0075:お漏らし探索者腕輪レポート②

お漏らし探索者腕輪レポート②▶------------------


④行動記録:探索者には個人情報保護なんて無い! なんでも筒抜け!


 迷宮内のみ記録可能(と言われている)です。行動記録ログ。ログ保存機能。文字通り、出張所設置の魔道具(チケット出力システムに酷似)でチェックすると、探索者の迷宮内での行動が、文字情報となって表示できます。

 まあ、実際にはどのようなものかは、迷宮局職員でなければ確認することはできません。探索者は迷宮局によって完全管理されている、と言われる最大の要因です。ただ、この行動記録ログが裁判などの公の場で証拠として承認されたことはありません。監視カメラのビデオ映像などと同等だったり、迷宮保険等の客観的な視点を確認するための資料として使用されています。


 迷宮局からいきなり(本人談)免許取り消し処分通知が届いたと騒ぐ元探索者はたびたびネットで話題になっています。なので、ギルド内では証拠として使用されているのでしょう。そういう輩は大抵、ギルド処分後、騒いだ数日中に、犯罪行為が露呈して逮捕されることが多かったりします。何という偶然。わー犯罪者って怖いなー。


 マスクされていますが、昇級の為のギルド貢献度等もここに蓄積、保存されています。


⑤パーティ機能(会話、位置識別):仲の良いあの人とナイショの会話もできちゃう! 心の声が漏れ漏れ


 迷宮内でのみ使用可能です。通話距離は各自周辺のパーティメンバーのみ=半径約30メートル以内。


 まず、この人とパーティを組もうとお互いが思うと、パーティが構成されます。メンバー数はリーダーのレベルや強さによって変わり、確認されている限り、最大で8人、リーダーになる探索者が初心者だったりすると、2人までしか組めないなんてこともあるようです。


 パーティを組んでいると、パーティ会話が可能となります。心の声で会話する、念話というものです。戦闘中とかに凄く重宝するシステムです。そしてさらに、パーティを組んでいると、迷宮内でなんとなくパーティメンバーの位置もわかるようになります。ハッキリわかるわけでは無いですが、多分こっちだろう……で辿り付ける様です。


 頭に思い浮かべた「言葉」を発声せずに伝え合える。意思疎通、念話なので、慣れるまで個人の思考が只洩れになってしまう人もいようです。このトラブルで心の声がダダ漏れになってしまい……探索者を辞めた、挫折したなんて話も良く聞きます。


⑥便利機能:その他にも色々! これが探索者腕輪だっ!


 この他にも前述の迷宮局からの告知機能も付いています。一方的な情報告知、通告で個人的なメッセージのやり取りはできないので、少々不便です。オマケとして時計機能、アラーム機能、震動機能、バックライト機能も附属。バックライトは少々弱めなので、照明のように使用することはできません。残念。


 このような感じで、探索者腕輪は、迷宮局の首輪みたいなモノです。奴隷の様な扱いを受けるワケではないですし、報酬も民間が絡んで中抜きするような事業と比較すると破格ですし、迷宮局の職員がとんでもなく高給なわけでもないので文句は目立ちませんが。


 そもそも、迷宮局は、対外国には日本国の。国内では東京都の組織、支局、役所と思われています。発表を行う際はその体を装っていますが、内実は大きく違います。


 予算的には最初から東京都から切り離されているからです。 


 ギルドの正確な組織名は「独立公益財団法人 東京都迷宮公社 迷宮局」となります。一般の公益法人との最大の違いは「国民の血税は一切投入されてない」事。


 つまり。迷宮局は、国、都等の権力からは一切影響を受けず、民間企業の様に営利行為を至上としません。膨大な利益はそのほとんどを、日本国内に投資、ばらまき、還元し続けているのです。


 公的にも私的にも、事業的にも収益的にも、公共事業的にも。完全に自立自営している為、それくらいの管理は当たり前とされているようです。


 実際、迷宮局が通常の営利を求める株式会社だったら。現在、迷宮景気で急成長した企業を従える事となり、時価総額で世界経済の1/3は押さえてしまうのではないか? とまで言われています。さらに出る杭として早々に打たれていた可能性も高いでしょう。


 さらに。自主独立の気風を多分に備えた探索者達が、迷宮局の首輪と揶揄される腕輪を積極的に装備する最大の理由があります。


「探索者腕輪を装備していないと、強くなれない」


 迷宮局が明言している訳では無いのです。所謂公然の秘密とでも言いましょうか。


 迷宮初期から都市伝説の様に言われています。腕輪をしないで迷宮に入り、探索し、敵を倒しても……普通の職業と同じで熟練度が上がるだけになります。


 が、腕輪を装備している状態だと「自分が強化されていく実感」が湧いてくる、というものです。


 以前、腕輪を外し他の探索者に預けて……と面倒くさい検証実験を数百人で行った探索者は結論として「成長している、という実感が無いの確実」と述べています。まあ、これは逆に、腕輪をしていれば「成長しているのを感じ取れるくらいの超スピードで成長できる」ということになります。


 その仕組みは予想、仮説でしかありませんが……元々この世界には魔力が存在せず、人間には魔力からエネルギー? を吸収し、自分を強化する能力が存在しません。なので、この腕輪の最大の機能は、魔力を「経験値」に変換して、装備している探索者の力にすることではないでしょうか? まあ、この辺の情報は公式に明らかにされておりません。なので極秘事項なのかもしれません。


お漏らし探索者腕輪レポート②▶------------------


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る