0143:勝ち抜き
最終的に、ヨスヤは予選を勝ち抜き、本戦に出場することになった。
これはスゴイ。単純に知り合いだから応援したい、元々アイドルとしてファンで、好きだったから応援したい以外に、さらに応援したい。
だってスゴイことなのですよ、これは。
探索者の才能がある人がいて。その人の強さがある程度、安定固定されるまでどれくらいの時間が掛かるのだろうか? 誰でも気になる所だと思う。当然、個人差は大きいし、しっかりしたデータがあるわけでは無い。
が。工場等の技術が必要な肉体労働系の仕事の場合。大体、16~18歳で免許を取って、その後、数年……それこそ、二十を超えたくらいで初心者から中級者に変わり、二十代前半でそこそこ。後半でいっぱし。熟成される……のは三十代前半から半ば……だろうか。
若造の俺が言うのもおこがましいが、探索者マニアとして、コレまで読んできた雑誌や、探索者の手記などはかなりの量になると思う。それこそ、最近では学校の図書館に寄贈されていることを良いことに、うちの大学の迷宮学部の論文や、講演記録、各種研究会、検討会の記録なんてのも読んでの結果だから、大体間違ってはいないと思う。
まあ、大抵の探索者のピークは、三十代前半~……といっていいだろう。これには人種的な違いは少なく、世界的にもそんなもんだ。
探索者の場合、三十代~何歳まで、ピークが続くのか? というのは今はまだ、データが出揃っていない。個人的な予想としては、結構高年齢までピークと言えるようになると思う。魔力によって、肉体細胞の活性化が行われて、長寿、健康になる傾向があるんじゃないかな? と。
さらに探索者腕輪によって、迷宮でレベルを挙げると、各種能力値が上昇する。これも長寿の一因になる可能性が高い。
なので、最終的には……人間の寿命が150歳程度まで引き上げられるんじゃないか……と個人的に考えている。これはまあ、あっちの世界の冒険者がそんな感じだったからだ。
そんな事実も絡まって、本戦出場が決定した。
日本の、いや、世界トップレベルの探索者のプロフィールをチェックしてみると、ほとんどが20代後半。ヘタすれば平均は35歳と言ったところだ。プロスポーツ界で言えばあり得ない年齢層だと思う。
迷宮発生から今年で14年目。免許制度等が制定されてから、約12年。当時から一線級を走り続けて来たトップランナーにして開拓者たちなワケだ。
そんなトップ探索者たちが、それだけガチで競い合うのには、この手の公式イベントが初めてということもあるが、自らの実力を知りたい、自分はこういう職業に就いているんだ、と判ってもらいたい。という欲望を溜め込んでいたからに違いない。
的場さんの妹でもある彼女は。
探索者アイドルでもある「キラキラ」ヨスヤは若干二十歳そこそこでそんな中を勝ち抜いて来ている。
まず彼女は
だけど勝負の瞬間は本気で手を抜かない……感じ?
そんな「おいおい、先駆者達は何を熱くなってるんだ?」的な対戦が続く中を、淡々と。実力で勝ち抜いているのだ。
天晴れとしか言い様がない。ああ、そういえば、兄ちゃん、的場さんもバトルセンスはずば抜けている。それか。血筋か。
そういえば……的場さんの御両親って何をしていたんだろう?
「え? 父と母ですか? 普通のサラリーマンと主婦でしたよ?」
(そうなの?)
「武道なんかの心得も無かったはずです」
(そうなのか……)
この二人の両親なのだから、さぞかし眉目麗しく……と思ったが、見せてもらった写真は、いたって普通の二人。というか、お母さんらしき女性はかなり若い。が、それだけだ。お父さんは……ハゲてる中年男性だ。少なくとも武道を囓ったりしていなかったという。
やっぱり、遺伝とかよりも、個性に合わせた才能の使い方、そしてそれに気付く努力……なのかなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます