0142:行くよ、行かないよ
取りあえずそんな話題で盛り上がりながら、俺たちは池袋迷宮に降りて行く毎日を繰り返していた。
予選でアッサリ敗北したことが気になっているのか、甲田さんも的場さんも変にストイックになっている。二人とも、元々マジメだと思うのだが、さらに……というか。
正直、俺もコツコツした基礎鍛錬の繰り返しが得意というか、何も考えずに何時間でも、疲れて動けなくなるまでやり続けるのは好きなので、ついつい調子に乗ってしまう。
多分そんな流れというか、ノリのせいで一番痛い目に遭っているのが、お漏らしだ。
彼女はさすがに転移などで頻繁に気絶する事は無くなったものの、今度は俺たちが訓練を行う場所まで、自分の足で歩かなきゃいけなくなっている。
かなり高速、スタミナも必要ということで、体力が小学校体育でほぼストップしているらしいお漏らしは訓練前に休憩が必要なほど体力を消耗している。ひ弱すぎだ。毎日のマラソンも命じているが、一朝一夕で能力が上がるワケが無い。
(よくそんなで探索者になろうと思ったよな)
「TVゲームだと大抵、魔術士は運動出来なくて大丈夫だったんです」
(……パーティを組んで行動している時点で、他のメンバーに着いていけるだけの体力は必要だし、戦闘する以上、魔術士だって最低限の運動能力は必要だろ)
「ですね。流石に本庄さんの運動能力は低すぎます」
「はい、そうですね……ガテン系のお仕事だっていう事を忘れてました。後、例え研究職でもフィールドワーク、現場研究が重要なお仕事だって。教授から最初に言われたのをよく思い出します」
ということでお漏らしは、俺たちが魔物と戦っている間は休憩。俺達が休憩するときに適度に弱った魔物と戦ってもらっている。
彼女は最終的に両手棍、棒術を選択した。まあ、突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀、杖はかくにも、はずれざりけりってね。
全面的に能力値が不足している彼女にとっては、オールレンジで良い武器だと思う。
うちの会社に入った以上、報酬が発生する。遊ばせている余裕は無いし、純粋にお漏らし自身が探索者としてフィールドワークを行いたいということだったからだ。
(というかさ。ねえ。君はもう、論文とか発表出来ないの判ってる?)
「え?」
「そうですね。本庄さんは「誓約」してしまいましたから」
「え? あれ? あれは……そういうこと? に? あれ? えーっと、そりゃそうですよね……守秘義務……新発見の場合は……あ。そういうことなんですか? 」
え? 判ってなかったの? 何度か念押ししたと思うんだけど。というか、もう取り返しが付かないんだけど。賢いんだよね。かなり。
(こ、これは困りました……迷宮研究者として華々しく学会デビューその後最年少でノーベル賞受賞という野望が。これはもう、やはり、責任を取るという事で御主人様に娶っていただくしか道が残されていないということで。よろしくお願いします! 可愛がっていただきたいです。もしくは若さで乱暴に揉みしだかれたいです!)
こいつは……切替はえーな。いや、そういうことにして、図々しく迫ってくる了見か。
なんで最終的な内面がこんなにこうなんだろうか。とはいえ、未だにハッ! と、自分で言っておいて顔を真っ赤にして俯いている。伝わりすぎなんだよ……。
(むっつりめ)
「……えーえー……女子なんてみんな、男子よりもエロイですよ……」
(いやいや、そりゃ無いだろ。さすがに……男子よりはエロくないでしょ)
「そうではないと思いますよ?
「うん、過去の彼女を思い出すと……確かに男よりも……と思うことが……というか、そうか。そういう所は年相応というか、高校生男子……」
「夢見たいってことですか? カワイイ! なんてカワイイ! いつもはカッコイイだけなので、カワイイ! 撫でたい! ぎゅってしたい!」
「あーそうか。まあ、女子に対して……なんていうか、幻想は抱くものだしなぁ。男は。アレですね、
(ば、バカにするなよ! そんなの行くに決まってるじゃん! でも……そ、そうなの? 男子よりも女子の方が? 二人にそう言われてしまえば……そうかもだけど……ええぇ。そうなの? 大人って難しいな)
「私も言ったんですけれど!」
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