0119:申し込み

 的場さんが加わった事で、ウチのパーティは当然、三人になった。


 盾役、アンテナ、回復可能な魔術士。アンテナである甲田さんは斥候、アタッカーとしても機能するので、中々良いバランスだといえる。


 が、まあ、うん。そうだよね、何となくそんな気がしてた。


「赤荻靖人! 決闘を申し込みます!」


(えーやだぁ)


 的場さんのジョブの確認も終わり、さあ、帰ろうという時に現れたのが彼女だ。


 そう。言わずもがな。みんなの憧れ「キラキラ」ヨスヤだ。国民的アイドルにして女優さんだ。的場さんの妹の泰代さんでもあるのだけれど。


 俺もなぁ。憧れてたのになぁ。応援してたし。普段見ないドラマとかバラエティ番組、動画も見てたよ。見れる限り。


「泰代! 我が主君マイロードになんて」


「進次郎さんも、お兄ちゃんも! なんで、よりにもよって、そんな、チビッコ、高校生の免許取り立て、10級の子を祭り上げるのよ、しかも主君て! 少しは戸惑いなさいよ! 社長ならまだ判るけど! 判らないけど! 自分の都合に子どもを巻き込んでるとしか見えないじゃない! これだって、アレよ、未成年保護条例よ! 目を覚まさせてあげる!」


 いやさ。それを言うなら、その未成年の10級探索者に決闘を挑んでる貴方の方がおかしいって事にならないのかしら? ねぇ?


「……泰代、見て判らんの?」


 ん? どういうことかな?


「何をよ!」


「明らかにおかしい流れが、我が主君マイロードの周りに渦巻いてるの」


 むむむ。


「こんな人は……正直見たことがない。これをオーラだと言うのなら、あの偽「勇者」にすらこれっぽっちも感じなかった何かが我が主君マイロードにはあるってことになる。おりゃ、さすが甲田だなぁと思ったぞ? 初めて会ったときに。……まあ、精神的にも未だに年下だと信じられんしな」


「ど、何処をどう見ても、文化系で華奢な高校生男子じゃない。お兄ちゃんの目が腐ってんじゃないの?」


 的場さん……魔力視か、魔眼系の能力も持ってるのかもしれないな~。自覚もせず、訓練もしていないのに、魔力が見えるって……。というか、通常の魔眼なら霊とか見たくないモノがバンバン見えてたハズだから、そうではないってことは……本当に魔力視か。


 魔力視は向上すると、魔術を使う瞬間とかを警戒できるようになるので、本来なら避けられない術を、避けたりも可能になる。後で教えてあげよう。そして、それを意識して見る訓練をすることを薦めよう。能力は「気づき」があるだけでも大きく変化するからね。


 あ。で。ヨスヤ……か。

 

 もうどうにでもなーれの精神。最終的に……五月蠅いし面倒くさいので決闘を受けることにした。彼女はアーチャー。弓士だ。彼女の訓練風景は映像で見たことがある。模擬戦と称して、鬼ごっこ競技のチェイスタグ系の巨大フィールドで、パルクール競技者ばりのアクロバットで対戦者から距離を取り、弓を放ち、仕留めていた。


 まあ、まあでも、うん、なんとかなるだろう。面倒なのでやりたくないけどさ。


 彼女の武器は弓。アーチェリー競技で使用されていたリカーブボウの形状で、そのまま、材質が迷宮素材に変更されている。


 迷宮は銃火器、爆薬などだけでなく、機械式の弓やボウガンすら一切受け入れなかった。


 彼女の格好は、ヨスヤンシリーズの試作バージョン、オリジンってヤツだ。スポーツウェア、ジャージ……を進化させた、軽装フル装備。カッコイイ。


 俺のつぎはぎ装備と比べると……いや、言うまい。そのうち、竜素材を使った装備一式が手に入る……ハズだ。いつ出来るんだろう。半年……で出来るわけないか。拘りの職人(気狂い一歩手前の方々)の手作りだからなぁ。一年後か。二年後か。


 あ。そうか……お金入って会社設立したんだし、経費である程度の装備を! 買えば! いいのか! 思いつかなかった。さすが俺、高校生。メインで使う装備が完成したとして、予備があってもいいもんな。


 それにしても。アーチャーと他ジョブの決闘なんて、普通あり得ないと思うんだけどなぁ。遠距離攻撃同士とは言っても、準備にある程度時間のかかる術士よりも強いに決まってるジャンね。チャンスも多いし。


 いつもと同じ様に、ロングソードを肩に担ぐ。思ったよりも便利だな。この鎧に付いてる肩の剣置き? 剣置きでいいいのかな? まあ、いいかなんでも。笑。竜の素材装備にも付けてもらおうかな。




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