0078:指名依頼
「その代わり……ではないですが、提案が有ります。……自分の情報を開示するのは……探索者として無理ですが、ドラゴン「のみ」であれば倒しますよ……え?
(うん、俺一人で、聞いている限りの「普通」のドラゴンならどうにかなるかな? なので、まあ、依頼として受けてみるってことで)
(え、え、ええええええ、え、な、何を)
(ホラ、いいから、進めて、進めて)
「迷宮局討伐指名依頼……当然、少々報酬はお高くなりますが」
「くくくく! がーはっははははは! 面白いな……赤荻君……ん?」
「いやいやいや、違うんだ、赤荻君、君にはあの魔力の情報を、どうにか……」
総長が笑い、ハゲオヤジが慌て始めた。
「そもそも、10級なりたての高校生探索者を単独でドラゴンに向かわせたなんて知れたら……我々にも面子というものがある」
まあ、そうだよね。うん。普通に考えればそうだ。でも「氷帝」……言ってることが矛楯してるよ。
「だけど既に、多くの犠牲者が、まあ討伐隊にも出ているわけですよね? ……今回の事件全体で言えば、さらに死傷者が発生している。先ほど。ご自分でおっしゃっていたじゃないですか。迷宮での危機は人類の危機と」
既におめえらに面子なんてねぇんだよ! こっそりなんとかしようなんて、やらせるかよ。ばーかばーか。特に「氷帝」! お前、憧れの総長が、俺に負けたのが悔しくて悔しくて認められなくて震える……なんだよな! なっ! ばーかばーか。寒くて震えてろ!
(
そう。猶予がないから、こんなに疲れる会議が続けられていたのだ。結論が高校生にパワハラしてでも秘密を聞くというお笑い劇場。
ドラゴンの力が圧倒的過ぎて、討伐隊の戦力を全投入しても、多大な損害が発生しそうだから、藁をも掴む気持ちで、俺如きに頭を下げたのだ。イヤイヤだけどね。
下げたなら、一貫して下げ続けろ。少なくとも騒動が解決するまではな!
「高校生の10級探索者に頭を下げ、アドバイスをもらおうとしていた時点ですでに面子など。どうでも良いことでしょう。それともさっきのはポーズですか? 面子よりも優秀な人材の消耗を避けたいということではないのですか?」
(ですが、ですが、
(んー単純にさ、甲田さん……というか、自分以外を気にしながら戦える相手か分からないからさ。誰も側にいない方が楽……というか、勝てると思うんだよね)
(……そんな)
「人死にを避けたいという思いに、前途有望な高校生の命も含まれている」
だから、寒いって……こいつ感情入ると途端に寒くなるな。冷気すげぇ。というか、どうにもこうにも、制御出来てないんだな。探索者になった最初から大きすぎる魔力を持て余してきた感じか。
……まあ、仕方ないのかなぁ。自分の力をキチンと把握し、コントロールできてないって、術者としてレベル低すぎるんだけど。この手の「魔力に祝福された」人は数も少ないしね。
ネットや専門誌で情報収集している限りだと、ちゃんと確認出来て世間にもバレてるのは世界で彼一人くらいみたいだし。笑。少なっ!
「と、言いつつ、戦力的に……自分一人を失うくらい、どうということは無いでしょう?」
(
(いいから、続けて、続けて)
「ああ、申し訳ない、自暴自棄になっているのではないですよ……ドラゴンに対峙する際に、自分以外の人間が周りにいない方が、安心して戦えますからね、いや、
甲田さん、心の声が漏れちゃってるよ。ん~俺の側に誰も近づかない様に、その階層の魔物を狩っていてくれた方がありがたいんだよねぇ。ザコ掃除担当というか。
「つまり……ドラゴンに一人……というのは、我々が足手まといだから……ということか」
だから、寒い、寒いってば! みんな寒いって思ってる! 思ってるよ! 言ってることが頭に入ってこないよ「氷帝」。
(くくくく。その通り。「ドラゴン」くらい俺が一人で倒してやんよ! ザコは足手まといだから引っ込んでろよ!)
「そう思うなら、思ってくださって構いません。ただ単に自分の能力がソロでの戦闘……いや、一対一での戦いであればイロイロとできるだけです」
おお~甲田さんが、俺の暴言をとんでもない超翻訳で変換! 会議を円滑に進めようとしてる! 大人! 素晴らしい。
(
「とはいえ、高校生を……」
(んーしつこいね。「ドラゴン」程度で大慌てでオロオロしてるくせに。甲田さん、今から言う事、そのまま言ってください)
(はっ!)
「仕方ありません。これは言うつもりも使うつもりもなかった……ある意味切り札なんですけど……。多分、「新生」というキーワードで「予言」が読める様になってるハズです。確認してみてください。まあ、あまり大した情報は書いてないと思いますが」
甲田さんが意味が分からないまま、俺の言葉をそのまま、伝えた。
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