0008:帰れないコール
あ。でも思い出した。まずは違った。一番大事なことを忘れていた。
ベンチから腰を上げ、壁際に移動。設置されている「公衆電話」から電話をかける。
出張所は地上から回線を引き込んでいるため、文明の利器が使用可能なのだ。とは言っても同じ迷宮第1階層とはいえ、使えるのは出張所内止まりだけど。
それこそ、出張所をちょっと離れて……第二階層へのゲート付近に行けば、電波どころか、電子機器は一切使えなくなる。恐ろしい事に、使用すると壊れてしまうのだ。見た目は動いていなくても、中身は動いているなんて機器もダメだ。電子機器が稼働している状態……になると、破壊されてしまう。
分かりやすく言えば……スマホなら、電源を切らなくてはならない。サスペンドモードは×だ。最終的に電池を抜いておけば安心ということになる。最近、電池が出し入れ可能なスマホが増えているのはそういう理由だ。
それだけ有名な事例なのに、駆け出し探索者がスマホなどの電源を切り忘れて壊してしまった……というのはよく聞くトークネタだ。
ここの、出張所の設備が……人類の科学文明と、迷宮の魔法文明の境目ってヤツらしい。人類の力はここまでしか到達出来ていないということの現れなのだ……と。これも月刊エクマガに書いてあった。なんとなくイイ感じで、壮大なロマンを感じる。苦笑。
確か、目の前の待ち合わせ番号の表示されている液晶モニターも地上よりも頻繁に壊れるんじゃ無かったかな?
「あ。や、や、やす、靖人。で、す。お、遅れ、か帰るのが、お、おく」
「遅れるのね? どれくらい?」
俺の拙い日本語をばあちゃんが、補完してくれる。
「わ、わか、分からない、き、きん緊急事態、で、で報告ま、待ち、で」
「分かったわ。そこは安全なのね?」
「う、うん、へい、き」
「ご飯は~何か残しておくようにするわね」
「あ、ありが、ありが」
「うんうん。連絡ありがとうね」
連絡を忘れると、口には出さないが……ばあちゃんがスゴく心配する。じいちゃんもぶっきらぼうだが多分心配している。あの人の愛情はかなり判りにくい。が、つまり二人とも心配する。
知り合いの子とはいえ、我が子、我が孫ではない、血のつながりの無い人間を13年間、実質、育ててくれているのだ。この恩は忘れてはいけない。
……ちなみに、俺はじいちゃんとばあちゃんとなら、他の人たちに比べて若干スムーズに会話が出来ている……と思いたい。向こうも馴れている。から。
誰とでも、普通に話が出来ればいいのになぁ。
再度ベンチに腰掛ける。ふう、とため息が漏れた。周りの探索者はほぼ全員が、既に装備を外している。普段着に着替えたのだろう。
……それにしても。
イレギュラーが発生して、今ココに
数回迷宮に潜れば魔力に余裕が出来、腕輪の保存庫に装備一式と道具一式程度は入れられる様になる。当然、着替えも数着は入れているハズだ。いくら帰る支度をした後だったとしても、着替えるのにそれほど手間は掛からない。というか、今身に付けている装備と保存庫の装備を交換するのはまさに一瞬だ。
が。一瞬で装備できるからと思っているのだとしたら、大間違いだ。そもそも腕輪の機能はある程度自分の気持ちが落ち着いていないと制御できない。魔道具だからね。その辺は魔術と一緒だ。魔物を目の前にして、ビビらなきゃいいけど。
脇に抱える様に立てているロングソード。鞘というか、ケースに収まっている黒い塊がいつもより重たく感じる。
あ。ちなみに、この腕輪の保存庫に電源を切った状態のスマホなども入れておける。ただ、迷宮から出る前に保存庫から出しておかないと外では取り出せなくなる。なので、出張所のロッカーに入れて置く人も多いのだ。外と迷宮の切り替えをロッカールームで行うっていうのは、判りやすい。
俺も、自分のスマホはロッカーにある。
で。さっきの続き、この緩みきった待合室の空気だ。
現在、異常事態が起こっている。しかも出張所内でも問題が起こって対処に追われている。……ということは、この巣鴨迷宮は現在、かなりヤバイ状況だということに気付いていないのだろうか? なんとなく出張所内は安心と思われているけれど……それは違う。
だって大氾濫の際には、この出張所にある大門を乗り越えて、魔物が地上に溢れるのだから。
日本は……いや、世界は未だ迷宮というイレギュラーに慣れていないし、そこが自分達の常識で測れない場所だと理解出来ていない気がする。
ってまあ、世界情勢的に考えると、これでも日本はかなりマシというか……日本だけ何段階もマシな方だと思うんだけどね。
手元の紙の番号は547。現状、目の前の液晶モニターに表示されている番号は521。むう。まだまだかかりそうな予感。しょうがないよなぁ……。遅くなりそうだなぁ。ばあちゃん……起きて待ってないといいけど。
-----------------------
おすすめレビューに★を三ついただけるのが活力になります!
ありがとうございます!
さらに、おすすめレビューにお薦めの言葉、知らない誰かが本作を読みたくなる言葉を記入して下さると! 編集者目線で! マネージャー目線で!
この小説が売れるかどうかは貴方の言葉にかかっていると思って!
やる気ゲージが上がります。お願いします!
■宣伝です。原作を担当させていただいております。
無料です。よろしくお願い致します。
[勇者妻は18才 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってググってね」
そして、自分は手伝った程度ですが、こちらも。
[メロメロな彼女 第1話] | [ゆとり]
#Kindleインディーズマンガ で公開しました。
Amazonで今すぐ無料で読もう!⇒
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね
単行本一巻、二巻もよろしくお願いします。
ブースで売ってます。
「直リンしちゃいけないんですってぐぐってね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます