0145:女性進入禁止エリア

 おいおいおいおいおい。


 もちつけ。ヲマイら。っていう言葉が自然に出てくる阿鼻叫喚の展開……というか、オークのしかもそれなりに強いオークの方々。オークファイター、オークウォーリアー……満載である。


 フゴフゴ言ってるし、臭い。集団になると超絶臭い。迷宮って結構、臭い的にはキツイんだよな。探索者って、臭いに強く無いと続けられないとか言われる事も多いし。


 それにしても。なんだこれ、渋谷のファッションビルの元旦の光景ってやつか? みんな福袋目当てなのか? お漏らしのどこにそんな素晴らしい福が? 


(この階層は……女子がいると、こ、こうなるのか……)


(確かに、違い過ぎる……な。今までもそうだったけど、ここは特にやばい……)


 的場さん、甲田さんは、最初、ヨスヤとパーティを組んでいたのだが、その頃にはここまで下には降りてきていなかったそうだ。


 的場さんは既に周囲に挑発を放ち、数十匹を惹きつけている。戸惑っている……と言っても、会話だけで、態度とか、行動には一切のブレが無い。うん、すげーな。ちなみに、甲田さんも既に姿は見えない。物陰からボスを狙いに動いたのだろう。


 この二人は、男二人でこの階層辺りもクリアしているそうだ。なので、俺とバカお漏らしの知らない、ドキッ! 男だらけのオーク階層戦! 静音状態の巻が……どれくらい静かなのかを体験して知っている。


 それにしても、オークの鼻息の荒い事。涎が飛び散っていること。あーやだなぁ。あの汁の中になんていうか、我慢汁的なモノも含まれている様な気がするので、なるべく近くに寄りたくない。


(こ、こわいですね……これ。お気楽な感じでこいつらをぶちのめせる女子って……ある意味女子じゃ無いんじゃ……というか、うちの姉は女子じゃなかった。兄だったのでしょうか?)


 バカお漏らしというか、長いのでバカでいいや。そのバカの姉はHasという探索者&ハンドルネームでネットで人気の探索者兼動画配信者だ。ちなみに、女子だと日本で最上位の実力者と言われている。


 本人的には男女関係なくトップになりたいらしいので、当然、今回の天下一武闘会にも参加していて……当たり前の様に、本戦に進んでいる。


 お漏らしバカが無駄にHMハイパーモンスター装備とかを常用していたのは、その姉が二カ月に一回以上のペースでその辺の装備をゲットしてくるかららしい……。


 文字通り、クローゼットに無造作に投げ出されていたりするそうだ。姉も常識無しのバカだな。マジデ。というか、トップランカーになってくるとそれくらいの感覚になってしまうのだろうか? うーん。自制心とか庶民感覚とか大事だと思うんだけどなぁ。目立つと失敗したときに変に叩かれる世の中なのだから。


(なので、そんなに高い服、価値のある装備だと思わずに、お姉ちゃんのお古的なノリで借りてたんですよ。置いてある服はお姉ちゃんも私が着てても何も言わないので……。それこそ、最新の良い服、装備は全部自分の保存庫に入ってるみたいなんで。うーん、そんなにでしたか~)

 

 まあな。お前が今着ているコート。魔術士装備としては一シーズン前の最前線装備だけどな。魔力回復とか、イロイロとお得なギフトやスキルが付与されていたハズだ。というか、多分、天才的な記録術っていうギフトを所持しているのに、なんで、アイテムの価値は記憶していない?


「えーなんか、競売とか~株とかのチャートとか、一覧って、毎日変化するから覚えて行くと際限が無くて」


 全部を正確に、しかも時間単位の更新毎に覚えなくていいんだよ……バカか。というか、アレだ、自分の興味のある事にしかその天才的な才能が使えないタイプなんだよなぁ。典型的なサヴァン症候群だよな……TV番組で見た気がするよ。


 って、おかしくなってしまったオークたちがシャレにならないくらいたまり始めたので、掃討していく。敵が狂戦士化している状態に近い場合、もう、力技で刈り取っていくしかない。でないと、本能に力負けしてしまうからだ。


「凍河氷河」


 自分の足元から。氷の道が延びる。呪文的には河を作るということらしい。その河は自由自在、俺の指定した通りに進路を伸ばしていく。丁度、的場さんに辺りを避ける感じで、カーブを描くように氷の河が走る。


 当然の様に、その進路上にいるオークジェネラル級の強いオークが一瞬で氷の像に変化した。




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