0118:曖昧な現状
まあ、そんな感じで職業やジョブ、ロールに関して、推測とか曖昧、適当な感じでまとまってしまうのはしょうがないというか、仕方ないとしても。
そういう状況が探索者全ての流れになっているのが非常に良くない気がする。
何もかもが手探り、そして暗闇の中での検証作業ということで、諦めてしまう人も多いのだ。一部の……何らかのブレイクスルーに成功した者だけしか残っていない。しかもそれは隠蔽されている。
自分が何者か判らない状態だと、どうしてもそのジョブ専用の鍛え方とか、考え方が発展しない。アレだ、現状は家内制手工業をすっ飛ばして、工業制手工業がいきなり天から降りてきた……という感じ? 違うって言うか、うーん。マニュファクチャ。
探索者腕輪がなぁ。オーパーツ過ぎるんだよなぁ。物事の進み方の過程として、歪んでいるんじゃないかな? と思わざるをえない。
ジョブとか職業の分業制がキッチリしていないのは、攻略法が確定していないってことで……ってまあ、マニュアル通りにいかないから仕方ないのかなぁ。
(探索者、未だこんなレベルでいいんですか?)
(明確に数値化されないのに、曖昧さを排除していったら、どうなると思う?)
(……言った者勝ちの常識が、曖昧な部分を排除し、発動が目に見えるいくつかの能力所持者が持たぬ者を迫害し始める?)
(決闘私闘、裏ランクもあるからな。そう簡単にはいかんだろうが、能力による査定が始まるだろうな)
(空属性の様に、ですか)
(ああ、騎士になりたくて必死に努力していたにも関わらず、スキルやギフトが無いというだけで夢を諦めるのが当たり前……とかな)
母上からのありがたい御言葉だ。
返す言葉が無かった。この世界にも受験という数値化の試練はあるが、能力値が判る世界の閉塞感は半端なかった。
それが絶対過ぎて、表示される数値に、逆らうなどという気すら起きないのだ。
それを一番良く知っていたのは俺のハズなのに。目先の成果、利益、便利さ、という誘惑にすっかり失念していた。
純粋に若さ故……っていうのもあるのかもしれない。肉体年齢に、精神年齢が引っ張られる……ということが結構あるのだ。それこそ、小さな子供の頃は羞恥心を感じているにも関わらず、お乳や排泄、睡眠の脅威に全く抵抗出来なかった。そしてそれがヤバイとも思えなかった。
まあ、そりゃそうだよな。俺が考える程度の事。母さんを始め、世界中の賢い人たちが考えて無いわけないもんな。
それにしても、さすが、大賢者様……。
まあ、そうですね……大切なのは魔物に勝つという事だけじゃない。まあ、勝たないと死んじゃうんだから必死にやらないとなんだけど、そこはスタートに過ぎないわけで。
どんな苦境でも多くの人間は環境に順応して生きていく。
生活していく部分に、迷宮が大きく侵食してしまうと、それこそ、大きなモラルハザードに巻き込まれてしまう。
迷宮のモラルと現代社会のモラルは大きく異なる。それのダブルスタンダード状態を恒常化して、それまでの通常の生活を続けられるほど、強くないからね、人間は。
矛楯する二つの常識を抱えて生きる……想像するだけで厳しいからなぁ。
「まあ、とはいえ、もう少ししたら以前から進めていたプロジェクトが一歩前進する。それで少しは変わるだろう。急ぎたいのはやまやまだが、急いては事をし損じる。特に迷宮のシステム関係は致命傷になりかねない。覚えておけ」
はい、期待しておきます。覚えておきます。
って母さんはたまの帰宅のさい、結構パーティを組んでくれる様になった。俺との会話のために。
ああ、そういえば。なんとなく判っていたけれど。迷宮外での魔術の使用。以前から母さんも問題無く出来ていた様だ。俺が気付いた新事実……ではなかったね。ちょっと恥ずかしい。まあ、うん、そりゃそうか。
だけど、話が終わりそうになると速攻でパーティを抜けて、普通に口頭での会話をして終わりにする。そんなに恥ずかしかったんか。ちょっとでも内面が散見してしまうの。
まあ……でもなぁ。あの時は見なかった、知らなかった振りをしたけれど。俺、昔、父さんと一緒にいた時のデレッデレの貴方のこと……よーく覚えてるんですけど。だから今さらなんですけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます