0149:偽勇者

「さっさとこの氷の魔道具を解除しやがれ! さもないと……さもないと」


「はははははっ! 間宮……お前、さっき、我々をボロボロにすると断言していたじゃないですか。さもないと、何ですか。これ以上何をするというのですか。面白い。笑える。さすが、ランキング一位。TVやネットのバラエティー番組に良く出演しているだけのことはありますね」


「ご、う、だーーーーー!」


ピシッ! 


 足元から固めている氷。その効果が破られつつある。まあ、うん、さすがランキング一位。ヤツだけは、「氷河」の効きが若干悪いようだ。多分、魔術防御能力が変に高い。または、魔術を避けるスキル持ちとか。


 総合的に近接戦闘の能力は確かに高いのかも。甲田、的場の二名が強くなりつつある……とはいっても、コイツ、クラスになるには……あと二年はかかる気がする。


 まあ、純粋に物理系を強化していくっていうのは、それほど難しいものじゃないしね。特にこの偽勇者は……確か、腕力強化系のギフトも持っていたハズだ。元々「無双」という通り名だっただけある。


 魔術士に比べれば。前衛職の解析はそれなりに進んでいる。というか、体感しやすいんだよね。前衛というか、戦士系は。ギフトも攻撃系であれば、「気合」が入ったから凄く強い攻撃が繰り出せた。火事場のクソ力だ! とか、言い訳もすぐに思いつくし。大抵、力むとオンになるんだろうな。アレだ、気合だ、気合だ、気合だ-! ってヤツ。


「ぐあっ!」


ビキキキキキキ!


 凄まじい音と共に、偽勇者の身体が振られる。同時に、割れるように、氷が引き剥がされていった。力技だなぁ。それじゃあ、自分もかなりダメージを受けると思うんだけど。


「があああああ! ああ!」


ギチギチギチギチチチチチチチチチイ!


「は、ああ、ああ、な、何てことはない……こうだーーーー! そしてガキ! てめえらの罪は重い、重いぞ!」


 うん。まあ、頑張った。こんなに短い時間で「氷河」から抜け出せるとは思っていなかったよ。そういう鍛錬はそれなりに積んでいるのだね。良く判った。が。


 それにしても……偽勇者、言動が尽くワルモノムーブの上にウザいな。大事なコトは本当に二度を言うタイプのようだ。


「氷河」


 今度はピンポイントで偽勇者の周りに重層化して展開してみた。同じ呪文の方が嫌がらせ的にはポイント高いよね。かなり苦戦していたみたいだから、今回もう一度がんばってもらおう。


 完全に不意打ちとなったのか、さっきみたいにレジストに成功していない。完全に下半身が凍り付いている。

 さらに、先ほど氷柱にされてしまった雑魚くんたちは……今の上書きで完全に意識を失った。ああ、生かしとこうと思ったのに。偽勇者のせいで、多分、もう、人間として復帰は無理だな。


 ああ、とばっちり。このまましばらく放置しておいたら、確実に迷宮に吸収されちゃうから、少し動ける様にしておかないとかな? まあ、でも運悪く消失しちゃっても……それはそれで問題ないか。偽勇者印の犯罪者軍団だったようだし。全員まとめて居なくなってもらうんでもいいや。


「あ?」


 うむ。今ね、頑張って弾け飛ばしたのにね。魔術抵抗バリ上げで、ね。


「が、ガンバ」


 くっ。自分で言うとなるとその拙さに悲しくなるな。因みにだけど、今は「頑張れ」と、バカにした感じ、煽るつもりで言った。言えてない。


「て、てめぇ、これは」


「だから言っただろう。我が主君マイロードの前で見苦しい暑苦しい、はしたない行動を取るな。キサマは人間として、全てが下賎なのだから」


「くっ! テメエ」


「ああ、さすがランキング最上位。しぶといな。ゴキブリレベルで。その点、だけは尊敬する」


「ぐぐぐぐ……」


 まあ、確かに、その通りだ。「氷河」二発まともに喰らって、まだまだ戦うつもりでいるのだ。


 判った。そこは尊敬しよう。正々堂々、真っ正面から叩き潰してやろう。


 後で甲田さんから聞いたら、この時、俺は笑っていたらしい。しかも尋常ではないくらい、怖かったそうだ。

 

キン──


 魔力を開放、霧散させる。


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