0120:対射手
「では。始め」
甲田さんが審判である。
ん? やるな。気配を絶った様だ……さらに、認識阻害に、あ。透明と静音の術を……まるでスキルやギフトかの様に使いこなしているのか。これはスゴイ。ってアレ? これ、やってなかっただけで、甲田さんも同じコト出来そうだな。
術を打ち破る事も可能だけれど。それでは納得行かないだろうから……まあ、うん。討伐隊の何とかっていう突きの得意な副隊長さんみたいになってもらおうか。それが一番楽か。俺的に。
シッ!
空気を斬り裂く迷彩矢。巧い。さっきのちょっとした広場から移動して、今は森の途中だ。ここでは茶&緑系の迷彩矢が、風景に同化して見えにくく、認識しにくくなる。
が。
カキッ
肩に担いだ剣で受ける。とはいえ正直、ある程度どちらから来るかが判っていれば、音が聞こえた時点からの対応でどうにかなる。
次は。どうくる?
シッ!
カキッ
またも迷彩矢。しかも死角からの一矢。うん。合わせるだけならどうにかなるな。このまま受けるだけでどうにか決着が着かないかな。
ジッ!
ん? さっきと音が若干……あッ!
キキン……
なんと。隠し矢! 二本の矢を同時に放って、一方を最初の矢の死角に進ませる。一撃目は避けられると理解した上での攻撃だ。
コイツはスゴイ。
地味だけど……これ……一対一の決闘じゃなくて、一般的な戦闘であれば凄まじく効果的なんじゃないだろうか? 乱戦中にこんなの絶対に気付けない。というか、多対多の戦闘中にこれをやられていたら……俺は気付けただろうか? ギリギリってとこか? まあ、魔術で様々な能力や感覚も強化してしまえば……大丈夫か。
しかし……正直、ここまでやるとは思わなかった。っていうか……これでも降参しないというコトは……まだ奥があるな? 隠し矢よりも上位となると……。
的場さんの魔力視ではないが、薄く魔力感知の術を使用する。これ以上があるというのであれば。魔術による強化矢……というか、静音の術が使えてたからな。さっき。それが必ずくる。
──
カキッ!
透明化した、音の無い矢。空気を切る音が無いため、五感だけでは避けようがない、暗殺のための矢だ。これは……本当にすごいな。これだけの技を持つアーチャーはそういないハズだ。ちゅーか奥の手というヤツだろう。
実際……俺も幾つもの感知術と魔術を複合させてやっとその軌跡を追えた。しかも彼女しか敵がいないのは確認していたし、攻撃が来ると分かっていたからこそ、だ。
彼女がスナイパーで、暗殺……狙われたりしたら……厳しいものがあるな……。
「……参りました」
ガサっと藪の中から、ヨスヤが現れた。
ああ、しかも戦局を良く判ってる。ぶっちゃけ、討伐隊副隊長よりもわきまえている。多分、さっきのが彼女のとっておきなのだ。それがああいう形で通用しなかった以上は自分の負けと判断した、と。
うん。判断力も確かだ。潔い。変なプライドが無い分だけ前向きだし、今後の成長も期待できるだろう。
そもそも、「キラキラ」ヨスヤの通り名からも判る通り、彼女の代名詞とも言える「キラキラ」はアイドルでスポットライトを浴びているから……ではない。
光属性の魔術を付与したシャイニングアローが必殺技だからだ。キラキラと光る矢が、光跡を描きながら敵に突き刺さり、さらに、貫く、爆発する、その辺は付与する術次第と言って良いだろう。
だが、彼女はその「キラキラ」は使用しなかった。うん。そうだね。アレは魔物専用に近い。
対人戦で一対一で使用出来る系の技じゃ無いし、多分、発動までに時間もかかるのだろう。
まあ、とはいえ、そっちを使ってきていたなら……結界、障壁系の術を使っていたんだけどね。うん。剣を当てて弾く……なんてことはできないもの。さすがに。
「判っただろう? 泰代。我々が
「妹ながら、お前凄いな、いつの間に! 最後のヤツ、見えたけど……俺なら避けられなかったぞ? かなり近くに来てやっと判ったわ」
ヨスヤ、苦笑いである。まあ、当然だが、そんな悔しそうな表情もショートカット美少女にはよく似合う。
「……すいませんでした。決闘……挑んで。身包みですかね?」
(要らないよ……というか、別に疲れてもいないから、腕試しってことで。基本無かったことにしよう。今後絡んできたりしなければ別にどうでもいいかな)
「泰代、別に気にしないそうだ。ちょっと腕試しってことで」
「……」
さらに、もの凄く悔しそうだ。まあ、そうだね。情けをかけられたって感じだしね。
でもなぁ。こんなんでアイドルの身包み剥ぐのってどうなの? って気がするし。っていうか、アイドルの身包み剥ぐって。くくく。ちょっと楽しい。
ゲスい笑い顔しないように気を付けなきゃ。
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