0117:ジョブまたはロール

 探索者がどんな役割を果たすか、役職、ジョブ、ロールは、組んだパーティの構成によって大きく違う。振り分けられるというか、組んだメンバーの中で変更され、訓練していくことでなじませていく。


 なので、ゲームの様に厳密なジョブをシステマチックに取り替えて……の様なモノは存在しない。あったら便利なのにな。ジョブチェンジシステム。


 まあ、自分の能力、所持しているスキル、技がどんなモノか理解しているかどうかは非常に大きい。


 そもそも、スキルも技もネットなんかで言われているのは、勝手な内容、名称で、迷宮局が定めた公式のものじゃないしね。自分が「俺がこういうスキルがある! と思う」「自分はこういうスキルを使える! と思う」っていう自己申告でしかないから。所詮経験則。


 レベルやステータスの表示される、測定の水晶、それに関係する魔道具、システム、術の「鑑定」も存在しないのだから、しょうがない。判りようがない。


 その辺も、魔術と同じ理屈でギルドが決めなかった……もしくはわざと公開していない、または教えていないわけで。


 測定は出来なくても、こういうモノが存在して……っていう。基礎的な情報くらいは……とも思わないでもないんだけどね。俺は。


 ということで、ハッキリとは分からないが、多分こういうことだろう~っていう推測の元に、現時点で判明しているというか、なんとなく広まっているジョブは……。


剣士:西洋剣で戦う前衛。日本刀使いは刀士とは言わない。逆に西洋剣であれば、ロングソードからファルシオン、マンゴーシュなんていう運用法の明らかに違うモノでも、西洋剣で一括りされている。


戦士:剣以外の武器で戦う。斧とか、ハンマー、棍棒、バット等を使うのは戦士扱い。


槍士:槍で戦う前衛。槍だけで無く、棒術も棒士、棒術士とは言われず、槍士扱い。


薙刀使い:槍の一形状じゃないのかよ? っていうツッコミはごもっとも。日本の女性探索者の薙刀比率が非常に高いため、槍とは別ジャンルで語られることが多い。さらに言えば、主に女性が行う近接武器武術というのがフェンシングか剣道、薙刀しかなかったということもあって、そういうコトになっている。迷宮出現直後の日本では、女性が武器で戦う=(必然、空手やボクシング、柔道、合気道などの近接格闘術は迷宮での戦いに向いていないと言われているので)剣道か薙刀しか、習える道場などの場所が無かったのだ。


侍:日本刀で戦う前衛。刀士じゃなくて侍。まあ、先に言った者勝ち? これは……もう、日本刀自体の破格の強さと、「剣豪」目加田真司郎の普及が大きかった。正直、良く判らないが、同じ職人が作った薙刀と比べても、日本刀の方が武器単体の攻撃力は高い。作り手である鍛冶師の魂が込められている量(刃渡り?)で、能力が変わるなんて精神論の様な説さえ出ている。あ、ちなみに、現在では昔ほどの差は無いが迷宮内の強武器といえば、一位:日本刀、二位:薙刀、三位:西洋剣……という順位は今も変わっていない。


アンテナ、スカウト:斥候、周辺警戒、敵探知、罠探知などが仕事の中衛。この専任担当がいるパーティは結構少ない。


アーチャー:射手、弓者。弓、とはいっても、手入れや取り回し等の関係上、和弓を使う者は皆無。初期は使い手がいたらしいのだが、主に迷宮内の狭い通路などでの取り回しが難しく廃れていった。超強力なんだけどね。その辺の人も、オリンピックなどのアーチェリー競技で使用されていたリカーブボウ、さらに原始的なベアボウを進化させた弓で戦う者が多い。複合弓、コンパウンドボウやボウガン等のギアや機構の組み合わさった「若干でも機械要素の加わった弓武器」は迷宮内では殺傷能力が無いどころか、満足に機能しないため使用されていない。それくらいの歯車、いいじゃん……と思う。


細工師:扉や宝箱の鍵を開けるためだけのジョブ。罠の解除も行う。いると非常に便利なのだが、非常に稀少な上に、戦力にならないことも多いので、余裕のあるパーティにしかいない。


盾士:盾を持つ剣士&戦士。片手武器なら得物は何でもあり。主に盾役として立ち回る。アタッカーが片手盾や、肩盾を装備して臨時の盾士となる場合も多い。というか、盾士なんてリアルだとあまりいないし、そんな呼び方もあまりしない。


守護者:大盾を持つ戦士。大抵、片手棍や、片手用のバトルハンマーを持つ。こちらは正真正銘、パーティの盾として活躍する。背中に大盾を背負うことになるので(容量的に保存庫に入らない場合も多い)、一目で分かる。専門職に近い。


魔術士:属性などは関係なし。魔術で戦う者は全て、魔術士となる。使いモノになる属性があると、それで呼ばれることが多い。


白魔術士:魔術士の中でも癒しの術に長けた者。ぶっちゃけ、光属性の術士なのだが……非常にレアで、重傷を治療出来るのは、ランカーや討伐隊の中でも数人と聞いた覚えがある。魔術士がレアなのに、さらにその中でも……っていう白魔は激レア。後衛の中でも細工師に次いで育成が難しく、そこそこ余裕のあるパーティやクランにしか存在しない。


 現状はこんな感じだろうか? 所詮、目安でしかない。スキル、ギフト、熟練度等を確認することが出来ないため、ジョブの細分化が為されていないし、そこまで専業化も進んでいないだよね。


 雑誌なんかで色々特集されているが、毎回、ジョブ名なんかが微妙に違ったり、当然、カテゴライズの理由もハッキリしていないのもな~。


 あくまで戦い方での名称なので……スキルから逆算してその職業となるというわけでもない。ゲーム的なシステム、思考とかで考えるとスゴくあやふやで気持ち悪いのだけど、現実世界として考えるとしょうがないのかもしれない。


 それこそ、的場さんが使用している「治癒促進」「挑発」「障壁」。


 彼は前衛として、剣と盾を装備して戦っている時になんとなく「挑発」が出来る? 出来るかもと、使える様になり、盾で敵の攻撃を受けたり、流したりしていたら「障壁」みたいな不思議力が発動した。ダメージを受けてもしばらくしたら回復したから結果として「治癒促進」というスキルを持っているのかな? あるな。となったのだ。


 なので、結果として「守護者」っぽい動きで活動している。そしてその結果、「守護者」を名乗っている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る