第13話 戦う盗賊の道12

一階層のボスの様子見をする事になり、カーターさんがボス部屋の説明をしてくれる。


ボス部屋の中は、半径10m位の円形の部屋になっているらしく、扉が締まり中央にある魔方陣に入ると、部屋の隅に置かれた4つの石の松明に火が灯り、ホブゴブリンが2体出てきて、襲いかかってくるとの事だ。


カーターさんが、ニャールに部屋の外で、待機するように指示を出して扉を開けて3人で中に入る。


締まる寸前に人影が見えた。

指示を無視してニャールが入ってきてしまった。


「おい、遊びじゃないんだぞ。」

一番後ろにいた、ククリが、怒った顔で怒鳴る。


「指示を無視するなら今後はダンジョンに連れてはいけないよ。」

カーターさんも厳しい顔で注意する。


「だってダンジョンで一人で待つなんてあり得ない。怖いし・・・」

半泣きでニャールが、落ち込んだ表情をする。

これには参った様子でカーターさんもククリも何も言えなくなってしまった。


俺も一言いってやりたい所だが、ひとまずはボス部屋から脱出しないとだ。


「ククリ、サイドに別れて、ボスがでた瞬間に近くのやつに、投げナイフを頭めがけて投げよう。

多分隙ができるはずだから、速攻ダッシュで逃げよう。

ニャールとカーターさんは、一番扉の近くにいて、ボスがでたら逃げて扉を開けてください。」


「わかった。」

ククリが返事をする。


「待ってくれ、ククリかビアンキくんが扉を開けるべきだ。」

カーターさんが止めてくる。


「ニャールが動けなくなったら、力が強いカーターさんじゃないと、運べませんし、一番素早さがあるから扉も速くあけられます。」

カーターさんをじっと見つめる。


「わかった。絶対無理しないようにね。」

カーターさんは、しぶしぶ納得したようだ。


ボス部屋の中は薄暗く、闘技場を思わす作りになっていた。

作戦通りに、魔方陣の両サイドにククリと俺が先に入る。


合図と共にカーターさんとニャールが入った。


全員入ると松明が一つ一つ灯り最後松明が灯ると同時に、160cm位のガッシリした緑色の化け物が、錆びたボロい鉄の剣を持って表れた。


俺とククリが投げナイフを投擲する。

ナイフに気がついたホブゴブリンは、ガードする形で腕を前にだす。


離脱するために走り始めると、ナイフが刺さったまま、ホブゴブリンが咆哮しながらこちらに突っ込んでくる。

ちらっとククリとカーターさんを見る。


ククリも同じような展開になっており、2本目の投げナイフを投げよとしているところだ。


カーターさんはニャールが腰を抜かしたらしく、引っ張って扉に向かっている。


ヤバいな、あの様子だと、扉が当分開かない。


2本目の投げナイフをホブゴブリンに向かってなげる。

今度のナイフは右目にささる。

しかしホブゴブリンは一瞬動きが止まったが、何事もなかったかのように、そのままこちらに突っ込んでくる。


さすがに焦る。


ゴブリンとの距離は3メートル位だ、投げナイフは間に合わない。


ククリも同じような展開だ。


カーターさんも、まだ扉についておらず扉は開いてない。


ククリが扉と反対側に走りホブゴブリンと距離をあけるのが見えた。


俺は腹をくくり、短剣を抜きホブゴブリンと対峙する。

ホブゴブリンは剣を振りかぶり右から袈裟に剣を、振り下ろす。


それをギリギリかわす。


だが次の瞬間ホブゴブリンは、下ろした剣を下から振り上げてくる。

予想外の動きに間に合わず、左腕をかすめる。


カーンと軽鉄の腕あてにあたりかん高い音が聞こえ、左腕がはねあがり、痛みがはしる。

痛みを我慢し、剣を持った指をめがけて短剣を振り下ろす。


ホブゴブリンの指が飛び、剣を落とした。

剣を落とすのを見て距離を詰め、首をめがけ突きをはなつ、首に剣が刺さりホブゴブリンが鳴き声をあげる。


倒した。


そう思ったが、振り上げた指がない方の拳を振り下ろしてきた。

避けるのが間にあわないので、短剣から手を放し、ホブゴブリンの腹めがけて前蹴りをくりだす。


額を拳がかすめ、額から血がながれてくる。


前蹴りで後ろに倒れた、ホブゴブリンの首に刺さったままの短剣の柄を思いっきり蹴り飛ばす。

ホブゴブリンの首から上が飛び絶命する。


短剣を拾い、すぐにククリの方を見る。

ククリと目が合う、ククリは逃げるのをやめ短剣を抜く。


俺は短剣を投げナイフ変わりにし後ろからホブゴブリンの後頭部にめがけて投げる。


ホブゴブリンが、剣を振り上げたところで、動きが止まる。

その隙にククリが首の右側に短剣を突き立て、首をかき切る。

紫の血飛沫があがり、ホブゴブリンが鳴き声をあげる。

ククリは止めに首の左側に短剣を突き立て、首を飛ばす。


ホブゴブリンが動かなくなり、死体が消えて、宝箱が出てきて、頭の中で、レベルアップの音が響いた。

その光景をみて安堵し、俺は意識を失った。


意識が戻り起きると、ダンジョンの前におり、父さんが瓶に入った、水色の飲み物を渡してくる。

「ゆっくり飲みなさい。」


頭がぼーとしており、言われるがまま飲み物を飲む。

クソ不味いが、飲めば飲むほど、体が楽になった為、全て飲みきる。

「これは何の飲み物?」


「ポーションだよ。少しは楽になったかい?」

父さんが心配そうに聞いてくる。

「大分良くなったよ。ありがとう。

そういえば、ククリたちは?」


「無事だよ、ベルーガ商会にポーションを買いにいってるらしい。

ニャールちゃんに、ポーションを持ってないか聞かれて、何事かと思ったらビアンキが倒れてた。」


「ボス部屋に様子見に行ったら、ひどい目にあって、死にかけた。」


「どうやらそうらしいね。

後でギルドに報告しに、カーターたちとくるようにね。

大丈夫そうなら、父さんは今からダンジョンに入ってくる。」


「楽になったよ、ありがとう。」


父さんにお礼をいうと、父さんは、心配そうな顔をしているが、待っている人と一緒にダンジョンへ入っていった。


周りをみると、ニャールが涙目になって心配そうにこちらをみている。


「一応言っとくが、二度と勝手な真似をするなよ。

けど全員無事で良かっな。」


始めは厳しい顔からニヤリと笑いニャールをみる。


「ごめんなさい。

あと助けてくれてありがとう。」

ニャールは泣きながら言ってくる。


頭に手をおき、よしよししていた所に、ククリとカーターさんが帰ってきた。


「心配して走ってベルーガ商会にいったのに、元気そうじゃん。」

ククリは、ニヤニヤしながらポーションを渡してくる。


「父さんが、ポーションを飲ましてくれたから。」

何か恥ずかしい気分になった。

8才の子に下心はない。


「それも飲んでおきなさい。」

カーターさんに促され、もう一度クソ不味いポーションを飲む。

怪我していた所の痛みが取れ、さらに楽になった。


「しかしビアンキとククリが2人で、ボスを倒してしまうとは驚いた。

正直二人とも、もうダメかと思ったよ。」


「僕も途中で、ダメかと思いました。

あんな状況でボス部屋は、二度とごめんですよ。

けどククリは余裕だったな。」


思い出しただけでも、震えてくる。

だがククリは本当に冷静だったこちらの邪魔にならないようにあの状況で動けるのは本当にすごい。


「余裕なもんか。

けどビアンキが必ず勝つと思ってたから、冷静になれた。

さすがにビアンキが短剣を首に刺したのに、死ななかった時は本当に焦ったよ。」

ククリも思い出したようで、若干震えていた。


「とりあえずギルドに向かおう。

宝箱の品も鑑定しないといけないし。」

カーターさんに促されギルドに向かうことになった。

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