第22話 戦う盗賊の道 21

ククリとニャールが呆れている、ベルーガに頼んでいた物とは、例の剣のオブジェである。


白金貨10枚を払い作ってもらっただけの事は、あり素晴らしい出来だ。


剣はカイの剣に似せており。

ボロボロに刃こぼれした剣が、台に突き刺さっていて、剣士が戦いに敗れた感満載になっている。

剣の柄には、カイの家の家紋が掘られている。

この家紋を押すと、ダンジョンレコーダーが再生され、剣の買い取りの時やり取りが再生される仕組みとなっている。


「これどうするんだ?」

ククリが呆れながら、聞いてくる。


「今からこれを、台車に乗せて商店街を宣伝しながら練り歩くぞ。

ルート商会の前に人を集めて上映会だ。」

ニヤリと笑ってククリをみる。


「上映会って何のだよ。」


「この前のやり取りをダンジョンレコーダーで全部取ってある。その家紋がボタンになってて、押すと流れる。」

どや顔でククリを見ると理解したらしく、嬉しそうに運ぶのを手伝ってくれた。


台車に乗せて準備完了したところで、ベルーガさんに小道具があるか尋ねる。


「この前のもう一本の剣ある?

もしよかったら少し貸してもらえると嬉しい。」


「まだ売ってないからあるよ。」

ベルーガさんがアレクの剣を持って来てくれる。


「ありがとう。後で返すね。」

ベルーガさんにお礼をいいベルーガ商会を出発する。


「よってらっしゃい。見てらっしゃい。

世にも奇妙な物語、世界で一番アホな商人とかわいそうな剣士の物語。

びっくり仰天、スッテンコロリンな面白い小話がはじまるよ。」

そんな事をククリとでかい声を張り上げ、肩には、アレクの剣を担ぎながら商店街を練り歩く。


ニャールは、関係ない人の振りをしながら着いてきた。


3往復位すると、人だかりができたので、それを引き連れ、ルート商会の前で台車の荷台の剣のオブジェを御披露目する。


「最近、それもごく最近のお話。

盗賊と剣を賭け、勝負に負け愛剣を奪われた、かわいそうな剣士がおりました。

その剣士は愛剣を取り返すべく、商人に相談をして買い戻しの交渉をするようにたのみました。

では皆さん世界で一番アホで、交渉が世界一向いていない、商人の交渉をお見せいたします。」

スイッチを押すと映像が流れ、交渉の一部始終が流れる。


周りには、ダンジョン職だけでなく。

店の前で店番をしていた各商会の人や、露天商をやっている商人もみている。


上映が終わると、呆れた顔をして軽蔑の眼差しをルート商会に向ける商人や、ダンジョン職の人で溢れかえった。


「最後まで見て頂ありがとうございます。

ちなみにこちらの商品、白金貨1000枚での販売が可能です。

売れるまで毎日上映会をいたしますので、また見てくださいね。」

そう言い残しギルドへ向かう。


「大成功だったな。」

ククリがイタズラが成功した、嬉しそうな笑顔で言う。


「ここからだぞ、もっと面白くなるさ。」


その日は、ギルドの買い取り窓口にオブジェと剣を預かってもらい、少しの間剣を貸してもらえるようにベルーガさんに伝言をたのみ、家にかえる。


家に帰り、夕飯の時に、父さんが、何か商店街で、面白い見せ物があっていると言う噂があるらしいと母さんに言っているのを聞いた。


次の日ダンジョンの修行が終わり、ククリと共にまた商店街を練り歩く。


昨日の倍位人が集まり、ルート商会の前ではじめようとすると、ルート商会からルートが出てきた。

「こんな店の前でやられたら迷惑だ。」

どうやらルートは内容までは知らないようだ。


すると横にいた商人が薄ら笑いを浮かべながら、

「ルートさん一回だけ、いいじゃないか、子供のやることだし、大目に見てあげなよ。」

間に入ってくれた。


他の人もそうだ、そうだといいはじめた為、ルートが仕方ないと言わんばかりに、

「一度だけだぞ、さっさと帰ってくれよ。」


「分かりました。ルートさんには是非最前列で見て頂きたいです。」

昨日見ていた人もいるため、すんなり前に通してくれる。


やはり商人の敵は商人なのだろう、昨日はダンジョン職が多かったが、噂を聞きつけた商人が今日は多く。


こちらがやりやすいように商人の人を中心にルートを囲み逃げ場をふさいでいる。


剣のオブジェを御披露目する。


ルートの表情が一気に曇る。

昨日同様の口上を述べると、止めに入ろうと立ち上がろうとしたが、周りの人に囲まれているため身動きが取れない。

映像が流れている間、ルートは顔が真っ青になり、汗だくになっていた。


「最後まで見て頂ありがとうございます。

ちなみにこちらの商品、白金貨1000枚での販売が可能です。


今後は、売れるまで毎日ベルーガ商会の前で上映会をいたしますので、また見てくださいね。


ちなみに明日は、世界一残念なルート商会のルートさんの本日の反応付きの上映となりますので、より一層お楽しみいただけると思います。」

ダンジョンレコーダーのネックレスを手に持ち宣伝する。


周りは憐れむ目で、ルートを見ているが、俺とククリは完全に無視して撤収の準備をもくもくと進める。


「待ってくれ、謝るから上映をやるのをやめて欲しい。」

ルートが絞り出すようにこちらに頼んでくる。


「ルートさんさっきの話しちゃんと聞いてたか?

このオブジェが売れたら辞めるよ。

こっちも商売だから、宣伝は辞められないよ。

商人ならわかるだろ?」


「いくらだ?買い取りたい。」

ルートは、話しが耳に入ってなかったようだ。


「また明日聞きにきなよ。それかそこの商会から価格を聞いたらいいよ。」

笑いながら答える。


ルートは隣の商人に価格を聞き固まる。


「高すぎだろ。いくらぼったくる気だ。」

ルートが怒鳴りながらこちらに向かってくる。


「高いに決まってるだろ。

お前の商会の評判はそんなに安いのか?」

どっちにしてももう面子は丸つぶれで信用なんてないから潰れるだろうが、再起不能にするために、お金もむしり取りたい。


「わかった・・・・払うからそれを売ってくれ。」

絞り出すようにルートが言う。


「待ってるから急いでお金を持ってきてよ。お金が用意できないなら無理だよ。」

それを聞きルートが急いで商会に入っていった。


周りの商人は、そんなルートを残念な物を見るような目で見ていた。


ルートがカバンにお金を詰めて、持ってきて、お金を確かめ台車のオブジェをルート商会の入り口に置く。

台車には、金貨の入ったカバン乗せて帰る。


もちろん首にかけた、ダンジョンレコーダーのスイッチは入ったまま、また何かしてくれば同じようなオブジェを作るだけである。


ギルドに向かうと、呆れた表情の父さんとベルーガさんがギルドで待っていて、ギルドの奥の部屋に、ククリと共に連れていかれた。


「少しは大人しくする約束だったよね?」

父さんに詰めよられた。


「大人しくしてたよ。

ただ一部の商会と露天が盗賊を取り引きできないようにするって聞いたから、ちょっと懲らしめただけだよ。」

俺とククリは、まったく反省していない。


「まぁまぁ、さすがに今回の件はビアンキくんは、悪くないですよ。

商人の間でもその情報は流れてましたし、本当の話しですよ。」

ベルーガさんが助け舟を出してくれた。


「それに儲かったからいいじゃん。

どうせルート商会は、もう長くは持たないだろうから心配もなくなって一石二鳥だよ。」


「それは、そうなのかもしれないが・・・」

父さんはあまり納得していないようだ。

カバンをテーブルの上に置き金貨を見せる。


「盗賊ギルドに全額寄付するよ。

アカデミーを作るなり、盗賊ギルドを建て替えるなりに使ってよ。」

父さんとベルーガさんは、金額にびっくりしている。

 

「ルート商会は、こんなに払ったのか?」

ベルーガさんが聞いてくる。


「焦ってたから冷静な判断ができなかったんじゃない?

あとアホだから、多分もう商売できる状況じゃないことに気がついてないよ。」


「商人には、いい教訓として語り継がれるだろうね。」

ベルーガさんは呆れはてていた。


後の世に語り継がれる物語


盗賊の怒りの序章


アホな商人と大剣狩りの盗賊の物語として、ルート商会は、歴史に名を残すことになる。

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