0148:屑
「ちっ! 外したか。たった二人で何が出来る! 良い声で泣かしてやるよ。手足を粉々にして、何度もいたぶれば、言う事聞くようになるんだよ! 人間は!」
(うん、そういうことをした事があると。告白したね。今)
(ええ、そうですね……本当に糞野郎だとは……思ってましたが)
間宮の後に続いて、二十人近くの探索者、いや、間宮の手下がゲートを越えて来たようだ。彼らは、リーダーである間宮が既に攻撃を受けていたので、仕方なく反撃する……といった形で参戦してくるつもりのようだ。言い訳はまあ、うん、完璧、かな。
「この人数差をどうにかできるならやってみるんだな」
(雑魚は有名所? ランキング上位者?)
(いえ……多分、ヤツが独自に育てたチンピラではないかと。探索者としての級数は低いですが、実戦経験は豊富っていうパターンです。イロイロと勘違いしているヤツラですね)
(じゃあ、やっちゃって良いよね。問答無用で)
(は、はい)
「まあ、そりゃそうだな、何も言えなくなるわな。ここまでの差があると思って無かったろ…」
「氷河」
キン……と。迷宮の温度が一気に下がる。雑魚が現れた方向、一面に……氷が出現し……広がり走る。
間宮の口が閉まる前に、術を発動させた。「氷河」の本当の呪文名は「凍てつき凍えたるサイディアルの氷河地帯」と言う。氷の中級範囲呪文で、そこそこ難易度も高く、詠唱時間も必要となる。が。事前に準備しておけば何て言う事も無い。
たった一言の鍵音のみで、発動し……ゲート周辺で展開しようとしていたチンピラ共を一斉に氷漬けに固めてしまう。
魔術士に時間を与えてはいけない。魔術士を殺したいのであれば、確実に先制攻撃。相手からの反撃を受ける前に殺しきる。これが唯一無二のやり方だ。
「どうした? 間宮。お前も微妙に喰らうように魔術を使っていただいたのだ。冷たかろう? あれれ? お前の仲間……なんかキレイな氷の彫像と化してる感じなのだけど、どうする? 動いてないな」
「な、あ。ああ? キサマ……何者だ?」
(それにしても……柄悪いね。クソ弱いし)
(こちらが本性です。普段は……ご存じだと思いますが、ニコニコして、気は優しくて力持ちを演じています。というか……彼、劣悪最低な性格、性質ですが、日本人探索者の中で飛び抜けたクソ強さで、ランキング1位を維持し続けて来た……のですが)
(うん、胡散臭い外面だよねぇ)
トップランカーなのでメディア露出も多い。さらに、こいつレベルになると、迷宮外での能力もかなり上がっている。外でもイロイロとやってたんだろうな。
一般的なTVメディア、ネットメディアへの、文化人としての出演、純粋に筋肉系タレントとしての出演、さらにCMの仕事も多いからなぁ。人脈とかスゴイだろうし。
間宮の足元が氷漬けの余波で完全に固められていた。
「魔術士だが? と仰せだ」
「ま、魔術士って言うのは、使えねぇ詠唱の長い……ああ? 江本! 広田! って何だ、これ」
未だに偽勇者は自分の周囲で起こっていることを理解出来ていない。間宮本人も足元は完全に凍っている。
「お前がこの時点で土下座して謝罪し、慰謝料二百億円を支払うのであれば、この後、何もせずに見逃してやろう。そうでないのなら。このチンピラ共は普通に死ぬ、と、
(というか、こいつも即殺す? ああ、というか、甲田さんはどうしたい? ってまあ、このまま放置で凍傷なんだけど、現状、末端欠損とかボロボロになるだけで雑魚共も死なないようにしてあるんんだよね。生きて苦しみ続けるとか~そっちの方がいいかな?)
(全てお任せします。全て。正直、自分は虎の威を借る狐でしかありませんので。現状、私の力のみでは未だ……こいつの足元にも及びません。
(そか)
「お前には死ぬよりも辛い目にあってもらう……と」
「何言ってやがるんだ? さっさとこの氷の魔道具を解除しやがれ! さもないと……」
はぁ。魔術の行使と魔道具の発動。その差もちゃんと理解出来ていない。……こんなレベルが「表向き」とはいえランキングトップというのだから……世界最高峰、日本の探索者のレベルもタカが知れている。
(いえ、ここまで愚かでも反する者たちを圧倒する「暴力」を持ち合わせていた……のです。ええ。つい先ほどまで。その……氷系の魔術といえば、討伐隊副長が有名ですが……ここまで見事に封殺出来るとは思えず。というか、封殺出来ないからここまで増長したのですし、放置されてきたワケで)
そうなの? と思いつつも日本の探索者のレベルは、他国に比べて、数十倍上位にあるのだから……。うーん。そりゃバンバン国が滅ぶわけだわ……。
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