第16話 戦う盗賊の道15

翌朝父さんと盗賊ギルドに向かう。


今日は昨日ベルーガ商会で買った、素早さ+の指輪も指にはめ、準備は完璧だ。


ギルドに着くとカーターさんとククリ、ニャールもいた。


「ククリ、ボスの話は聞いたか?」


「もちろん行くよ。」

ニヤリと笑いククリが拳をつきだす。

「気合い入れろよ。」

拳をあわせ、ニヤリと返す。


「二人とも頑張ってね。

私も戦えるようにカーターさんに修行をつけてもらうから。」

ニャールはカーターさんとダンジョンにいくようで、応援してくれた。


カーターさんとニャールがダンジョンに出発したあと、父さんとククリの三人でボスの打ち合わせをする。


打ち合わせが終わり、とりあえずダンジョンでレベルアップの効果を確めることになった。


ダンジョンに入りゴブリンが5匹いる部屋の前に着く。

ゴブリンを見てふと思う、ステータスがかなり上がったからもしかしたら一人でもいけるんじゃないだろうか?


「父さん、ククリ

ちょっと一人で倒してみてもいい?

危なくなったら加勢してほしい。」


「さすがに一人は無理じゃないか?」 

父さんが心配そうにしてくる。


しかしククリも、余裕そうな表情で、

「なんか俺も一人でいける気がする。

ビアンキがいけたら次は俺もいいかな?」


多分昨日のホブゴブリンのせいで、ゴブリンがかなり可愛く見えるのだ。

二人の了承を得て、投げナイフを片手に持ち、腰の短剣も抜き、一人でゴブリン部屋にはいる。


部屋に入るとゴブリンがこちらに気がつき一斉に咆哮をあげながら突っ込でくる。


先頭のゴブリンの頭めがけナイフを投げる、倒れたのを確認して、次のゴブリンに二本目のナイフを投げる。

2匹目も倒れた。


ゴブリンとの距離が近くなった為、短剣で突っ込む、先頭のゴブリンの首を突き首を飛ばした。

後ろにいたゴブリンが、こん棒で、攻撃してくる。

攻撃されてびっくりした、かなりスローに見える。


例えるなら大きな風船がゆかに落ちる位の速度にみえた。


それをかわし、ゴブリンの首に突きを放つ、右から最後の一匹が攻撃しようとするが、短剣で受け流しそのまま首を刈り取った。


全て倒した所でびっくりした表情の父さんとニヤリと笑うククリが近付いてきた。


「こんなに強くなってるとは・・」

父さんは予想外だったようで信じられないという顔をしている。

「俺もやれそうだ。次の部屋は俺でいいよな?」

ククリがはやく試したいようで、ウズウズしている。


「いいけど、油断はするなよ。」

ククリが浮き足だたないように釘をさす。

「わかってる」

ククリは気合いを入れ直し、次のゴブリン部屋に向かった。


結果は、余裕だった。ククリも危なげなく倒していた。

腕試しも終わり、ボスの部屋に着く。


「本番だね。ククリ気合いを入れろよ。」

「わかってる。作戦通りに動くよ。」


父さんが部屋の扉をあけ、3人で中にはいる。

昨日同様、魔法陣の両サイドにたち、父さんに合図する。

4つの石の松明が灯り、ホブゴブリンがでてくる。

出てきた所で投げナイフを後ろに下がりながら投げる。

ホブゴブリンはガードが間に合わず投げナイフが右目に刺さる。

もう一度投げナイフを投げるがこちらはガードされて剣を持つ腕に刺さる。


剣を振り上げ昨日同様右から左に袈裟斬りがくるが遅い。

それを交わし、ホブゴブリンが左下から剣を右上に振るのにあわせ、腕を斬りにいく。

ホブゴブリンの腕を捉えたと思った次の瞬間、ホブゴブリンの右腕が舞う。

そのまま首に突きを放つと、首から上が吹き飛んだ。


ククリを見ると同じように、首を撥ね飛ばしている所だった。


終わってみると昨日とは違い、呆気なかった。

ククリも同じ気持ちのようでびっくりしていた。

ホブゴブリンが消えてピコンとレベルアップの音が聞こえ、宝箱が出てきた。


「本当に倒せたな。

しかもまったく苦戦してなかった。」

父さんは、驚きながらも嬉しそうな表情をしていた。


宝箱をあけ部屋をでる。

「びっくりする位昨日と違ったな。」

ククリもやっと実感が沸いたようだ。


「俺もびっくりしたよ。もっと苦戦すると思った。

けど父さんもこれで、覚悟を決められるね。」

父さんを真っ直ぐ見つめる。


「もちろんだ。

盗賊だけでも戦えるな。」

父さんは決意を固めるように、自分に言い聞かせるように答える。

「良かった。

一緒に頑張ろうね。」 


「今後の方針を決めたいから、一度ギルドに戻って話そう。」

そう言われダンジョンを後にしギルドに戻った。


ギルドに着き、ククリにダンジョンででた魔石を3つと指輪1つの売却を任せ、父さんと奥の部屋へ入る。


「今後どうするのがいいと思う?」

父さんがさっそく聞いてくる。


「とりあえず今で通り、戦う盗賊を増やして行こう。

戦う盗賊はダンジョン協会の仕事をはずれて受けないようにしよう。

後戦える盗賊でランクがC以上の人はみんなダンジョン協会に引退届けを出そう。」


「戦える人を増やすのは賛成だし、ダンジョン協会の仕事を受けないのはわかる。

けど引退届けを出すのはなんでだ?」


「Cランクだと救援要請がかかるから、タダで動かなきゃいけなくなるメリットがないから。

こちらはこちら、あちらはあちらってのをはっきりさせる為だよ。」


「なるほど。

他はないかい?」


「スキルの獲得条件を確立させてそれをまとめて、みんなに配る。

それと稼げることをアピールする。

スキルがちゃんと出れば、戦う盗賊のなり手が増える。

後戦う勇気はなくても、稼げるならやってみたいって人も取り込めるから。」


「わかったよ。

けど全員強制的にギルドとしては、やらせないのかい?」


「戦いたくない人もいるだろうし、戦える盗賊が強くなるまでは、あからさまにダンジョン協会とは敵対したくないから。」


「なるほど。

いろいろ考えいたんだな。

とりあえずは、ビアンキが言ってた通りに動いてみよう。」

父さんは感心し、嬉しそうな顔をしていた。


部屋をノックする音が聞こえ、ククリが入ってきた。

「今日は魔石が金貨3枚、指輪はずれだ。

素早さ+2だったよ。

ビアンキは確か持ってたよな?

もらっちゃダメかな?」


「俺は持ってるからいいよ。

素早さは売らずに、装備が揃うまでは、欲しい人が持つことにしよう。」

ククリは嬉しそうに指輪を着け、金貨を2枚渡してきた。

どうやらククリが買い取るみたいだ。

タダでいいのに、律儀なやつだ。


「そういえば明日、アカデミーから依頼があって、1年生を一階のボス部屋まで案内する仕事がきてる。

それには、是非同年代の盗賊も加わって欲しいとの事だ。」

父さんの言葉を聞き、俺とククリは目を見合せ渋い顔をする。


「それって受けないとダメなの?」


「ギルドとしては受けて欲しい。

報酬は一人金貨5枚なんだ。」


「えっ、

なんでそんなに報酬が高いの?」

破格の報酬に少し困惑する。


「基本的に同年代の盗賊は、アカデミーの1年生の相手なんて、だいたい嫌がるし、熟練の盗賊からしたらレベル1の我が儘な子供のお守りをしないといけないから報酬をよくしてもらってる。」


「なるほど、同年代は絶対必要ってことなんだ・・・

ちなみに短剣は持ってていいの?」


「大丈夫だよ、今年は盗賊が短剣を持つのを許可もらってるから。」


「わかった。今回は受けるよ。

けど次回以降も、金貨5枚じゃないと受けない。

今日だって2時間位で二人で金貨3枚なんだから報酬が低いならやらない。

それでもいいかな?」


「わかってるよ。

けど揉めごとは起こさないようにね。」

父さんが厳しい表情で釘をさしてくる。


「それは、相手次第だよ。

約束は出来ない、こっちからは手は出さないって約束ならできるけど。」


「わかった、けど出来るだけ我慢してくれ。」

二人で頷き、そのまま部屋をでる。


「明日行きたくないな。」

ククリがぼやく。

「行きたくないよなぁ。

けど他の職業がどう戦うかは、興味かあるから、それを目的にしてやるしかないよ。」

本当に行きたくない、あの強盗野郎もいるだろうし、絡んできたら殴る自信がある。

その日は、ククリとため息をつきながら、ギルドを後にした。

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