0076:長文レポート添付メール
お漏らし探索者腕輪レポート③▶------------------
現在、この経験値機能が、大問題になっています。
日本の探索者腕輪の全ての機能は海外の迷宮では使用できない。それはまあ、良いとしても。探索者がレベルアップするには、現状、日本で迷宮を探索するしかないのです。
海外の迷宮大氾濫の被害は酷く、当然、海外支援の一環として高ランクの探索者が派遣されています。なので検証も多々行われているわけですが~腕輪の全機能停止はどうにも例外は存在しないようです。実際に探索者が独自に、時間をおいて試してみても、強くならなかったようですし。
最初に海外支援部隊として探索者が派遣された際、いち早く現場で確認していた当局から説明があったときにはすわ暴動か? という空気になったらしいです。依頼の契約内容と違うというか、大前提が覆されたわけですから、文句も出たことでしょう。
ちなみに、迷宮局からの連絡は、腕輪の告知機能と登録したメールアドレス両方に届きます。ありがたいですね。
お漏らし探索者腕輪レポート③▶------------------
[未確定魔物5463号(仮呼称名:ドラゴン)対策会議ニオブザーバートシテ出席サレタシ。巣鴨迷宮出張所、A会議室ニテ……]
腕輪に告知というか、連絡が届いた。
(……なんで未確定魔物5463号、通称ドラゴン対策会議に呼ばれるのか)
(当然かもしれません。
(そんなに?)
(えぇ。ドラゴンというパワーワードのせいで場が一転しましたが。申し訳ありません。
(いやいや、それが普通でしょ。あの場で俺の勝ちを信じるなんて、狂信でしかない。狂信者は好きじゃないよ)
(はっ。心に刻み込みます)
しかし甲田さん。その真面目さがちと怖い、けど大事なことだからね。俺を信用されすぎてもやばいし。実際、まだ高校生だからなぁ。現代社会の基礎知識が足らなすぎる。
(まあ、お漏らしはメンバーに入れるってことで良いのかな? こんな長文レポートもメールに添付して送り付けてきたし)
このなかなかボリューミーなレポートを即日仕上げで送ってきている。さりげなく未公開というか、未確認というか、噂レベルの情報が確定してたりして、迂闊にネットメディアにアップとか出来ない内容だ。正直、探索者にとって凄まじく「美味しい」情報満載って感じだ。
(そうですね。非常に有能な人材かと)
(まずは、レベル上げ、PLしないとだけど。ちょっと怖いけどね)
(確かに。僅かに漏れる……狂人臭……とでも言うんでしょうか? なんていうか、反転したときにどうなるか判らないというか)
(うん、というか、既に、完全シャットダウンできる気がしない)
(命じられれば努力いたしますが……ですが……)
(まあ、害があるわけじゃないみたいだしね。とりあえず、様子見で)
(はっ)
次の日の放課後。校内放送で言われた通り学校のエントランスに向かうと、車寄せに黒い渋い車と甲田さんが立っていた。あ、え? 運転手もするの?
(この車は?)
(御屋形様が自由に使って良いとのことです。何台かお持ちのようですよ?)
(じいちゃん……ばあちゃんに怒られて、デカいワゴン1台以外は処分したって)
(なので、名義はお弟子さんのものです)
(普段、車を使わないから、乗り心地が良いのか悪いのか、サッパリだ)
(素晴らしいですよ。型番は数年前のモノですが、迷宮対応済みですし)
迷宮対応っていうのは、迷宮産の新金属等で強化補強されている乗り物や建物などの事を指す。こいつも、どこまで改造されてるのかは判らないが、通常の車両よりも、強くて安心なのは確定だ。
まあ、だからって、「凄い乗り心地〜」とはしゃげるほど、車好きじゃないし、車に詳しく無いし、乗ってない。東京は電車網がバッチリだからね。日本全土で新都市交通システムが採用され、ほぼ自動運転、自動ルート制御、渋滞緩和など、昔よりは良い感じに移動出来る様になっているとはいえ、まだまだ、渋滞は多いし。
多分、じいちゃんがばあちゃんに内緒にしてるこだわりの高級車ナンだろうけど、何の感慨も無く、乗り込んでいる。すまんな。じいちゃん。
(本日から、面倒だとは思いますが、基本移動はこれで。
(えーマジで?)
(はい)
(そんなに?)
(は、そんなにです。あの総長に勝ったという事実は消えません。現時点でいつ襲われてもおかしくないですよ? 特に討伐隊の奴らには注意をしませんと)
白手袋の甲田さんがドアを閉めて、運転席に乗り込む。本職みたいだ。
(探索者として生活出来る様になるまで、板橋のフランス料理屋で、ソムリエをしておりました)
ああ〜だから、迷宮外で生活する際の姿勢が綺麗なのか。戦う時のちょいきしょい構えとは大きく違う。
甲田さんのメイン武器は主に短剣やナイフ。流派とか師匠を聞いたら、全て独学だったそうで。なので基礎の基礎が無いらしく、今、じいちゃんと、山県さんによってウチの流派を仕込まれている。まあ、これ以上はないって位、彼の探索者スタイルとうちの流派は相性バッチリだからね。悪くない判断だと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます