0133:天下一武闘会
探索者たるもの。
日々の鍛錬は欠かしてはならぬ。と誰かが言ったらしいが、別に真面目……とは言わないものの、俺たちはこまめに迷宮に通い続けた。そもそも、高校生だからね。俺。社長だけど。迷宮に行けるのは放課後か、土日祝に限られているのだ。短い時間を有効に使わないと。
探索者奨学特待生だからね。俺。金銭的な事を含めていろいろと特別に便宜を計ってもらっている以上は、学生の本分である勉強でもトップ……とは言わないモノの、トップテンには入っておきたい。
ああ、ちなみに。既に迷宮局から俺の功績? が報告されていて、そちらからの収入もそれなりに入っている。本来なら迷宮局から直……なんて事は無く、自分でレアアイテム等を持ち込んで報告したり、迷宮学科からの依頼をクリアする必要がある。ってな~依頼なんて受けてないし~そもそも依頼掲示板的なサイトにもアクセス出来ていない。笑。
まあ前提として、これは大学生用の奨学金制度だからね。多分、高校側としては、とりあえず、最低限の奨学金を「探索者を継続出来ている」時点で発行してお茶を濁そうと思ってたんだと思う。
それを尽く覆す……というか、斜め上からの報告が上がってくるので、なかなか大変だったらしい。主に理事長とか学長とかそういう人達が。
そして。
ドラゴンのアレはどうにも公的に出来ないということで、それ以外の功績を踏まえて、7級探索者になった。
10級から一気に7級っていう飛び級は、正直、かなり早い。ギルド的には実力を考慮してさっさと1級にしてしまいたいらしい……と言われたが、さすがにそれは……と。
なので、その他の実績のみで考慮すると、2階級アップが順当らしい。
ってまあ、そんなイロイロがあって、もうすぐ12月になろうとしているある日。TVのニュースやワイドショーは朝からその話題で持ち切りだった。探索者腕輪にも一斉告知が来ている。
■■■告:探索者天下一武闘会開催!■■■
探索者の探索者による、探索者のための武闘大会が開催決定! 第一回は問答無用のタイマンガチファイト! テンカウントダウン、ギブアップ方式! 予選会参加希望者は各迷宮出張所にお尋ね下さい。開催日は予選スケジュール確定次第、再設定の上逐次発表されます。
……ん? どういうことだ? 迷宮で武闘大会? ん? まあ、うん、やるのはいい。表のランク付けに関して、賛否両論あったのも確かだしね。実力が計られるのは悪いことばかりでは無いだろう。
「しかしこれは……どう判断すればいいのでしょうか」
「大会かーっ!」
俺たちは食堂で晃司さんの用意してくれた朝ご飯を食べ、コーヒーを飲んでいた。最近は、基本、会議とか打ち合わせはこの食堂で行うことが多い。
晃司さんがここで暮らすようになり始めてから、食事は朝、晩の二食用意されるし、お昼も前の日までに言えば用意してくれる。弁当もバッチリだ。すげぇ。
さらに、最初から用意されていた設備を利用して、コーヒー、紅茶、その他の飲物も簡単に飲めるように常にメンテナンスしてくれている。ぶっちゃけ、種類の少ないファミレスの飲み放題コーナーだ。これ、当然だけど母屋にも無いから超便利。自然とこちらでの生活が主流になりつつある。
「……個人戦……ですよね? これ」
(お漏らし、どう思う?)
「探索者腕輪だけでなくて、同時にTVやネットを含めた、一般メディアに対してもかなりの告知、広告を行っています。これだけ大規模な告知をするっていうのは……うーん、どうするんでしょう? これ」
そう……だよな。うん。どうするんでしょう、だよな。言っちゃって。というか、こんなに煽ってしまって、公開して良いというか、公開出来るモノなのか? ってアレ? そういえば。
(完成したのか。本当に。しかも……)
「そうですね。噂……いえ、本庄くんの情報によると、近日中にって話で……」
ザワッ
「おー寒う。なかなかイイ感じに改修したじゃーん? いい建物だねぇ」
甲田さん、的場さんが反応した。
真白さん? いきなりの登場……というか、相変わらず全く気配が読めない。他ならともかく、俺は迷宮外でもある程度は術の行使が行えるし、気配察知も動いている。にも関わらず。
玄関から入って来たんだよな?
(えーと、甲田さんと的場さんにとっては兄弟子になるのか。真白さん……御厨流の師範代総代。うちで一番強い人)
「師範代、そ、総代であられますか」
慌てて姿勢を正した甲田さんが腰から頭を下げる。
「あ、いい、いい。そういうの」
他の2人も続こうとしていたのを真白さんが止める。
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