0130:押し掛けお漏らしさん

(んで……なぜ、お漏らしがここにいる?)


「本庄さん、なぜ君がここにいる?」


 甲田さんが俺の代弁をしてくれている。


 お漏らしは、あっマズいという顔はしているが……反省している様子は無いな。


 ちっ。


 転移後、そのまま家に帰ってきたのだが。なぜか、お漏らしもここ、うちの社屋兼寮に着いてきていた。というか……。


(お漏らし、パラレスの靴……履いてたかも)


「本庄さん、その靴は……パラレスの……隠密効果がアップすると噂の……」


「あ、は、はい、えへ、これ履くと自分の気配が薄くなると言うか。気付かれないというか」


 えへじゃねぇ。今考えれば、車にも普通に乗り込んでいたしな。あれ、なんで普通に気付かなかったんだろうか? 何も喋らないでいると、根本的な存在が薄れるんだな……。ちょっと怖いな。俺の気配察知系の能力はそんなに低くない。むしろ一般人よりも遥かに高い。なのに……阻害されるって……おかしいだろ。というか、さすがレアアイテムとそっちを褒めた方がいいのか。


(ヘタすりゃ不法侵入じゃねぇか)


「不法侵入で逮捕されますよ?」


「え、あ、は、はい……あの……でも……今日からここにご厄介になるって……言われまして」


(はぁ?)


我が主君マイロード?」


 首を横に振る。


(いやいや、知らんですよ。全く)


「えっとー荷物もぉ」


 と、二階の八畳の個室に荷物が運び込まれていた。


 ええ〜俺らがいないうちに何で? と思ったら。


 黒幕は、ばあちゃんだった。お漏らしが俺に恋愛的に、性的に、そして一途に興味があると聞きつけるや、瞬間で彼女の味方になったのだという。


 というか、後で良く話を聞いたら


「靖ちゃんは奥手さんなんだから、女の子から積極的に来るパターンの方が上手くいくわよ。というか、貴方に任せていたら、死ぬ前に孫の顔を見れない気がして! それに~靖ちゃんのおしゃべりのこと。最初から一切気にしない女の子って初めてじゃない? どう?」


とのことだった。口を閉ざし、むぐぅ……としか言えなかった。まあ、女の子に対して、気兼ねなくお漏らしとか、お前なんて呼べちゃってるのは初めてか。


(……仕方ない。それは……仕方ないな)


(そうなのですか?)


(ばあちゃんは、この家では最強だもの)


 そう。いつもニコニコしていて、もの凄く優しい、優しい面しか無い様なばあちゃんだが、正直、じいちゃんが逆らえない時点でお察しなのだ。この家で生活していくのであれば、ばあちゃんに気に入られなければ上手くいかない。


(では)


 っていうか……お漏らしに全部バラしても良いモノだろうか? っていうか、既に誓約済だから問題無いんだけど。教えても。言えないんだし。まあ、いいのか。もう。


「本庄君、ここで暮らすのならルールは守るように。あと」


 甲田さんが彼女をパーティに誘った。当然だが、迷宮を出る前に、いったん解散している。


(え? あれ?)


(我がクランでは、迷宮外でもパーティを組むことが出来る)


(え、ええーーー! 迷宮外で? な、なぜ? どど、どうやって? う、腕輪は機能しない……あれ? そんな魔道具、聞いた事がな、ない、無いですしー)


(ああ、正確に言うと、俺のそばにいると、が正解かな)


(こ、これも、靖人様のお力で……あ! ついいつもの妄想クセで靖人様って! 申し訳ありません。宗主様)


(宗主と呼ばれるのは……余り好きじゃないので、名前呼びでいい)


(はい! 靖人様! 分かりました! 私的には御主人様も良いかと思うのですが! どうでしょう?)


(どうでしょうも何もない。その手のは、既に我が主君マイロードでお腹いっぱいだ)


(な、な、なら、私も我が主君マイロードと! それはそれでステキですし!)


(既存の事実になって、誰もがそう呼び始める可能性があるので却下。というか、甲田さんも出来れば普通に呼んでほ……)


(それは承服いたしかねます。我が主君マイロード我が主君マイロードですので)


 ……言う事聞かないよ……我が主君マイロードは俺なのに! 俺のことなのに!


(あ。いいなぁ。甲田さんだけ。靖人様……もなかなかビクビク来るのでいいですけれど)


 ああ……もう、正直「様」もやめて欲しいんだけね……。というか、お漏らし既に迷宮外でパーティが組める事に順応した? 早いよ……。


 というか、ビクビク来るって日本語あったっけ……?




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