0128:お漏らしお休み中
グアアアア!
おう、痛かろう痛かろう。オークのターゲットが俺に移る。が。
「こっちだ!」
俺に向かって動き始めた瞬間に、的場さんの「挑発」が発動する。巧い。このタイミングより早いと、多分「挑発」の効果が最大限に引き出せない。
それにしても……強制的に敵対心が操作されてしまうっていうのはどういう気持ちなんだろうなぁ。目の前の俺を狙っていたハズなのに、いつの間にか的場さんに攻撃を仕掛けているんだもん。
ターゲットは再び、「守護者」である的場さんに集中する。俺はそのターゲットを奪わないようにワンテンポ置いてから、素早さ向上の術を弱ーく発動する。正直、俺の掛けた強化術と彼の能力のおかげで、大して体力は減っていないみたいだけど。
敵のターゲットが盾に固定され、安定したたところで、甲田さんがオークの後ろに回る。そして多分、ギフト「バックスタブ」を発動させた。本人的には技を繰り出しただけだろうけどね。
ギシュッ!
現在甲田さんは短剣と、以前使っていたトンファーを装備している。器用な甲田さんはこれを盾代わりに使うのだ。盾くらい大きくても角度をキチンと計算して敵の攻撃を流す、弾く、捌くのは難しいのに。
多分、普通に斬りかかったのではかすり傷しか負わせられない短剣による攻撃。だが「バックスタブ」を使って背後から攻撃すれば、効果的な一撃となって、大ダメージを与えられる。甲田さんはさっきからこれしか狙っていない。完全に使いこなしているようだ。すごいな~。
ちなみに、この「バックスタブ」後の一撃は、敵に与えるヘイト(敵の怒り)も少ないという非常に優秀なギフトだ。ヘイトが少ないのでターゲットが盾から動くことも無いのだ。便利。
こうして見ていると、非常に安定している。これならイレギュラーが起こる隙間もないだろう。
うん、このまま任せて、俺は適当に回復の術でも使っていようかな……と思った時、ちょっと離れた壁際で横たわっているお漏らしが目に入った。
うーん。早いほうがいいのか。ボスの体力は異常に多いからなぁ。このままだとあと30分は掛かるだろうし。
(ごめん、お漏らしの身体のことを考えると時間的にあまり余裕ないかも。やっちゃってもいい?)
(はっ、問題ありません)
(ありがたいっす)
「氷の槍」
ドラゴン戦で使用した……あんな、得体の知れない氷ではなく、一般的な通常の魔術で生み出された氷。それを薄く薄くしたカミソリの刃ような氷が20本程度。長さは約一メートル。それが一気に中空に舞い上がる。
一撃で仕留めるのなら、もっと上級の魔術が必要なので、安全策を考えるとどうしてもオーバーキル前提の過剰攻撃を行うコトになってしまう。この辺、敵の体力や魔力を見る術がないのだから、どうにもならない。
まあ、うん、このまま何もしなくても既にオークに氷の刃が突き刺さるんだけど。甲田さんがポーズは大切だとよく言うので、親指を突き出して……下にひねる。
ザシュザシュザシュザシュザシュ!
判りやすい音と共に。氷の刃、カミソリとか、槍に見える外見のそれは、音も無く飛来したアレのせいで、スーッとオークの上半身がハリネズミ状態となり。
ドウン……
重たい肉の塊が地面へと倒れる。よし。討伐。これでお漏らしも、そこそこのレベルになったはずだ。パーティ組んでいると経験もちゃんと分配されるようになる。
お楽しみのドロップ品は……「オークの肉」のみ。世の中甘くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます