0023:お漏らしさん再
お漏らしさんの今日の装備は、オシャレなだけで……って、あ。普通の服と思ったけど。
この白い靴も迷宮産レアアイテムじゃねぇーか? そもそも、靴で白って。名前忘れたけど。これはアレだ、全体的に「若干」行動速度が早くなる系のヤツ? さらにこれまた気配遮断効果もあったような。雑誌でしか見たことネーよ。こんなの。というか、これも自分で買おうとこれっぽっちも思ったことがないから、認識外なんだよなぁ。
一流……いや……憧れというか、自分が将来使ってみたい……なんて探索者装備はレアじゃなくても細かくチェックしてるんだけど。
こういう、ちょっとした能力値アップ程度の……中途半端というか、それこそ、それを装備していたからと言って能力が上がったかどうかイマイチ判らない様なレアアイテムは、どーでもいいというか。ただ単に自己満というか、お金があるからとにかく充実させておこう装備というか。
それよりも、この白い靴を……もしかして、上履きとして使用……している? マジデ? それなりに高価な探索者装備を上履き? スリッパ変わり? んだそれ。バカなのかな? バカなのだね?
「ほ、本当に……高校一年生だったんですね」
「え、あ。あの……」
「こ、ここでは何ですから、ちょっとよろしいですか? いいですよね?」
あれ? お、怒ってる? なんで? そもそも、お漏らしさんはどちらかといえば、大人しそうなタイプ……だと思う。昨日は俺ほどでは無いとはいえ、他人と会話するのもちょっとしんどそうだったし。
でも、今日は覚悟を決めて来たのか、なんか強気? いや、強引?
若干とはいえ、教室にはクラスメイトが残っていた。「なに、あれ?」とか「どういう?」みたいな声が聴こえてくる。そうだよね。新しい先生とかそういう見方も出来る……かな? 教育実習生とか?
まあ、言う事を聞いて、後に続くように教室を出る。
彼女はこちらをチラチラと見ながら、歩き始めた。まあ、そりゃ、ちょうど、学校から出よう、巣鴨迷宮行こうとしてたからね。既に荷物もまとまってるし。
仕方ないから荷物を持って、そのまま着いていく。
着いた所は進路相談室B。ああ、ここは面談等の内緒話が中心なので、普通に防音設備になってた気がする? 確か。ぶっちゃけ、入学して半年。一年生の行動範囲となっている学校の施設なんて偏ってるもんな。奨学金云々の話をしたときに入った気が。
まあ、ここなら人もいないし、確かに他人に何かを聞かれるようなコトは無いのか。でも、なんで彼女がここの鍵を持っているのか? 怖。
「……進路指導の信田先生は、も、元担任ですので、ここをお借りしました」
いや、だからってそんな。どういう関係性だよ。
まあ、いいか。
はい。んで。なんでしょうか? というか、展開的になんかどうでもいいんだけど……。
「す、座ってください」
進路指導室は六畳くらいの広さ。設備はテーブルと向かい合わせの椅子だけだ。仕方あるまい、奥側に腰掛ける。
「ま、まずは、御礼を言わせてください。ありがとうございました。そして昨日は知り合いが失礼しました。恩を仇で返す様な言動、謝罪します」
頭を下げた。
お漏らしさんも緊張している様だ。まあ、そりゃそうか。二人きりだしな。うん。ちなみに、当然だが、俺のチキンハートは緊張ではち切れそうになっている。さっきから。
「い、いえ、そ、それは、も、もう」
「た、探索者規約に、救出された探索者は、その費用を自己負担するとあります。救出されなければ死んでいたかもしれないケースでの探索者への謝礼は、相場として一人最低でも100万円だと聞きました。つまり、あの場には私たちのパーティメンバー四人があの熊? に倒されていたのですから、400万円以上を手に入れなければおかしいのです」
正論。だからかもしれないけど、妙に、お漏らしさんの威勢が良い。あれ? こんなに滑舌というか、人前で話をするとか……堂々と出来たのね。
「いえ、別にあのそれは、い、いいので」
「良くありません。そのために保険があるのですから。探賠責、探索者損害賠償責任保険でしたっけ? は必要最低限レベルの保証です。任意で加入する探索者事故死亡保険であれば、今回の案件は「あり得ない敵の強さ」で、一人250万円程度支払われるレベルだと言われました」
まあ、そういうもんか、な。
「保険会社から既に、我々の
まあ、そうかもね。うん。そして相場もそうなんだね。
ファッション探索者っていう……迷宮を遊園地とかテーマパークの様な感覚で入って来る人もいるけれど。大半の人が命がけだからね。というか、お前がそうなんじゃないんかい。と、目の前の人に言ってやりたいが、まあ、大人げないので口を噤む。
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