0123:(心の声も)お漏らしさん
現在、我々は目的を変更し、お漏らしの転移点の更新のため、地道に階層を進んでいる。
転移点というのは、迷宮を何階層まで降りたか? の情報だ。それこそ、俺なら、ここ、池袋迷宮は10階層まで降りた事があった。10階層、それ以上は進まず、10階層始端のゲートに戻って、1階層終端に帰還した。迷宮記述的に、始端を-1、終端を-2と表現する。
つまり、転移点は10-1ということになる。転移点を更新すれば、そこまでの転移点までなら「自由に転移できる」のだ。
第1階層
第1階層終端1-2
⇄
第2階層始端2-1
第2階層
第2階層終端2-2
⇄
~~省略~~
⇄
第9階層始端9-1
第9階層
第9階層終端9-2
⇄
第10階層始端10-1
第10階層
第10階層終端10-2
⇄
ちょっと判りにくいのは、転移部屋は終端と始端が結ばれているわけで、部屋は別にあるという部分。待ち合わせ場所に「第10階層の転移部屋で落ち合おう」と約束してしまうと、第10階層の始端なのか、終端なのか判りづらいという。感じかな?
その辺の理解はキチンとしていないと、ヤバいことになる。転移は帰還の生命線となることもあるから。
迷宮には必ずある機能なのだが、転移は余り無駄には使わない様に言われている。
何故なら、転移する階層差によっては、魔力を消費し意識を失う場合もあるからだ。
(まあ、一階層転移する際に、微量ながら魔力を消費するだけなんだけどね)
(え? そんな情報、どこで、あ、いえ、本当ですか?)
(確かに……良く言われていますね……低い級の探索者が一気に5階層突破したりすると、転移時にゲート部屋で倒れた、とか)
(うん、ある程度熟練の探索者が一人でもいれば、そんな事にはならなかったハズ。確かパーティを組んでいると共有されるハズだから)
(新人探索者が、最初案内無しだと危険……と言われているのはそういう……どこかでセーフティガードがかかって、帰還は、跳んでも死なない様になっているのかと思ってました)
(ああ、俺も)
(迷宮は……そんな優しく無いよ)
初心者、探索者成り立てだと……腕輪の収納を使う魔力すら無いからね。因みに俺は最初から問題なく収納も使えたし、転移もしてたのでその辺の苦労はサッパリ判らない。
まあ、正直、この辺の階層だと、的場さん一人でもオーバーキルにしかならない。先を急ぎたかったが、お漏らしを放置する訳にもいかず、的場さんのリハビリ、リハビリと言い訳しながら、真面目に一階層毎にクリアして行く。
再びオークが現れた。しかも団体さんだが、このパターンは既に経験した。
「風刃」
あらかじめ用意しておいた術で、一気に六匹の首を薙ぐ。
ブプァッ!
一斉に血風が舞い上がる。
(スゴイ……)
(こ、これが真の魔術か……)
(ろ、六連射ではなく、六発同時発動? しかもオークリーダーのいる中級オークのパーティを一瞬で……ステキ過ぎる……抱かれたい)
お漏らし、最後……。ハッって顔してんじゃねーよ……。って!
パタン……
本当にそんな音を立てて、お漏らしは再度、意識を失った。
階層を重ねる度に、転移するわけだから、魔力を消費する。そして、腕輪を装備していれば、さらに機能を使う毎に魔力を消費する。なので、お漏らしは常に魔力切れギリギリ状態だ。
魔力切れでの気絶は、身体に悪影響は無いってデータがあったけど……うーん。まあ、多分大丈夫だろ。起きる度に、俺が回復の術は軽くかけてるし。
この辺の階層の敵じゃ、俺たちに取っては超ザコで、お漏らしに経験値が微妙にしか入らないので成長できず、魔力が増えないのもなぁ。もう少し下の階層へ行けば一気に成長、レベルアップできると思うんだけど。
既にある程度、パーティ会話に順応しているし、優秀なんだ……とは思う。後から入ってきたのに違和感感じないしね。会話から「何を話しているか」を読み取る能力は異常に高い。ちゃんと俺たちと同じレベルで会話ができちゃってるもんな。
それにしても初心者は心の声が漏れてしまうことがあって、そういうタイプの人は慣れるまでツラいっていうのは有名だけどさ。こういう感じだった? っていうね。
特に探索者になって一年以内で、ついイメージが漏れてしまって、迷宮に近寄らなくなる人は多く、さらに女性が多いとは聞いたけど……うーん。
確かなのは、こいつは「一言」ってレベルじゃねぇ。蛇口が壊れちゃってるレベルで溢れ出してくる。
女性は男性よりも心に壮大な闇を抱えていることも多く、ついついそれが漏れだしてしまうとか何とか。って「都市伝説」的な暴論を見かけたこともあるけど。でもなぁ。
というか、こいつ(既に女、先輩という意識が無い)、本当にただのお荷物なんじゃないだろうか? いろいろとお漏らしするし。年上なのに。
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