0127:お漏らしお休みパワーレベリング

 池袋迷宮最初のボスは第11階層のオーク・エランとその仲間たち。


 名前付きのオーク。で、なぜエランなのかは良く判らない。命名権は最初に討伐踏破した探索者にある。探索者が面倒だって放棄すると、迷宮局の担当者が普遍性の高そうな名前を命名する。


 同時に、ジャイアントバット、ポイズンスライム、ロックノームがランダムで数匹ずつ登場するらしい。通常であれば、ボスエリアに入ると全部が一斉にポップするので、まずはアタッカーが雑魚を倒して~その間、盾がエラン抑える。で、雑魚を仕留め終わったら、全員で最後にエランに掛かる……というのが王道だ。


 つまり、雑魚をどれだけ早く倒せるかがポイントとなる。エラン自体の強さはパーティを組んでいる人数にもよるが、この直前の階層の敵を普通に倒せるのであれば、問題無くやれるレベルだそうだ。


 そもそも、パーティメンバーがリーダー次第で、最大6名っていうのは、多分、魔力の関係もあると思うんだけど、探索者腕輪にリミッターが付いているんじゃないかと思っている。


 そもそも……この世界では一切確認出来ないが……神から与えられるギフトには兵を率いる将=リーダーとして重要ともいえるモノがいくつも存在する。

 鼓舞、統率、士気、舞闘、神速、指揮、果断指揮、前世祖父の持っていた兵貴神速は、兵の運用スピードの上がる神速の上位版だ。他にもまだまだリーダー向きのギフトはあったと思う。


 正直、俺は魔術にばかり傾倒してしまったので、その辺の詳細を覚えていないが、そういうスキルを持っている人は、パーティメンバーが6名どころじゃないと思うのだ。それこそ……祖父は50名くらいは完全に指揮できていた。


 50名というと大したことが無い感じだけど、50名の部隊長とか、部下を「パーティ機能」で統率出来てしまう、と思えば、かなりスゴイ。この50名の下に100名の兵が配属されれば、5000人。統率の取れた戦闘力の高い、立派な連隊の完成だ。


 母さんがその辺のシステムを知らないハズが無いから、多分、基礎的な仕組みはそのままだと思う。なので、現状の仕様は……多分、何か理由があるんだろうと思う。運用時に変なトラブルが起こらないようにとか……リミッターとか。


 まあ、元々、「向こうの世界」の冒険者達もパーティは大体6名程度だった。なんていうか、7名より多くいると効率が悪くなるという理由だったと思う。経験値の分配ボーナスみたいなのが極端に悪くなるんじゃなかったかな? 確か。


(まあでも、うん。雑魚はやるわ。なので、エランの足止め、お願いします)


(イエス、我が主君マイロード


(了解っす)


 ボスエリアに入ったと同時に俺の足元にお漏らしが寝かされる。的場さんは優しいな。背負う、降ろすが非常に丁寧だ。心優しいイケメンめ。敵だ。


「風刃」


 一つの詠唱の様で、実は複数……多分、十程度重複して詠唱されている。人に判別出来ないレベルで、ずらしているのだ。それでも、詠唱は詠唱。神には届き、具現化する。


 登場した雑魚の要る辺りに鋭い風の刃が乱舞する。


ズブズズズズズズズズ


 血飛沫上げて雑魚が切り刻まれていく。


 えーと。大体15匹程度が一気に片付いた。風刃はそれほど大きな攻撃力は無いが、自由に動かせる、旋回させることが可能なのだ。あとは、魔力が尽きるまで螺旋を描くように放てば、範囲魔術の変わりに使用することができる。


 というか範囲魔術は、範囲を厳密に指定するコツが必要なので、昔、派手な術をあまり使ってこなかった俺には荷が重いのだ。術を放つ訓練をもう少ししないといけないなぁ……と。ちなみに、母さんは呼吸をするかのように範囲魔術を行使する。

 

 雑魚が倒れた向こう側に立つ巨大なオーク。エランって気力とか体力とかそんな意味だっけかな、うーん。なんで? そんな感じに見えな……。 


 って、あ。強化系魔術、多分、「腕力強化」を使った! それによって、オークの巨体が淡い緑の光に包まれる。そうか、これが気力とか、適当にそんな感じに見えたんだな? 強くなるしね。明らかに。


 ということで、避けることを主体にしながら攻撃していた甲田さんに任せても……よかったんだけど。あの腕力は厄介だ。


「風刃」


 目を潰す。瞳に命中させるのは難しいが、さっきと同じ十発くらい放てば、目の周り周辺をズタズタにすることは難しくない。


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