。さらに、中国が当事国からの要請と称してアフリカの友好国に五発は撃ち込んでいる。
そして、アメリカもデータが欲しかったのか、南アメリカの友好国に支援として二発、撃ち込んだ。
当然だが、多くの国がそれに反対した。特に日本は過去例を見ないほど強固に反対の意思を提示し、結果として意味の無い結果となっても、日本は一切関与しないとキッパリ言い切った。さらに踏み込んで、核攻撃を行った国への支援は後回しにする……という世界への提言も行った。
それでも、一切止まらなかったのは大国故の驕りか。迷宮に対する認識不足か。日本からの提言、宣言、宣告には、迷宮先進国としての、という強調があったにも関わらず、無視されたのだ。
まあ、驕り、認識不足、両方なのだろう。
あっちの世界でも魔王軍が人間の国を駆逐するためにかつて無い大軍で攻め寄せて来ているにも関わらず、人類統一軍は編成されなかった。我が国の軍、騎士団は精鋭揃いなので負けるハズが無いと、言い張り続けて、協調する事も無く、多くの国が次々と消えていった。
頭悪いよね。
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